• 公開日:2021年12月03日
  • | 更新日:2022年11月18日

ディスクリート vs IC ~理想ダイオード回路比較~

  • ライター:短絡亭過電流

あるお客様が電源のダイオードOR回路を検討している際、理想ダイオードICを紹介したところ、こんなコメントを頂きました。

「理想ダイオードって、 ICじゃなくてもできそうですよねwwww

えぇ、、まぁ、、   言いたいことはわかります。

ダイオードOR回路は異なる電圧を1系統にまとめ、電圧が高い方を優先する場合によく使用される手法ですが、電流が大きい場合は、電流とダイオードのVfの積がそのまま電力損失となるため、ダイオードを用いない回路でダイオード特性を再現する「理想ダイオード」を用いることが多くあります。

ところで、ディスクリートで構成する理想ダイオード回路とは??

ということでディスクリートで理想ダイオードを構成した場合、どのような回路になるか、考えてみました。
(※回路図エディターとシミュレーターは、TINA-TIを使用しています。)


チャージポンプを使用せず理想ダイオードを構成するには、Pch-FETとPNPトランジスタを使用しなければなりません。
VG1はDC4V固定、VG2は0V⇔5Vの矩形を入力とし、理想ダイオード回路でダイオードORを構成しました。
出力には100uFのCと10ΩのRを配置しました。

出力であるVCは4V⇔5Vを繰り返すはずですが、5Vは出ますが4Vは何故か低下し、2.57Vとなっています。
これは入力電圧(4V)が低いが故に、PNPトランジスタのVBEが十分に上げられず、相対的にダイオードのVfが大きく見えてしまい、Pch-FETがFull-Onになっていないためです。
ディスクリートの理想ダイオード回路は、低電圧回路ではうまく動作しない可能性がある、と言い換えることができます。
入力電圧をVG1=DC8V、VG2は0V⇔10Vの矩形波にすると問題無く動作します。

出典:Texas Instruments – TINA-TI 『ディスクリート ダイオードOR構成回路』

この回路を低電圧で動作できるようにするには、
・Vfが極端に低いダイオード
・HFEが大きく、VCE(sat)が低いPNPトランジスタ
・可能な限りVgs_onとRonが低いPch-FET
を使用しなければならず、これらを揃えるだけでもかなり面倒です。また、部品点数が多く、実装面積を要するため、小型化には不向きです。

では、1パッケージ化されたICであればどうでしょう?

TI社の2ch理想ダイオードLM66200をTINA-TIで同じように動かしてみました。

出典:Texas Instruments – TINA-TI 『LM66200 ダイオードOR構成回路』

す、、 すばらしい。。。!!
出力VCがしっかりと4Vと5Vを出力しています。ディスクリートでの回路に比べ動作が速いため、波形の鈍りもありません。回路もすっきりしています。
LM66200は最大5.5Vの低電圧入力専用です。低電圧用に最適化されていますので、上記のような特殊な部品を探す必要はありません。
また、LM66200には、ソフトスタートアップ,過熱保護,過電流保護等の、各種機能を内蔵しており、異常時の安全対策もバッチリです。

ディスクリートvsICの理想ダイオード回路比較、個人的にはICの圧勝だと思います。

理想ダイオード回路はディスクリート部品でも構成可能ですが、ICを用いた方が特性が良く、回路規模(実装面積)も小さくできるため、お奨めです。
TI社では低電圧品から高電圧品、FET内蔵品から外付け品(大電流向け)と、幅広い製品ラインナップを持っています。
理想ダイオードを御検討の際は、是非TI社のWebページを御参照ください。