半導体製造装置 配線の課題
半導体製造装置では、膨大な数のセンサー
が使われています。それらは各会社が作ったもので、デジタル・アナログ等通信フォーマットは様々です。通信ケーブル以外にも、電源ケーブルやその他の配線が機械内にあるため、人為的な配線ミスや接続確認等に多くの時間が取られてしまっています。上記のような状態で、もし製品に異常が起きた時、それがどこで起きたのか、何が問題なのか、特定・修理するには、非常に時間がかかってしまいます。
IO-Link採用による課題解決
IO-Linkは上記の課題を解決します。IO-Linkは、デジタル・シリアル通信で統一されており、上位の機器で一括管理することが特長ですが、配線面において非常に強い一面を持っています。

IO-Linkは、電源+データを1つのケーブルで担えることから、省配線化を実現でき、配線の複雑化を防ぎます。
省配線化という課題に対して、非常に有力な通信規格になるのです。そんなIO-Linkの概要をこれから説明していきます。
IO-Link対応時に留意すべきポイント
それは、
IO-Linkのプロトコルスタックをどうするか、という点です。
IO-Linkのプロトコルスタックを入手する方法は主に以下の2つの方法があります。
- 自身で一から開発する
- プロトコルスタックを購入する
独自でプロトコルスタックを開発することも可能ではあります。ただ、一から開発するのはとても骨が折れる作業ですので、実際には多くの会社は開発済みのプロトコルスタック購入を選択することになるでしょう。
購入するにしても、IO-Linkのプロトコルスタックを提供している企業の多くは海外ベンダーです。スタック購入のやり取りは英語で行う必要がありますし、提供されるマニュアルもすべて英語です。これらの要因からIO-Link対応に二の足を踏んでいる方もいるのではないでしょうか。
そんな方々に紹介したいのは、すでにプロトコルスタックが実装済みのIO-Link評価モジュールです。この評価モジュールは日本企業が作成しており、購入の際に提供されるドキュメントは日本語になっています。また、プロトコルスタック実装済みのものが提供されますので、ユーザープログラムの変更から評価まで行うことができます。
IO-Link評価モジュールの特徴
小型基板

IO-Link評価モジュールのサイズ
評価モジュールには、Texas Instruments社の
MSP430FR5738が制御用のマイコンとして搭載されています。
通常、IO-Linkデバイスには設定パラメータ保存用の外付けEEPROMが必要なのですが、MSP430FR5738は高速書き換え可能な不揮発性メモリー(FRAM)を搭載しているため、それが不要となっています。EEPROMが不要になれば調達する部品点数を少なくすることができますし、なによりも基板を小型化させることができます。この評価モジュールもとても小さく作られています。
すぐに評価可能

接続イメージ図
IO Linkのスタックやプログラムは既に書き込まれていますので、その他の必要な機材さえ揃っていれば箱をあけて10分で評価をスタートできます。
評価に必要な機材、ソフトウェアは以下のとおりです。
No. |
機材、ソフトウェア |
備考 |
1 |
IO-Link評価モジュール |
|
2 |
Windows PC |
|
3 |
IO-Linkケーブル |
IO-Link評価モジュールには付属していません |
4 |
TMG IO-Link Device Tool
– Standard Edition |
IO-Link評価モジュールには付属していません |
5 |
USB IO-Link Master |
IO-Link Device Toolに付属 |
評価に必要な機材一覧
独自のセンサーにカスタマイズ可能

IO-Link評価モジュールの簡易ブロック図
このIO-Link評価モジュールはIO-Link通信部とセンサー部を分離することができます。接続コネクターにはSPIの通信ラインが出ていますので、SPI通信可能なセンサーであればオリジナルのものに変更して評価することも可能です。
実際に動かしてみた
IO-Link評価モジュールには、温度センサーやLEDなどが搭載されており、これらを使った評価をすぐに行うことができます。
評価の手順については評価モジュールを購入時に一緒に提供されるマニュアルに記載されています。筆者もこれをもとに試し、動作させることができました。

LEDを制御している様子
評価モジュールの詳細について
今回紹介したIO-Link評価モジュールは、必要な機材さえ準備できていればすぐに評価を始めることができますし、オリジナルのセンサーを使ったIO-Link機器の試作に利用することも可能です。自社製品のIO-Link対応を検討している方や、IO-Linkの導入を検討している方に最適な評価モジュールとなっています。
おわりに
今回はIO-Linkのメリットと概要、IO-Linkに対応したTI製品について紹介しました。IO-Linkデバイスは非常に速いペースで普及が進んでいき、半導体製造装置における重要な通信技術の一つとなる可能性があります。TI社ではIO-Link対応のICだけではなく、リファレンス・デザインの提供を行っており、これらはこれからIO-Linkの開発を始める人にとっては大きな助けとなるはずです。
本内容につきまして、ご質問・ご要望等ございましたら、お気軽に下記の弊社営業担当までご連絡頂けますと幸いです。