• 公開日:2021年08月04日
  • | 更新日:2022年11月30日

オーディオアンプICの出力電力の計算方法とは

シングルエンド出力の電力計算

スピーカ・インピーダンスが既に決定している場合、所望の出力電力を得るために「電源電圧として何Vが必要になるのか?」、あるいは「何Aの電流をスピーカに流す必要があるのか?」を概算で求めるシーンがあると思います。そんな時のためにオーディオアンプICの出力電力の計算方法をご紹介します。電力計算ですので、電圧、電流、抵抗の3つのうちのいずれか2つのパラメータが必要になります。そこで、電圧と抵抗の2つのパラメータを使用してシングルエンド出力(Single-ended Output)の電力計算を考えてみます。シングルエンド出力の例を図1に示します。オーディオアンプICの出力とスピーカの間にコンデンサを挿入し、スピーカに直接DC電圧が印加されないようにしています。これはDC電圧に起因するボイスコイルの溶断を避けるための対策です。

図1 シングルエンド出力の例

 

図1の通り、シングルエンド出力の出力電力PSEを計算するために使用するパラメータは出力電圧振幅VOUTPP(出力電圧のPeak to Peak)とスピーカ・インピーダンスRLになります。但し、スピーカには交流信号が印加されるため、実効値で考えます。

………式(1)

 

ここで、出力電圧振幅VOUTrmsをVOUTPPで表すと式(2)になります。

………式(2)

 

式(1)に式(2)を代入して整理すると、PSEを求めることが出来ます。

………式(3)

 

例えば、出力電圧振幅VOUTPPが24V、スピーカ・インピーダンスRLが8Ωの場合、PSEは9Wになります。

 

BTL出力の電力計算

BTL(Bridge Tied Load)でスピーカを使用した場合の出力電力PBTLをについて考えてみます。BTLとは2つのオーディオアンプでスピーカを駆動する接続方式で、VOUT+とVOUT-の差電圧によってスピーカから音を鳴らします。

図2 BTL出力の例

 

BTLにおける出力電圧振幅VOUTrmsをVOUTPPで表すと式(4)になります。

………式(4)

 

式(4)を使用し、出力電力式PBTLを求めると式(5)を得ることが出来ます。

………式(5)

 

ここで、PSEとPBTLの関係は式(6)のようになります。

………式(6)

 

同一の出力電圧振幅、スピーカ・インピーダンスであれば、BTLでスピーカを駆動した場合には式(6)よりPBTLはPSEの4倍の出力電力を得ることが出来ます。例えば、出力電圧振幅VOUTPPが24V、スピーカ・インピーダンスRLが8Ωの場合、PBTLでは36Wが得られます。

 

まとめ

シングルエンド出力とBTL出力の出力電力の計算方法や得られる出力電力の違いについてご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?クラスDアンプの場合にも適用可能な計算式ですが、各図においてLCフィルタを省略した形で記載致しました。厳密にはオーディオアンプICに内蔵されている出力FETのON抵抗、LCフィルタで使用するコイルのDCRなども損失として考慮する必要があります。但し、ご所望の出力電力からオーディオアンプICに必要な電源電圧を概算で求める用途であれば有用な計算式です。是非、ご活用下さい。

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