- 公開日:2020年03月16日
- | 更新日:2022年10月28日
パルストランスで絶縁とノイズ軽減
- ライター:イシジマ
- その他
新型コロナウイルスの影響で、みな外出を控えていることと思います。ずっと家の中にいると電気が欠かせませんが、真冬や真夏の時期に停電でも起きようなものならば、まともに暮らしていけません。電気がなくなると世の中機能しなくなるでしょう。
話が飛躍しましたが今回のテーマは「電気」、ではなく家庭で電気を使うための「トランス(変圧器)」に焦点を当てたいと思います。
家庭で電気を使うまでの過程
普段生活している中ではまず考えることはないかもしれません。家で電気を使うには基本的にはコンセントに繋げばいいだけですが、実際のところは発電所で電気を作り、電線を通って各家庭やオフィスに供給されることはご存知かと思います。
電気が辿る経路と電圧値は、
- 発電所:50万~27万5000V
- 変電所:15万~6600V
- 電柱:200 or 100V
- 各家庭へ
となっています。
「変電所」に関しては一括りにしていますが、実際には1次変電所(6万6000V)→2次変電所(2万2000V)→配電用変電所(6600V)→電柱というルートで家庭に送電されています。大規模な工場や鉄道会社などは1次変電所や2次変電所から給電され、企業内の変電設備で必要な電圧に落としたりしています。
要所要所で電圧を落としている理由としては、発熱による送電ロスを少なくするためで、送電ロスが少なくなれば長距離の区間を効率的に送電することができるからです。では、この電圧を下げているものが何かと言うと、序盤に出た「変圧器=トランス」になります。
交流電圧変換以外の用途は?
トランスがもたらす効果として、先ほどは交流電圧を昇圧・降圧させると説明しましたが、もう一つ重要な役割として「絶縁」という機能があります。
その前にまずはトランスの仕組みについてですが、小中学生の頃、理科の実験などで磁石を使って電気を発生させた経験はないでしょうか? 言ってしまえば、あれがトランスの原理です。
コイルに磁石を近づけようとするとコイルは反発するように磁石になります。N極が近づいてきたらコイルはN極になろうと磁界を形成し、離そうとすると引き付けるためにコイルはS極になろうと磁界を形成します。磁石とコイルが反発&引き付け合うことにより、その抵抗力が発電のエネルギーになります。この現象を「電磁誘導」といいます。
トランスの場合、一次コイル(入力側)に交流電圧を加えることにより一次側に電流が流れ、鉄心内に磁束が生じ、この磁束変化によって二次コイルに電圧が発生するという仕組みになっています。
絶縁の話に戻ります。回路図を見る機会が多い方はご存知かと思いますが、トランスを回路図記号で描くと上図のような形となっています。見ての通り右端子と左端子が分離しており、導通していません。まさに絶縁状態です。(非絶縁型のトランスも存在していますが)
この絶縁機能により入力側の電気が出力側に直接流れることを防ぎ、出力側の負荷を保護することができます。例えば出力側に何かしらの装置が接続されているとしたら、突発的な電圧変動が起こったとしてもその装置は故障せずに済むということです。
ステップテクニカ基板で使われるトランス
ステップテクニカ製品の話になりますが、ステップテクニカではMKYシリーズを搭載した基板を設計する際にはSPT401-DMXというパルストランスを同時に搭載することを推奨しています。
パルストランスを搭載する一番の理由は、やはり故障を防ぐためです。MKYシリーズは数珠つなぎに接続するバス型となっています。ある装置(基板)が故障し電圧異常が発生した場合、パルストランスを搭載していないと接続先の装置に異常電圧が流入される危険性があり、下手をすると接続先のさらに接続先のさらにさらに接続先の… と多数の装置を故障させてしまう恐れがあります。
また、基板上に外部ノイズが入り込んでしまった場合にも効果的です。パルストランスが絶縁されているため、出力先にそのノイズが直接到着してしまうことを抑制してくれます。この結果、外部ノイズに対する装置のガード能力が向上するということです。
ステップテクニカのMKYシリーズを基板に載せる場合は、パルストランスのSPT401-DMXをセットでお使いください。
まとめ
トランスというと、やはり交流電圧を変化させる=変圧させる=変電所にあるものというイメージが強いですが、絶縁により出力先の装置を守るという効果についてはあまり認識されていません。接続先の装置が工場のラインに関わるようなものだったり、人体に関係するもの(医療機器)だとしたら、故障によるダメージは甚大なものですよね。