• 公開日:2021年07月20日
  • | 更新日:2022年11月30日

オーディオアンプICの入力形式とは

入力形式の違い

オーディオアンプICには様々な種類の製品があります。アンプの動作方式についてはクラスABアンプとクラスDアンプの違いをご紹介済みですが、今回は入力形式にフォーカスしてお話しさせて頂きます。オーディオアンプICの入力形式として①~③に大別することが出来ます。クラスABアンプとクラスDアンプの違いに関しましてはこちらをご参照下さい。

① アナログ入力

アナログ入力についてはオーディオ信号をそのまま受けることが出来るタイプのICで、シングルエンド入力の製品だけでなく、差動入力に対応した製品もあります。差動入力に対応することで、同相ノイズに対する耐性を強化しています。アンプの動作方式については製品によって異なり、クラスABアンプとクラスDアンプの両方が存在します。昨今の新製品はクラスDアンプが主流となり、出力パワーについては数百ミリワットから数百ワットまで幅広くリリースされています。オーディオアンプICの制御についてはMCU(Micro Controller Unit)などのGPIOピンを使用することを想定したハードウェア・コントロールになります。但し、車載グレードに対応したダイアグ機能(自己診断機能)を有する製品についてはI2C(Inter-Integrated Circuit)などによるソフトウェア・コントロールが採用されています。

② PWM入力

オーディオ信号にPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)を適用し、そのデジタル信号を受けることが出来るタイプのICで、アンプの動作方式としてはクラスDアンプになります。PWM信号を生成するPWM Modulator側で各種オーディオ・プロセッシング(音の味付けなど)を行い、オーディオアンプICはハイパワーを出力することに特化しています。そのため、出力パワーとしては数十ワットから数百ワットが主流になります。オーディオアンプICの制御についてはMCUなどのGPIOピンを使用することを想定したハードウェア・コントロールになります。

③ シリアル・オーディオ入力

シリアル・オーディオデータのフォーマットとしてはI2S(Inter-IC Sound)、Left-Justified、Right-Justified、TDM(Time-division multiplexing)などがあります。これらのデジタル信号を受けられるタイプのICで、アンプの動作方式はクラスDアンプになります。また、オーディオ・プロセッサを内蔵した製品が多く、出力パワーは数十ワットから五十ワットが主流でしたが、最近では数百ワットの製品もリリースされています。オーディオアンプICの制御についてはI2Cなどによるソフトウェア・コントロールになります。

上記の内容をまとめると表1の通りです。

表1 オーディオアンプICの入力形式の違い

 

オーディオアンプICの使用例

Bluetoothスピーカを例に挙げ、オーディオアンプICの使用例をご紹介します。BluetoothモジュールにAudio DACが内蔵されている場合、アナログ入力に対応したオーディオアンプICで受けることが可能です。図1が最もシンプルな構成になります。但し、クラスDアンプの場合にはLCフィルタが必要になることがありますので、ご注意下さい。音質に関してはBluetoothモジュールに内蔵されているAudio DAC、オーディオアンプICなどで決まります。

図1 アナログ入力の使用例

PWM入力の使用例を図2に示します。Bluetoothモジュールのシリアル・オーディオI/Fを使用し、PWM Modulatorによりマルチ・チャネルのPWM信号を生成します。そのPWM信号をクラスDアンプで受け、マルチ・チャネル・スピーカを容易に実現することが出来ます。また、各チャネルにおけるスイッチングのタイミングについてはPWM Modulatorで調整することが可能です。

図2 PWM入力の使用例

シリアル・オーディオ入力の例を図3に示します。BluetoothモジュールにAudio DACが内蔵されていない場合や音質向上のために内蔵Audio DACを使用したくない場合、シリアル・オーディオ入力に対応したオーディオアンプICで受けることが可能です。アナログ入力の使用例と同様にシンプルな構成で、クラスDアンプにオーディオ・プロセッサが内蔵されている場合には音の味付けが可能です。

図3 シリアル・オーディオ入力の使用例

更なる音質の向上を目的として図4のように外付けAudio DACを使用することが出来ます。対象となる製品がHigh End Modelであれば、High SNR(Signal-to-Noise Ratio)、Low THD+N(Total Harmonic Distortion Plus Noise)のAudio DACを使用し、それに合わせてActive Filter(Audio DACによってはI/V変換が必要な場合があります)で使用するLow NoiseのAudio OpAmpを選定します。Low End Modelであれば、製品仕様に適した特性を持つ、ピンコンパチブルなAudio DAC、及びOpAmpを選定すると良いでしょう。もちろん、オーディオアンプICの選定も同様です。

図4 外付けAudio DACの使用例

 

まとめ

オーディオアンプICの入力形式の違いについてBluetoothスピーカを例に挙げ、実際の使用例をご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?同一アプリケーションにおいて入力形式の異なるオーディオアンプICを使用するにより、音質優先、サイズ優先、コスト優先などの製品コンセプトに合わせた開発が可能です。オーディオアンプICを選定する際に参考になれば、幸いです。

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