• 公開日:2022年03月05日
  • | 更新日:2022年11月18日

Micron社 Parallel NOR MT28EW Hardware Protection機能

はじめに

BootデータやOS、アプリケーションソフト等、プログラムデータの格納用途として使用されるNOR Flashは、意図しない書込み、消去からデータを守るための保護機能を備えているものがあります。Micron社 Parallel NOR MT28EWシリーズでは、データ保護機能としてHardware Protectionを搭載しており、ソフトウェアの制御無しに、保護機能を使用することができます。本記事では、Hardware Protectionの詳細と使い方について紹介します。

Micron MT28EWシリーズ

Micron社はParallel NOR Flashの標準品として、MT28EWシリーズを展開しています。MT28EWシリーズは非同期式のParallel NORで、x8, x16モードによるデータ転送が可能です。容量は128Mb~1Gb, 電源電圧は3.0V, パッケージは56L-TSOP, 64b-BGAのラインナップがあります。

表1: Micron社Parallel NOR MT28EWシリーズ(1)

Hardware Protection

Hardware Protection

Hardware Protectionは、端子の制御によって、意図しない書き込み、消去から特定のブロックを保護する機能です。MT28EWのブロックサイズは、128KB(x8モード)、または64WB(x16モード)で、この1 ブロックを保護します。保護方法は2種類あり、ブロックアドレスの最上位ブロックを保護するHigh Lock, 最下位ブロックを保護するLow Lockがあります。Low Lockの保護領域は、どの容量帯でも同じでBlock 0 (000 0000h ~ 001 FFFFh, x8モード)ですが、High Lockは容量によって最上位ブロックが異なるため、保護するアドレス領域も異なります。例えば、128Mbでは、Block 127 (0FE 0000h ~ 0FF FFFFh, x8モード)、1Gbでは、Block 1023 (7FE 0000h ~ FFF FFFFh, x8モード)を保護します。

表2: 容量別Protection領域(1)

使い方

VPP/WP#ピンの制御でProtectionの有効/無効を決定します。Highの時、Protectionは無効で、Lowの時、Protectionが有効になります。使い方は非常にシンプルですが、VPP/WP#ピンの扱いには、以下の注意点があります。

  • 安定動作のため、入力はHighまたはLowでの駆動を推奨します。
  • システムの要求でFloatingにしなければいけない場合や、外部Pull-up/Pull-downを使用しない場合、内部Pull-upが有効になります。

図1: ロジックダイアグラム(1)

High Lock, Low Lockの判別方法

High LockとLow Lockは型番から判別することができます。以下に示すネーミングコードが”H”の製品はHigh Lock, “L”の製品はLow Lockになります。

図2: 型番ネーミングガイド(1)

Block Protection情報の読み取り

AUTO SELECTコマンドを使用することで、Block Protection情報を読み取ることができます。AUTO SELECTコマンドは、3rdサイクルまで 共通のアドレス・データ入力(表3)を行い、4thサイクルで、読み出したい情報によって異なるアドレス・データ入力(表4)をすることで、DQ[7:0](x8モード), またはDQ15/A-1, DQ[14:0](x16モード)にBlock Protection情報が出力されます。①では、ユーザーがLock可能かどうか(デフォルトではLock可能)、②では、保護状況の確認として、任意のBlockが保護されているかどうかを確認することができます。

表3: AUTO SELECTコマンド(1)

表4: Block Protection情報の読み取り(AUTO SELECT 4thサイクル)(1)

High Lock品とLow Lock品の互換性

「High Lock品とLow Lock品に互換性はありますか?」という質問を良くいただきます。結論から言うと、Hardware Protectionを使用している場合は、単純な置き換えはできない可能性がありますが、使用していない場合は、ピンコンパチで置き換えることが可能です。先述の通り、High LockとLow Lockでは、Protection領域が異なるため、データの書き換え領域とProtection領域が重なってしまうと、保護機能により適切にデータの書き換えが実行されません。Hardware Protectionを使用していない場合は、High LockとLow Lockの差分は透過的であり、ソフトウェアや制御方法を変更することなく置き換えることができます。
Hardware Protectionを使用していても、書き込みと保護機能が競合しなければ、ピンコンパチで置き換えられる可能性はありますので、置き換えの際は、High Lock, Low Lockの差分を十分にご理解の上、ユーザー様にて検証いただくことを推奨します。

まとめ

  • Hardware Protectionは、VPP/WP#ピンの制御によって特定のブロックを保護する機能です。
  • High Lock品はアドレスの最上位ブロック、Low Lockは最下位ブロックを保護します。
  • Hardware Protectionを使用していない場合は、High LockとLow Lockはピンコンパチで置き換え可能です。

出典

(1) Micron MT28EW 512Mb データシート
https://media-www.micron.com/-/media/client/global/documents/products/data-sheet/nor-flash/parallel/mt28ew_mt28fw/mt28ew_qlkp_512_aba_0sit.pdf