• 公開日:2021年03月26日
  • | 更新日:2022年11月30日

テキサスインスツルメンツ社のストール検出機能のご紹介   (ステッピングモータードライバーDRV8434A)

はじめに

ストール(失速)状態を検出する必要性については様々なケースがありますが、ほとんどがモーターやその駆動回路の保護が目的となっています。市場にはすでに多くのストール検出を行うシステムや半導体デバイスがございますが、今回ご紹介するのはテキサスインスツルメンツ社(以降TIと記載)が最近リリースしたDRV8434Aという製品に搭載されているストール検出機能になります。ストール検出は何かから始まり、TIのストール検出機能の特長について記載していきたいと思います。

ストール(失速)を検出する目的について

ストール(失速)した状態とは

まず初めにストールした状態とは何かについて説明します。ストールとは、“モーターが障害物などの外力が要因でそのトルク能力を超えた負荷がかかった際に停止(ロック)してしまう状態”を言います。

検出する目的について

次にストールを検出する目的とは何かについて触れていきます。

ストールした状態は上記で記載したような状態であり、この時、駆動回路はモーターを回転させようとして電力をモーターに供給し続けている状態を考えます。この状態では供給した電力により、異常な発熱によりモーターが高温になったり、またステッピングモータは脱調という状態になると非常に耳障りな可聴ノイズを発生します。また、モーターを回転させようとさらに大きな電力をかけてシステムの物理的な破壊などにもつながる可能性もあります。こういったリスクがストール時にはあるので、これを回避するためにストール検出が必要になります。

モータードライバーで検出するメリットについて

今回TIがモータードライバーへストール検出機能を内蔵させているメリットについて簡単ですが触れておきたいと思います。メリットについては大きくは以下2つが挙げられます。

  • 検出の高速化

ストールを検出する方法はいくつか考案されていますが、ホールセンサーなど位置を検出するもので構成している場合、モータードライバーの外にあるセンサーとの通信が必要ですので、この通信に遅延があることで検出時間がかかってしまうという課題を内蔵機能であれば改善することができます。

  • システム構成のシンプル化

外部センサーなしでストールを検出できるため、従来のシステムから小スペース化およびコスト低減を図ることができます。

テキサスインスツルメンツ社のストール検出機能について

ここからはTIのストール検出機能について説明をしていきたいと思います。

モーターの相電流と巻線に発生する逆起電圧(BEMF)において、図1のような明確な位相関係があります。TIのモータードライバーに搭載されているストール検出機能はモーターのトルク能力の限界に近づくと相電流の位相に逆起電圧位相が近づいていく位相シフトの発生を検出することでストール(失速)状態を検出しています。

DRV8434Aの内部では相電流の上昇期間と下降期間においてPWMのOFF時間を計測し、比較することでトルクカウントといわれる値を生成します。(図2)この値は巻線電流や環境温度、供給電圧に依存をしない値となっています。

トルクカウント値はDRV8434Aでは電圧値で出力され、モーターが回転していると常に0V以外の値で出力されるため、モーターの回転状態を随時モニターすることが可能です。失速過程でトルクカウント値は0に近づき、失速するとほぼ0となります。

モータードライバー内ではストール検出の閾値が設定され、この閾値とトルクカウントを比較し、検出閾値を下回るとストール検出信号(nFAULT)を出力します。

DRV8434Aのストール検出機能の特長

DRV8434Aのストール検出機能の特長は代表的なところで以下の3つが上げられます。

その1 : 学習プログラムモード

無負荷時およびストール時のトルクカウント値を検出し、ストール検出可能な閾値を自動設定します。                    (外部からのマニュアルで設定することも可能です。)

その2 : トルクカウント値の出力

モーターの回転時に生成されるトルクカウント値からモーターの回転状態をモニターすること視覚的に可能です。               (TRQ_CNT/STL_TH端子より電圧出力される)

その3 : ストール検出時のレポート機能

ストールを検出した際の外部へのレポートについて出力方法の選択と検出のON/OFF制御が可能です。                     (ストール時レポートをnFAULT出力に他の保護動作結果のレポートとORで出力かレポート出力自体をOFFにすることが可能)                              これにより外部でカスタマイズされた検出アルゴリズムを使用することができ、制御設計に自由度を提供できます。

実際のストール検出の動作確認

DRV8434Aのストール検出の動作を実際に確認した模様を動画にしましたのでぜひご覧ください。

テキサスインスツルメンツ社ストール検出機能(Stall Detection)
-ステッピングモータドライバ― DRV8434A –

https://www.youtube.com/watch?v=flMiwRRpTuU

まとめ

DRV8434Aに実装されているストール検出機能についてご紹介いたしました。現在のシステムにおいて応答性の改善、システムサイズのシュリンクに課題をお持ちであれば本ブログの記事をご一読いただければと幸いです。(本稿に関するお問い合わせについては、お問い合わせフォームよりお願いいたします。)

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