- 公開日:2023年03月13日
- | 更新日:2023年08月22日
最強の汎用性 絶縁型SSRコントローラー 【TPSI3050】
ある日、お客様からこのような御相談を頂きました。
「リレー回路を何とかしたいんだよね」
よくよく話を聞いてみると、電磁リレー回路を用いるにあたって、次のような「悩み」があるとのことでした。
①電流定格や耐圧で型番が変わる ⇒ 複数の在庫を保有する必要がある、回路の使い回しが困難
②部品高さ ⇒ 小型品でも10mm以上
③チャタリング対策 ⇒ 場合によってはフィルター回路や電圧クランプ回路の追加が必要になる
④SSR(ソリッド・ステート・リレー)が高価 ⇒ 回路コストを圧迫する
⑤ONからOFFにした際の遅延 ⇒ 過電流時の保護回路を別途追加する必要がある
電磁リレー接点に流す電流や印加する電圧によって、使用可能なリレーの型番は変わりますし、パッケージ(寸法)も異なることが多いため、別型番のリレーを使うので、基板そのものを改版しなければならないケースをよく目にします。制御部分は共通なのに、要求によっては電磁リレーを使い分けなければならず、複数種の基板を用意することもあります。
電流の大小によってパッケージサイズが異なるのか?ですが、その構造によるところがあります。
一般的な電磁リレーの構造を示します。
電磁リレーは、コイルに電流を流し、鉄芯を磁化させることで電磁石となり、その磁力により可動鉄片を鉄芯側に引き寄せ、両接点を接触させることで導通させます。
コイルの電流を止めると、鉄芯は磁力を保持できなくなり、復帰バネにより両接点を切り離します。
大電流導通可能な電磁リレーは、接点での接触抵抗を下げるため、両接点が大きくなっており、重量があるため、復帰バネもそれなりの強さで可動鉄片を持ち上げます。電磁石による可動鉄片を引き寄せるパワー(トルク)は鉄芯の面積とコイルの巻き数、コイル電流に比例するため、太い鉄芯に銅線をいっぱい巻いてそのパワーを実現します。
また、両接点間には高電圧がかかっても放電しない程度の絶縁距離(Air gap)が必要です。
以上のことから、電磁リレーの内部には、その構造が故に、必ず「空間」が必要で、特に高さ方向を下げ、低背で設計することは困難です。
また、ON→OFFの際には、電磁石となった鉄芯が消磁するまでの時間が存在するため、瞬時にOFFにすることは困難です。それにより、過電流障害発生時の緊急停止では、想定以上の電流が流れてしまうことがあります。
電磁リレーは機械的な動作で接点をON/OFFさせますが、機械的だからこそチャタリングが発生します。
チャタリングは両接点が接触した際に発生するバウンドが原因なので、解消することはできません。そのため、チャタリングによる電圧の振動が回路に伝搬しないように、信号であればフリップフロップを用いたチャタ取り回路、電源であればLCフィルターを後段に設けることがあります。
これら電磁リレーの弱点を補完した形で、ソリッド・ステート・リレー(SSR)を使う方も多いと思います。
SSRは「無接点リレー」や「半導体リレー」等とも呼ばれ、機械的なスイッチ構造ではなく、半導体スイッチを用いていますので、チャタリングはありません。
SSRは内部のスイッチ素子(Photo MOS-FET)が突合せ構造になっており、双方向での使用が可能、入力はLEDが発光するに必要な電流を流すことでON/OFF制御が可能です。また半導体なので、スイッチ動作のための空間は不要、低背となっています。
SSRの弱点は、スイッチ部分が半導体であるが故に、ON抵抗が存在するため、電磁リレー程電流は流せません。大電流に対応した製品もありますが、価格が跳ね上がります。電流容量毎に型番を分けるのは、電磁リレーと同じです。また、ON/OFF制御はデバイス内部のLEDで行うため、応答は早くありません。電磁リレー程ではありませんが、応答遅れにより、過電流発生時には想定以上の電流が流れる可能性があります。
そこで、TI社のSSRコントローラー TPSI3050 をお勧めします。
出典:Texas Instruments – TPSI3050 データシート
TPSI3050は強化絶縁、絶縁DC/DCが内蔵されており1電源で使用可能、1.5A_source/3A_sinkのゲートドライブ回路で高QgFETでも1桁usecでON/OFFさせることができます。
このFET、なんとお好きなFETを使用することができます。
FETは電源回路や電力経路のスイッチ等に多く使用されています。TPSI3050を用いることで、これまで使い慣れたFETでSSRをサクッと構成することができます。
また、SSR以外にもハイサイドスイッチのように使うことも可能です。
出典:Texas Instruments – TPSI3050 アプリケーションノート
電磁リレーや従来のSSRより応答が非常に速いため、過電流時の緊急停止制御が瞬時に行えます。
電流検出に絶縁コンパレーターAMC23C10を用いることで、危険な電流を即座に検出し絶縁層を跨いでアラートを出力しTPSI3050を瞬時にOFF、より安全性の高い回路を構成できます。更に交流電源ラインのON/OFFスイッチでは、ゼロ電圧で制御することでスイッチングノイズを低減することができます。
TI社は多種多様な絶縁系ICを提供しており、それらの絶縁性能は非常に堅牢です。
安全性の高い絶縁回路の設計には、是非TI社製品を御検討ください。