• 公開日:2022年03月15日
  • | 更新日:2022年11月18日

伝送路反射とは?③ ~伝送路終端で陥る問題点とは?CMOS信号の終端は必要?~

はじめに

これまで、2回に渡り、伝送路及び伝送路反射について説明しました。

その中で、伝送路の特性インピーダンスと同じ値の終端抵抗を設けることで反射を防げることが分かりました。
しかし、終端抵抗を設置するにあたり、以下のようなことをしばしば耳にします。

・終端抵抗は伝送路の何処に置いてもその効果は同じ?
・CMOS信号の終端は必要?

このような疑問について一緒に学んで行きたいと思い、このブログを補足しました。

伝送路の反射を防ぐには、正しい値の終端抵抗を適切な位置に配置することが極めて重要です。
本稿では、前回のブログで説明した伝送路反射の理論を元に、伝送路途中に終端抵抗を設置した場合に何が起きるかを解説します。
加えて、適切なCMOS信号の終端方法についても説明します。

伝送路の途中に終端抵抗が設置されると何が起きる?

伝送路は、その特性インピーダンスに等しい抵抗値で終端することはよく知られています。
しかし、終端抵抗はその配置にも注意が必要です。
終端抵抗は受信端の近傍に設置するのが定石です。
伝送路の途中に配置した場合にどのような問題が発生するか、以下の図に示す様に受信端の手前、P地点に終端抵抗を配置した時の電気信号の挙動を見ます。

P点から見たインピーダンス ZxはROとZOの並列負荷のため、以下の計算となります

ZxとZOは等しくないため、この点で反射が発生します。
加えて、最遠端(終端抵抗Ziの箇所)は解放端(オープン)となり、ここでは全反射が起きます。
この結果、2か所で反射が生じて正しい波形が得られません。不具合の要因になります。

CMOSの信号を使った場合の終端は必要か?

「CMOSロジックICには終端抵抗が必要か?」と聞かれる事があります。
その答えは信号の遷移時間と伝送距離で決まり、一般に次式を満たせば不要と言われています。

tx >=  2*tr ※ tx:信号の遷移時間  2*tr:信号の伝搬時間(それぞれ以下のイメージをご参照下さい)

伝送路終端が必要だからと言って、もしCMOSドライバーICに50Ω終端をつなぐとどうなるのでしょうか?
TI社製 インバータ SN74LVC04Aを例に見てみます。

・SN74LVC04Aを3.0V で使用、Voh = 2.4Vmin
・50Ω終端に流れる電流は 2.4V(min) / 50Ω = 48mA

結果、このICの最大負荷電流は24mAなのでVohを保証できません。

出典:Texas Instruments – データシート『 SNx4LVC04A Hex Inverters 』(https://www.ti.com/jp/lit/gpn/sn74lvc04a)

 

CMOSの信号を使った場合のケアは?

CMOS信号では遠端での終端は現実的でありません。
このため、CMOS信号使用時のケアには以下の方法が使われます。

①伝送路と見なす必要のない短い配線にする(CMOS信号の遷移時間に比べ伝送路の信号の伝搬時間を小さくする)
②ソース終端法(シリーズ終端)を使用する

まとめ

本稿では終端抵抗の位置が重要であること、適切なCMOS回路の終端手法を説明しました。

伝送路の途中に終端抵抗を配置すると、2か所で反射が生じて不具合の要因になります。
またCMOSの終端に関してはドライブ能力の観点から、並列終端が使えないため、ソース終端や、伝送路と見なす必要のない短い配線にして対処する必要があることを理解できた思います。

本稿が課題解決の一助になれば幸いです。