• 公開日:2023年09月20日
  • | 更新日:2024年05月30日

GreenPAKでリセットICを作ってみた

  • ライター:短絡亭過電流

 EOLで困った 

あるお客様からこのような依頼がありました。
「量産している製品で使用しているリセットICがEOLになったから 何とかして欲しい。

息の長い優れた製品であれば、量産で使用している半導体のEOL(End Of Life)は、必ずと言って良い程起こり得る課題です。
そのため、設計者は製品の品質を維持するため、EOLと戦い続ける必要があります。

今回お声がけ下さったお客様に、詳細をお聞きしました。
 ・使用していたのは90年代にリリースされたウィンドウコンパレータ型リセットIC
 ・Delay時間は固定で使用、200msecと300msecの2系統
 ・出力はOpen-Drain、検出対象の電圧が3.0V程度でHigh、2.8V程度でLowを出力
 ・代替品は存在するが、ピンアサインが異なるため、基板改版は必須
 ・代替品は従来品より高価

EOLになったリセットICはSOIC-8パッケージ、分圧抵抗で検出電圧の閾値を、Delayをコンデンサの容量で設定するタイプでした。
これまで、Delayに関しては300msecの設定のまま、様々な製品で回路図をそのままコピーして使用されている状況ですが、これを機に 部品点数の削減  と  実装面積の縮小 も、併せて検討する方針とのことでした。

一般的なリセットICの「Delay」時間は、電圧の立ち上がりを検出してから出力が発報されるまでの時間を指します。

これらの背景を勘案し、Renesas社GreenPAKで、要望に沿ったリセットICを作成することにしました。GreenPAKはデジアナ混在のプログラマブルICです。開発/設計にはGo Configure(無償)を使用します。
GreenPAKはそのIC内部に任意の回路作り込むことができるため、複数の回路を取り込め、且つEOLとなってもこれまでの回路をそのまま継承でき、量産製品の維持にかかるコストを軽減できます。

 Go Configureを開いてみた 

GreenPAKの開発環境「Go Configure」の画面はこのようになっています。

今回はウィンドウコンパレータが必要なため、アナログコンパレータ(ACMP)とディレイ回路(CNT/DLY)を搭載した「SLG46110V」を使うことにします。
SLG46110Vはパッケージサイズが1.6mmx1.6mmと超小型、更にLUT(Look Up Table:ロジック回路数)を10個内蔵しており、様々な回路を集約できます。

こちらがGo Configureの開発画面です。

真ん中のウィンドウでデバイスの電源電圧範囲を指定することができます。右側のウィンドウでは使用するコンポーネントを指定し、チェックを入れるとワークエリアにそのコンポーネントを呼び出すことができます。
とりあえずワークエリアにコンパレータ、ディレイ、オシレータ、パワーオンリセットを出してみました。

 設計してみた ①ウィンドウコンパレータ 

通常のコンパレータに魔改造を施し、ウィンドウコンパレータにしてみました。

[IN+ Gain]をx0.25にしました。これで他の設定値が4倍になります。感覚的に「x0.25だと1/4じゃね?」と思いますが、逆っぽいです。
[Hysteresis]を50mV、[IN- Source]を750mVにしました。Gain設定により4倍になっていますので、750mVx4=3.0Vを中心に、±100mV(50mVx4=Δ200mV)のウィンドウコンパレータができました。

[PIN 3]に入力される電圧が3.1V以上だとHighを発報し、2.9V未満になるとLowを発報します。

Go Configureにはシミュレーション機能があるので、波形を表示してみました。

動作自体は予定通りなんですが、 う~ん、、、 なんて言うか、、、 若干のこれじゃない感があります。
基準電圧の精度が起因しているものと思いますが、閾値が60mV程度上振れています。なのでちょっと調整。。

まぁまぁいいんじゃないでしょうか。

 設計してみた ②ディレイカウンタ 

次に遅延時間を生成するためのクロックをOSCから作ります。

SLG46110V内蔵のオシレータは、その源震を2MHzと25kHzから選べます。[OUT0/1]から源震がそのまま出力され、他の端子からは源震を分周したクロックが出力されます。
今回の源震は25kHzとします。

CNT/DLYの分解能は8bitなので、カウントの最高値は255となります。
25kHzのクロックを1/48分周し、154カウントすると約300msec、102カウントであれば200msecとなるはずです。

どんぴしゃですね

 設計してみた ③ディレイ付きリセットIC 

さて、300msecと200msecのカウンタができましたので、ウィンドウコンパレータと接続してみました。


ぉおぅ、 う、美しい。。。
正に狙い通りの動作です。

 まとめ 

Renesas社のGreenPAKは、従来のプログラマブルデバイスとは異なり、開発言語(HDL等)を必要とせず、回路図が見られる方であれば、誰でも直ぐにカスタムICを作ることができます。
今回の設計例では、LUTは一切使っておらず、コンパレータも1ch残っているため、更なる回路の取り込みや高集積化、高機能化が可能です。

回路の小型化をお考えの方は、是非GreenPAKを御検討ください。
ルネサス製品をお探しの方は、メーカーページもぜひご覧ください。
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