• 公開日:2022年03月28日
  • | 更新日:2022年11月18日

USB2.0 High Speed信号のアイパターンを開くには…

USB2.0は汎用的な規格となっておりますので、多くの設計者様が一度は触れる規格かと思います。
ご設計時、USB2.0のHigh Speed信号のアイパターンが潰れてしまい、適切な通信が出来ないという問題に行き当たったことはございませんでしょうか?

伝送線路などの設計見直しなどをご検討される場合が多いかと思いますが、ICを追加することで、この問題を解決出来る場合がございます。

本ブログでは、Texas Instruments社のTUSB216シグナルコンディショナーICを紹介させていただきます。

アイパターンについて

TUSB216の紹介の前に、まずはアイパターンについて解説します。
アイパターンは信号波形を複数回分重ね合わせた結果で、伝送経路の良し悪しは
信号中央部分(赤いマスク)の開き具合によって判断することができます。
Figure 8-8:アイパターンが潰れており、0 or 1の判定が適切に行えない
Figure 8-10:アイパターンが開いており、0 or 1の判定が適切に行える

アイパターンが潰れる原因は、信号レベルの減衰による垂直方向への影響や、ジッターよる水平方向への影響などがあります。

出典:TUSB216 USB 2.0 High-Speed Signal Conditioner With BC 1.2 Controller
https://www.ti.com/lit/ds/symlink/tusb216.pdf

 

TUSB216について

TUSB216はUSB2.0 High Speed用シグナルコンディショナーICで、
4つのEdge and DC Boostと3つのRx Sensitivityレベルの組み合わせによって、潰れたアイパターンを開くことが可能です。
-Edge and DC Boost アイパターンの垂直方向改善のために、高周波/低周波成分の改善
-Rx Sensitivity     アイパターンの水平方向改善のためにジッター除去

また、Edge and DC BoostとRx Sensitivityレベルは外付けの抵抗値によって設定可能となります。
詳細はTable 8-1をご参照ください。

 

なお、ケーブル長に応じた推奨設定値がTable 8-5にございますので、まずはこちらをお試しいただき、
波形に応じて各設定を再調整ください。

【代表例】
先に掲載したFigure 8-8と8-10は以下測定条件のVarious cable lengthsが5mでの波形となります。
TUSB216がないFigure 8-8ではアイパターンが潰れていますが、
TUSB216を追加したFigure 8-10ではアイパターンが開いていることがわかります。

また、TUSB216はBattery Charging Specification 1.2(以下、BC1.2)のCDP(Charging Downstream Port)コントロール機能も有しておりますが、CDPが不要な場合はディセーブルにすることも可能です。

出典:TUSB216 USB 2.0 High-Speed Signal Conditioner With BC 1.2 Controller
https://www.ti.com/lit/ds/symlink/tusb216.pdf

<補足>
CDPはBC1.2 で規定されている給電ポートで、USB2.0通信をサポートし、かつ最大1.5Aまでの電流を引くことが可能です。
合わせてこちらもご参照ください。

 

TUSB216を2個使うことで10mまでケーブルを伸ばすことが可能

使用するケーブルによっても異なりますが、TUSB216を1個使用すると5m、2個使用すると10mまでの延長が可能となります。
あくまでも参考情報となりますが、以下設定のTUSB216を2個使用し、10mケーブルを繋いだ場合のアイパターン波形となります。
-Edge and DC BoostはLevel3
-Rx SensitivityはMedium

【接続イメージ】

【アイパターン波形】
Please keep in mind the following:
・Customer result will vary for the below image
・Result is dependent on performance of the USB Host or Hub and should also be evaluated
・Cable size and quality will also impact the result and will vary from the below.
・This test was run with evaluation boards, on board performance may vary
(additional insertion loss due to extra trace/layout, etc.).
・Direct connections were made between all components of this test.

出典:E2E forum
https://e2e.ti.com/support/interface-group/interface/f/interface-forum/873193/tusb213-about-serial-connect-for-10m-cable

 

まとめ

USB2.0のHigh Speed信号のアイパターンを開くためには、シグナルコンディショナーICをご活用いただくことも一案となります。

アイパターンの潰れ具合やご使用されるケーブルなどの条件によって得られる効果は異なりますが、ご設計時にお困りの際は一度ご検討いただけますと幸いです。

また、上記内容と重複する点もございますが、TUSB216紹介動画も用意しておりますので、
こちらも合わせてご参照いただけますと幸いです。