• 公開日:2022年04月06日
  • | 更新日:2022年11月18日

マシンビジョン向けカメラ用インターフェース V3Link

今回の技術ブログでは、2021年秋にTexas Instruments社(以下、TI社)から発売されたV3Link製品を紹介します。

V3Linkは、マシンビジョン向けのカメラ用インターフェースICになり、シリアライザーとデシリアライザーで構成されます。
この製品の主な特徴は以下になります。

・高解像度ビデオ信号、制御信号、および電力を1本のケーブルで同時伝送可能
・非圧縮のビデオ信号を最大15m(*1)で伝送可能
・Full HD 1080p 2.3MP 60fps 解像度に対応

*1:伝送するケーブル品質や伝送速度により最大伝送距離は変わります。

製品概要

カメラシステムではmipiインターフェースが広く使われています。しかし、mipiインターフェースは長距離伝送が得意ではなく、伝送できる距離は長くとも10-30cm程度です。マシンビジョンなどに使用されるカメラシステムでは、カメラセンサーからプロセッサーまでの距離が長い場合が多く、mipiインターフェースのままでは使用することができません。

図1. mipiインタフェースのみで伝送

そこで、V3Linkシリアライザとデシリアライザペアを追加して、長距離伝送の課題を解決します。これにより、伝送距離は最大で15m(*1)まで延長することが可能になります。V3Linkは、データにクロックを重畳させる方式を採用しました。 これにより、ケーブルスキュ―の問題が解消でき、アダプティブ・イコライザー技術を加えて、長距離伝送を実現できました。詳しい内容については、過去の技術ブログ「FPD-Linkって知っている?(1/4) ~はじまり~」をご参考ください。
また、伝送できる距離が長くなることに加え、1本の配線でカメラ(ビデオ)信号と、I2CやGPIOと言ったカメラ制御に必要な低速な制御信号、更にはカメラモジュールに必要な電力を供給することも可能になります。これにより、必要な配線の本数を削減できます。

 

図2. V3Linkを介したカメラとSocの伝送

V3Linkの他に、TI社には、映像用高速インターフェースとしてFPD-Link3が存在します。FPD-Link3は、ドライブレコーダーやサラウンドビューモニターと言った、車載市場に特化した製品です。これに対し、V3Linkは産業用向けの製品です。使用温度範囲や品質管理等、車載グレード製品に求められる特別な項目を除けば、両者の機能や特徴は同じです。

V3LinkシリアライザーTSER953は、mipi信号を受け、そのデータをクロック信号と共にシリアル信号へと変換します。また、反対にV3LinkデシリアライザーTDES954は、V3Link信号を受けmipi信号に復元します。このシリアル化した信号をV3Linkと呼びます。

 

図3. TSER953とTDES954の特徴

V3Linkを使用すれば、カメラとSoC(プロセッサー)間を最大15mという長い距離を1対のケーブルで結ぶことができます。

以下はV3Link製品のポートフォリオです。
シリアライザー、デシリアライザーに加え、4ポートハブTDES960があります。

図4. V3Link製品の製品ラインナップ

アプリケーション例

V3Linkの活躍が期待される主なアプリケーションは、マシンビジョンカメラと医療支援ロボットカメラです。

マシンビジョンカメラは、工場などで製品出荷前に、カメラを使用して良品と不良品を識別する為に広く使われています。従来は、人の目で検査していた工程を、カメラを使用して、高速かつ正確に、出荷する製品の良否を判断します。カメラの性能向上により、解像度が高くなり、より高速で識別が可能となり、半導体チップや電子機器、医療品や食品など様々な製品の検査工程で使用されるようになりました。

図5. マシンビジョンのカメラとSoC間の伝送イメージ

マシンビジョンの他、医療用支援ロボットもV3Linkの活用が期待される分野です。医療用支援ロボットは、先端が細いためカメラなどを使用する際は、カメラユニットとの接続には、出来るだけ細いケーブルを使用する必要があります。理由としましては、ケーブルが多くなることで先端が重くなり、アームの精密な動きが損なわれる可能性があります。また、先で述べたように常に精密な動きを要求されるので非圧縮で遅延の無い、高解像度のビデオデータを転送する必要があります。

図6. 医療用支援ロボットのイメージ

既に、市場には様々な高速インターフェースが存在します。 これらの高速インターフェースを使えば高解像度のデータを伝送することは可能です。しかし、多くの高速インターフェースはリアルタイムな映像伝送には向きません。

例えば、イーサネットは長距離、高速伝送用インターフェースとして知られています。イーサネットは伝送する過程で圧縮プロセスを行うことや、プロトコルオーバーヘッドが大きいため、大きな遅延があります。このため、イーサネットではマシンビジョンや医療用支援ロボットに要求される高解像度ビデオデータの迅速な処理を行うことはできません。V3Link製品を使用すれば、低遅延かつ非圧縮で高解像度のビデオデータ伝送を実現できます。

 

まとめ

V3Link(シリアライザー + デシリアライザー)を使うことで、高解像度のビデオデータを非圧縮かつリアルタイムで長距離伝送できます。加えて、高解像度ビデオ信号、制御信号(I2C/GPIO)、および電力を1本の配線で同時に伝送することができるため、パラレルで伝送する場合に比べてケーブル本数が少なくなることで、ケーブルのコストの削減ができます。また基板の配線パターンも削減できるため、基板面積も小さくすることができます。これによりシステムコストを削減できます。マシンビジョン、医療用ロボット分野に限らず、ビデオカメラを備えたシステムが有りましたらご検討してみてはいかがでしょうか?

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