• 公開日:2018年06月27日
  • | 更新日:2024年03月14日
LCD

初めてでも分かる!セグメントLCDの仕組みとおすすめ評価ボードの紹介

はじめに

エンジニアの方でない一般の方でも名前くらいは知っているLCD。LCDとはLiquid Crystal Displayの略で、液晶ディスプレイのことを指しています。調べてみると1960年代から表示器として作られ始めたとのこと。

LCDといえば、テレビやスマホに使われているものをイメージされることが多いですが、体温計や電卓で使われているものも、れっきとしたLCDです。今回はこのLCDについて取り上げてみたいと思います。

LCDの種類

LCDといっても様々な種類があります。今回は組み込み機器で利用される機会が多いTFT液晶とTN液晶をピックアップします。

TFT液晶

タブレット端末

TFT液晶はスマートフォンやテレビ、ノートPCなどで主に使用される液晶パネルであり、最も身近なものと言えるのではないでしょうか。表現力が豊かでカラー表示も可能、大画面化も容易です。ただ、制御は複雑で、比較的高機能なマイコンやプロセッサでないと制御することは難しいかもしれません。

 

TN液晶

体温計

TN液晶は最もシンプルなタイプのLCDです。身近なものとしては、ストップウォッチやキッチンタイマー、電卓、体温計等で使用されているタイプ、といえばほとんどの方はピンとくると思います。特に7セグメントLEDのような表示をするものは”セグメントLCD”と呼ばれることもあります。

個々のセグメントをON/OFFさせることしかできませんので、表現力は低いです。ただ、その分消費電力は低く、制御も簡単で、8bit、16bitなどの非力なマイコンでも制御することができます。

セグメントLCDの構造

セグメントLCDのパネルは、下図のように偏光板、液晶、偏光板、反射板という構成になっており、2つの偏光板は向きが90度ずれた形をとっています。

セグメントLCDの構造
図1. セグメントLCDの構造

セグメントがONされているとき、液晶は光をそのまま透過させます。透過した光は2つ目の偏光板と”向き”があっていないため、偏光板を透過することができません。そのため、そのセグメントは黒く見えます。

一方、セグメントがOFFされているとき、液晶は光を90度ツイストさせる性質をもっています。ツイストされた光は2枚目の偏光板も透過することができます。一番下の反射板を跳ね返った光は、液晶で再び90度ツイストするため、一番上の偏光板も透過することができます。このとき、そのセグメントはリフレクターの色(図の場合グレー)に見えるようになります。

マイコンは図のような液晶のセグメントに接続されたCOM、SEGという2つの信号で制御します。

セグメントLCDに入力する信号

図2はセグメントLCDの結線図の一例です。(以下はあくまで一例であり、COM信号とSEG信号の結線は使用するセグメントLCDによって異なりますのでご注意ください。)

セグメントLCDの結線例
図2. セグメントLCDの結線例

図3は図2のセグメントaをONにする場合の波形とセグメントbをOFFにする場合の波形です。

このように、LCDは矩形波の信号を入力して駆動しています。マトリックスLEDのように直流で制御しないの?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、LCDでは直流駆動を行うと、液晶内の微少な不純物が電荷として偏って蓄積することで、劣化してしまいます。

そのため、LCDの長寿命化のために、マイコンではこのような交流信号を入力することが一般的になっています。

セグメントLCDの信号
図3. セグメントLCDの信号

図3は図2のセグメントaをONにする場合の波形とセグメントbをOFFにする場合の波形です。図3のCOM0、SEG0、SEG1はその時の波形を、COM0-SEG0はCOM0とSEG0の電位差、COM0-SEG1ではCOM0とSEG1の電位差を示しています。

各セグメントがON/OFFは、交差した信号線の電位差が十分にあるか/ないかで決まります。図3の例で言うと、COM0、SEG0が交差したセグメントaは十分な電位差があるためにON、COM0、SEG1が交差したセグメントbは十分な電位差がないためOFFとなります。

このように、限られた数のCOMとSEGをマトリックスのように組み合わせ、たくさんのセグメント数の制御を可能にしています。

今回の例ではCOM信号を1本で示しましたが、もっと多くのケタ数を表示する場合などはCOM信号を複数使うケースもあります。その場合でも十分な電位差を作ることでON/OFFの制御を行うという基本的な考え方は同じです。

セグメントLCDを制御するには?

前述のような制御をマイコンから行えばいいのですが、すべてをソフトウェアで実現するのはけっこう大変です。やはり、LCDコントローラを搭載したマイコンを使用するのが最もいいでしょう。

マイコンにもよりますが、LCDコントローラに制御させることでマイコンをスリープ状態(消費電力を低くするモード)にしてもLCDを表示させ続けることができます。バッテリー駆動のアプリケーションではとても重要なポイントです。

Texas Instruments社(以降、TI社)のMSP430にはLCDコントローラ搭載のシリーズがあります。MSP430は超低消費電力マイコンですので、バッテリー駆動のアプリケーションにはもってこいのマイコンです。

セグメントLCD制御に最適なMSP430シリーズ

MSP430のF4シリーズとF6シリーズ、FR4シリーズ、FR6シリーズはすべてLCDコントローラを搭載しています。”F”と”FR”の違いは不揮発メモリがフラッシュか、FRAMかの違いとなっています。FRAMは消費電力をより低く抑えることができますので、低消費電力化を目指す方にはFRシリーズがおすすめです。

TI社ではセグメントLCDを搭載した安価な評価ボードも発売しています。今回はセグメントLCDの評価に適した評価ボードを2つ紹介します。

MSP-EXP430FR4133 LaunchPad開発キット

MSP-EXP430FR41331つ目はMSP-EXP430FR4133です。TI社のLCD搭載の評価ボードの中で最も安価なものです。

マイコンとしてMSP430FR4133を搭載しており、内蔵のFRAM容量は16KBです。MSP430Wareというサンプルコード集の中にはこの評価ボード用のものも含まれていますので、こちらと併せてセグメントLCDの制御を実験したり、学習したりすることができるでしょう。これからセグメントLCDの制御を試したい方におすすめです。

回路図情報などのMSP-EXP430FR4133に関する詳しい情報は下記から取得できます。

MSP-EXP430FR6989 LaunchPad開発キット

MSP-EXP430FR6989

2つ目はMSP-EXP430FR6989です。

MSP-EXP430FR4133よりも若干価格はアップしていますが、マイコンはMSP430FR6989を搭載することでMSP430FR4133よりも高機能になっています。内蔵のFRAM容量は128KBとなっていますので、MSP430FR4133のFRAM容量では心もとない方はこちらを選択するといいかもしれません。MSP430WareにはMSP-EXP430FR6989用のサンプルコードも含まれていますので、初めてセグメントLCDの制御を試す方にも優しい環境が整っています。

回路図情報などのMSP-EXP430FR6989に関する詳しい情報は下記から取得できます。

さいごに

今回はセグメントLCDの説明とセグメントLCDを制御できるMSP430シリーズを紹介しました。

ユーザーに多くの情報をわかりやすく伝える方法としてLCDを使うことができますが、その制御はLCDコントローラを内蔵したマイコンやプロセッサを使うことがベストです。MSP430であればセグメントLCDを搭載した評価ボードもありますので、これからLCDの制御を試してみたい方には導入しやすい環境が整っています。興味がある方はぜひTI社の評価ボードで試してみてはいかがでしょうか。

Texas Instruments社の製品をお探しの方は、メーカーページもぜひご覧ください。

Texas Instruments社
メーカーページはこちら