• 公開日:2023年01月20日
  • | 更新日:2023年03月09日

シャントレギュレーター「431」を攻略する!『その1』

  • ライター:短絡亭過電流

さて、多くの若手設計者の頭をぐちゃぐちゃにする憎い奴、シャントレギュレーターについて語ります。
 
 
「431」と略されることの多いシャントレギュレーターですが、「どう使ったらいいかわからない!」とか「何が入力?どこが出力?」と多くの声を頂きます。
記号(回路シンボル)は↓こんなダイオードに1本足しただけなのに、実際その使い方はさまざまです。

出典:Texas Instruments –データシート TL431, TL432 Precision Programmable Reference
 
 
内部回路は↓このようになっています。オペアンプとNPNトランジスタ、基準電圧源(Vref)で構成されています。非常にシンプルですね。

出典:Texas Instruments –データシート TL431, TL432 Precision Programmable Reference
 
 
上の図ではREF端子をCATHODE端子に接続することで、降伏電圧=Vrefのツェナーダイオードとして使用することができます。
ツェナーダイオードとしての特性をTexas Instruments社の『TINA-TI』を使ってシミュレーションしてみました。

出典:Texas Instruments – TINA-TI シミュレーション画面
 
 
入力電圧(VG)が変化しても出力電圧(VM1)はVrefである2.495Vでクランプされており、ツェナーダイオードとして動作していることがわかります。
ツェナーダイオードとの大きな違いは、その構造です。上図の通り、内部にはオペアンプがあります。オペアンプがあるので、使い方/設計によっては、発振してしまいます。

【オペアンプ出力発振例】
出典:Texas Instruments – TINA-TI シミュレーション画面
 
 
逆に、正しく使用できれば非常に便利なICです。
温度変化に対する特性が安定しており、高精度な内部電圧源を備えているため、センサー出力の増幅や電源回路の出力電圧検出/制御で多く使用されています。
一例として、TL431を使った3.3V/100mA出力のリニアレギュレーター回路をTINA-TIで作ってみました。

入力電圧を10V→5V→7Vに振りましたが、出力電圧は3.3V一定を示しています。
※その他多様な使い方ができますが、回路例についてはデータシートに記載が御座いますので、是非ご参照ください。

さて、前述の通り、設計によっては出力が発振する場合があります。
発振する原因はオペアンプと同様、「容量」、つまりコンデンサーです。では、どれだけの容量を付けると発振するのか?については、データシートに記載されている下記の木の年輪のようなグラフが参考にできます。

出典:Texas Instruments –データシート TL431, TL432 Precision Programmable Reference

見かたがちょっと難しいですが、
【「引き込む電流」と「Cの値」が交差する点が、A,B,C,Dそれぞれの「線の内側」に存在する場合に、不安定になる】
ことを意味しています。
ここで、敢えて不安定となる条件、Vka=5V、Ika=67mA、CL=0.22uFで、どんな挙動になるか、TINA-TIで確認してみました。

出典:Texas Instruments – TINA-TI シミュレーション画面
出典:Texas Instruments –データシート TL431, TL432 Precision Programmable Reference 
 
Vkaが微妙に発振しています
CLを小さくしたり無くしたりするのは難しいと思うので、対策としてはCLを大きくするしかありません。
 
 
絶縁電源回路の出力電圧の帰還制御に431を使用する場合の基本的な回路構成は以下の通りです。

出典:Texas Instruments –リファレンス・デザイン PMP4478
 
 
Voutが上昇し、431のRef端子がVrefより高くなると、431がIkaを大きく引き込み、フォトカプラーのLEDに電流が流れ、フォトカプラーのトランジスタがONし、1次側制御ICのFB端子を上昇させ、Dutyや動作モードに働きかけ、出力電圧を一定に保つよう制御が行われます。
多くの絶縁電源制御ICは、フォトカプラーと431を使用して負帰還制御を構成するよう作られています。
絶縁電源の負帰還制御において、431は「肝」とも言うべき部品です。ただしその周辺にはRとCを組み合わせて、応答性を調整する必要があります。
このRとCが設計者を悩ませるんです。
どのコンポーネントがどのように作用しているのか、理解している人は多くありません。

次回の『その2』では、これら周辺部品について解説します。