• 公開日:2024年06月27日
  • | 更新日:2024年07月31日

低消費化に寄与するBYPASS モード搭載DC/DCコンバータ

はじめに

近年、電子機器の小型化や低消費化が進んでいます。それに伴い機器の設計に使用される半導体部品にも低消費化が求められています。本記事では電子機器の設計の中でも多く使用されているDC/DCコンバータに搭載される機能のBYPASS モードについて実際の動作波形を見ながらご紹介します。

BYPASS モードとは

まず初めにBYPASS モードって何なのか。簡単に言うとBYPASS モードとはDC/DCコンバータに搭載される消費電力を低減する機能です。DC/DCコンバータは通常モードの時、内部のFETのON/OFFを繰り返し電圧を制御しています。このON/OFFを停止させスイッチングロスを減らすことでICの自己消費電流を低減することを可能にしています。

動作概要

文字だけでは分かりづらいかと思いますのでここからは簡単に図を用いてBYPASS モードの動作概要をについて通常モードと比較しながらご紹介します。

■通常モード
先ほどもありましたがDC/DCコンバータでは内部のFETをON/OFFすることで電圧を調整しています。以下の図1の場合だと電池から入力される2.0V~3.2Vの電圧を2.7V一定で出力しています。FETのスイッチングを行う際に生じるスイッチング損失が発生しますのでBYPASS モードと比較すると消費電力が大きくなります。

■BYPASS モード
BYPASS モードでは通常モードの時と異なり、内部のFETのスイッチングを停止しています。入力側から出力側の経路に存在するFETのみONにすることで入力-出力間をスルーしている状態となります。図2の場合だと電池から入力される2.0~3.2Vの電圧をそのまま出力しています。スイッチングを行わないため、スイッチング損失が発生しませんので通常モードと比較すると消費電力は小さくなります。

実際の動作波形

それでは実際の動作をルネサスエレクトロニクス社製のISL9122の評価ボードを用いて確認してみます。
測定ポイントおよび測定条件は以下の条件にて測定を実施します。
・入力電圧 : VIN : 3.6V
・出力電圧 : VOUT : 1.8V@200mA
・スイッチング端子 : SW

まずは通常モードの場合の波形を確認します。
通常モードの場合以下の波形のようにSW端子が上下していることが確認できますので、内部のFETがスイッチングすることで、入力電圧VINを出力電圧VOUTに降圧できていることが確認できます。
DC/DCコンバータの接続先であるMCU等がアクティブ状態で安定した電圧を必要とする場合には通常モードにて動作させることで要求を満たすことが可能です。

次にBYPASS モードの場合の波形を確認してみます。
BYPASS モードでは先ほどの通常モードの波形と異なり、SW端子が上下に動いておらず、一定であることが確認できます。これは先ほどの動作概要にてご紹介した通り、DC/DCコンバータ内部のFETがスイッチングしておらず、常にONもしくはOFFの状態なので一定となっています。VIN,VOUTの波形を見ても分かるようにスイッチングをせず入力-出力間をスルーしているため、入力電圧と出力電圧はほぼ同等の値となります。
※入力-出力間をスルーした場合でも内部のFETのオン抵抗の影響で電圧降下が起きますので完全には同等の値にはなりません。

データシートで確認

ここまでの説明で簡単な動作概要について紹介いたしました。ではこういった動作にすることでどの程度消費電流に変化がでているのかについてISL9122のデータシートで確認してみたいと思います。

上記画像の赤枠内が通常モード時の消費電流:1300nA(Typ),緑枠内がBypassモード時の消費電流 : 120nA(Typ)となり、通常モードに比べてBypassモードに変更することで消費電流を約90%削減できることが確認できました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。簡単にBYPASS モードについてご紹介させていただきました。
DC/DCコンバータにはその他にも低消費化できるような機能が存在します。低消費のDC/DCコンバータをご選定の際には効率や消費電流だけでなく、こういったDC/DCコンバータの機能にも注目することでより電力を削減することが可能になりますので本記事の内容を今後の選定に活用いただけますと幸いです。

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