• 公開日:2022年03月03日
  • | 更新日:2022年11月18日

USB Power Deliveryで電力供給・受電の切り替え!

昨今、USB Type-Cコネクタの普及に伴い、USB Power Deliveryの検討も進んでおります。
USB Type-C規格のDRP(Dual Role Port)に設定することで、電力供給DFP(Downstream Facing Port)と受電側UFP(Upstream Facing Port)のどちらにも切り替えができるため、アプリケーション設計(仕様)の幅を広げることが可能となりました。
(例:今まではUSB充電器から受電するのみだったが、アクセサリ製品などへの給電も可能 など)

※USB Type-C概要はこちらを合わせてご参照ください。

さらに、USB Type-Cでは最大15W(5V/3A)の電力が、USB Power Deliveryにより、
最大100W(20V/5A)まで取り扱うことが可能となりました。
補足:USB PD EPR(Extended Power Range)では、240W(48V/5A)まで対応可能です。

※USB Power Deliveryの概要はこちらも合わせてご参照ください。

本ブログでは、Texas Instruments社(以下、TI社)のTPS65987EVMを使用して、DRPの動作検証例を紹介します。

 

TPS65987Dについて

TPS65987DはUSB Power Deliveryコントローラーです。
DFP/UFP/DRPに設定することができ、かつ100Wまで対応可能な2本のPower pathを有しております。
(補足:USB PD EPR(Extended Power Range)には未対応です。)

TPS65987D Datasheet
https://www.tij.co.jp/jp/lit/ds/symlink/tps25750.pdf

※TPS65987Dの概要はこちらも合わせてご参照ください。

 

TPS65987EVMについて

TPS65987Dが搭載された評価基板です。
TPS6598X-CONFIG(以下、GUI)で構成を簡単に設定することができるため、USP Power Deliveryのご検証に最適です。

出典:TPS65987 Evaluation Module
https://www.ti.com/lit/ug/slvubo9a/slvubo9a.pdf

※TPS65987EVMの概要はこちらも合わせてご参照ください。

 

検証内容

検証内容は以下となり、詳細は各項目で紹介させていただきます。
1. DRPとDFP or UFPの接続
2. DRP同士の接続

 

1.DRPとDFP or UFPの接続

1-1.GUIのインストール
My TIにご登録頂く必要が御座いますが、無償で提供されております。
https://www.ti.com/tool/TPS6598X-CONFIG

1-2.GUIの設定
今回はDRP、DFP、UFPを変更するためGUI起動後、以下の項目を選択します。
-Project
-New Project
-TPS65987DHH
-Standard (Recommended)
-UFP only or DFP only or DRP

 

補足:上記設定後、Port Setting⇒Port ConfigurationでUFP/DFP/DRPの変更が可能です。

 

※詳細はTPS659xx Application Customization Tool User’s Guideをご参照ください。
https://www.ti.com/lit/ug/slvub60c/slvub60c.pdf

1-3.評価方法
TPS65987EVMを3個用意し、DRP設定のEVMにType-Cケーブルを介して、
UFP or DFP設定のEVMを接続します。
(VBUSは20V設定)

【手順】
①DRP(Side A)とUFP(Side B)をType-Cケーブルで接続
②DRP(Side A)とUFP(Side B)の接続解除
③DRP(Side A)とDFP(Side C)をType-Cケーブルで接続
④DRP(Side A)とDFP(Side C)の接続解除

 

【評価環境】

 

【接続イメージ】

 

1-4.評価結果
DRP設定のSide Aが適切な動作となりました。

Side A Side B Side C 結果
DRP UFP Side AはDFP動作
DRP DFP Side AはUFP動作

 

【VBUS波形】
①~④の切り替えに応じて、20Vの電力供給・受電が適切に行われていることが確認できました。

使用機材:Tektronix社製 DPO4034

 

【USB Power Deliveryアナライザ結果】
VBUS波形のみでは、Side AのDRPの役割切り替えがわかりにくいため、通信状況を確認しました。
接続先がSide B or C(Left)へ切り替わることに合わせて、Side A(Right)もDFP(SRC) or UFP(SNK)に切り替わっていることが確認できました。

使用機材:TELEDYNE LECROY社製  USB-TMPD-M02-X-ND

 

 

2.DRP同士の接続

2-1.評価方法
TPS65987EVMを2個用意し、GUIでDRPに設定したEVM同士をType-Cケーブルで接続しました。
(VBUSは20V設定)

2-2.評価結果
DRP同士の接続を10回実施した結果、Side AとSide Bが各5回ずつDFP or UFPになり、
接続するタイミングでどちらかの役割になることが確認できました。

今回はさらに、Side AをTry.Src設定とし、DFPの優位性を確保できるかを検証しました。
※GUIの以下赤枠でTry.Srcに設定しました。
(Try.Snkの設定も可能です。)

 

*Try.Src/Snkの概要はこちらの動画6:32~7:45をご参照ください。

 

DRP同士の接続を10回実施した結果、
Side Aが10回DFPになる(優位性が確立されている)ことが確認できました。

 

 

まとめ

TPS65987EVMを使用して以下DRP動作を確認することができました。
1.DRPとDFP or UFPの接続
2.DRP同士の接続

TPS65987Dで簡単にDRPを実現し、Try.Src/Snkなどの設定も可能となりますので、
USB Power Deliveryを新規設計される際にはご検討いただければ幸いです。