• 公開日:2023年12月28日
  • | 更新日:2024年05月30日

群雄割拠の小型電源市場を制する ルネサスの独自技術『ZVS』を読み解く

  • ライター:短絡亭過電流

 最近の流行 

こんにちは。これとかこれとか書いた奴です。

近年、フライバックでの100W以下の小型AC/DC電源において、小型化と低ノイズ化が加速しています。
『小型化』についてはスイッチ素子にGaN(窒化ガリウム)を用いて電力密度(W/cm3)を向上、『低ノイズ』については疑似共振方式を採用して対応するケースが多いと思います。
 
 
 小型化の 「壁」 

GaNを使うメリットは、ON/OFF切り替え時のVdsの遷移速度が速くVdsとIdの交差面積が小さいため、スイッチング損が小さくなり、高効率/低発熱な電源が構成できます。

この図の赤斜線部分の面積は、VdsとId、時間から算出できます。

損失にはスイッチング周波数が大きく関係します。スイッチング周波数が高いと、スイッチング損は大きくなるため、放熱設計と部品サイズ、製品サイズとコストに多大な影響を与えます。
とは言っても、スイッチング周波数を上げないと、トランスを小さくすることができません。
そのため、回路のサイズ(面積,体積)とスイッチング周波数は、トレードオフの関係と言えます。

このトレードオフを突破するためのキーパーツがGaNです。  が、、 未だ気軽に使える価格には至っていません。
 
 
 疑似共振の 「欠点」 

疑似共振は多くのフライバック電源で採用されています。この方式の利点はスイッチのONタイミングにあります。

フライバックトランスは、2次側に電力を吐き切った状態だと、FETのCossと漏れインダクタンスの間で「共振」が発生し、Vdsが振動します。
疑似共振は共振しているVdsの最下点でFETをONさせ、ソフトスイッチングにすることにより、スイッチング損を低減させる効果があります。更に、COSSの電荷が少ない状態でのON操作なので、COSSからGNDへ流れ込む電流も小さく、寄生インダクタンスによるEMIノイズも低減できます。

75W未満であればPFCは不要なため、コンバータへの入力電圧は使用する国により異なります。一般的なAC/DC電源回路は、ワールドワイド入力(AC85V~AC264V)に対応するよう作られています。疑似共振の欠点は、「Vdsの最下点」がコンバータの入力電圧に因って変化し、ハードスイッチングになってしまうことです。

したがって、「AC200V系入力だとVdsの最下点が持ち上がって効率とEMI特性が悪化する」と言うのは、よくあることです。
 
 
 全ての悩みを解決する 「ZVS」 

ルネサスの「ZVS」技術は下図の通りです。

(ZVS動作 ルネサスエレクトロニクス社[iW9802 データシート]より引用)

この図に示すように、ZVSのフライバックコンバータは、従来のフライバックコンバータ回路に、ZVS補助スイッチ、補助巻線、補助コンデンサからなる補助回路を追加したものです。
1次側のメインFETをオンにする前に、ZVS補助スイッチを短時間オンにします。
それにより共振を発生させているCp(Coss)に溜まっていた電荷がCzvsに移され、ZVS補助スイッチをOFFにすることでVdsが0V付近まで一気に低下します。
コントローラーがVdsの「Zero Volt」をキャッチし、「Switching」することでZVSが成立します。

以上のことから、ZVSを用いれば、
 ①スイッチがOFF⇒ONになる際のVdsが凡そ「0V」なので、ソフトスイッチング動作が可能
 ②損失(発熱)が軽減できるため放熱設計が容易、放熱部品の削減
 ③GaNを使わずともスイッチング周波数を上げることができ小体積の設計が可能
となります。

(ZVS概要 ルネサスエレクトロニクス社[ZVS SOLUTIONS FOR HIGH-POWER, ULTRA COMPACT AC/DC POWER SUPPLIES]より引用)
 
 
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