- 公開日:2024年09月29日
- | 更新日:2024年09月30日
2024-2025年版 USB PD 基礎講座
- ライター:Hirose
- 電源
はじめに
EU圏内のポータブル機器に充電ポートをUSB Type-Cにすることを義務化することで承認されており、2024年12月28日以降、スマートフォン、タブレット、カメラなどでは充電ポートがUSB Type-Cのもの以外は販売ができなくなります。
また、2026年春にはノートPCも規制の対象となり、今後対象範囲がが拡がっていくと思われます。
USをはじめとした他の国々でもEUに追従する動きを見せています。
この規格を制定した目的ですが、様々な電化製品に付属するACアダプターを共通化することで、不要なアダプターの増加を回避することを狙っております。
EUでは先ほど挙げた製品を販売する際、今までのように製品にACアダプターを同梱して販売することもできますが、かならずACアダプター付属なしでもユーザーが購入できるようにする必要があります。
こういった背景から、ACアダプターを様々な機器で流用して使用することが一般化し、充電池を内蔵しない機器でも給電用のポートとしてUSB Type-Cを採用するケースが増えていくと考えられます。
USB Power Delivery
USB Type-Cの充電/給電用ポートと切っても切り離せない規格が、USB Power Delivery、略してUSB PDです。(本記事では、以降USB PDの表記を使用いたします)
USB規格のいろいろ
USBの規格と一言で言っても、「伝送速度などに関わるUSB規格」、「コネクタの形状」、そして 「電力の供給」と3つの要素があります。
伝送速度などに関わるUSB規格についてはUSB PDの規格とは別のものになりますので、ここでは割愛させていただき、コネクタ形状と電力の供給に関わる規格について紹介いたします。
コネクタ形状
過去主流であったType A, Type B の形状はホストとデバイスで別々の形状をしていました。
2014年に発表されたType-Cの規格では、ホストもデバイスも共通の形状となっております。
また、コネクタの上下を気にしないで使用することができるようになり、形状も以前のType-A、Type-Bよりも小型になりました。
大変便利になりましたが、Type-Cは見た目は同じに見えるても、対応可能な規格に差異が出ることがありますの注意が必要です。コネクタ、ケーブル共に対応規格のロゴを明記することは必須要件ではなく、実際に挿してみないと使えるかどうか外見では分からないこともあります。
電力の供給
[USB Type-C]
以前のUSB規格では、最大5V 1.5A, 7.5Wまでの電力を供給することが可能でした。
Type-Cポートを採用すると、Type-C Current規格が適合され、5V 1.5Aの出力モードと5V 3.0A 15Wの出力モードが選択できるようになりました。
[USB PD]
USB PD規格に準拠すればさらに大電力の100Wや240Wの電力伝送が可能になります。
USB PD規格に準拠するには、Type-Cポートを使用することが前提となります。
どのUSB規格(USB 2.0, USB 3.1 など)に準拠しているかは問いません。
Type-Cの特徴
Type-CではCCピン(Configuration pin:CC1/CC2)が新たに追加され、下記のことが出来るようになりました。
- Type-Cケーブルは上下反転して接続が可能
- USBホスト、デバイス共にType-Cポートを使用することが可能
- USBデータ、電力、映像信号を1つのケーブルで実現することが可能
USB Type-C機器のレセプタクル、USB Type-Cケーブルのプラグのピン配置はこのように点対称に配置されています。
USB Type-Cのケーブルの中では、片方がCCへ接続され、もう一方がケーブル内のRaを介してに接続されています。レセプタクルとプラグを接続した時、CC1/CC2のどちらかがCCと接続したかによってCC1/CC2のどちらが使用されるのかを判別します。
USBデータ線(USB2.0はD+/D-、 USB3.1はTx/Rx)は2ペアずつありますが、レセプタクルのCC1/CC2のどちらが使用されるかによって、どちらのデータ線が使用されるかが決まります。CC1を使用する場合は、こちらのデータ線を使用します。
コンフィグレーションプロセス
USB Type-Cの機器同士を接続すると、お互いがCCピンを使用してコンフィグレーションプロセスを実行し、双方の関係を決定します。
まずはCC1/CC2上のRp/Rdを使用してUSB Type-Cで行われるプロセス(1-4)を実行します。(USB PD 対応/非対応に関わらず実行されます)さらに、USB PDをサポートしている場合はプロセス(5-6)が実行されます。
- 物理的なケーブル接続(Attach)の検知
これは、SourceがCC1/CC2をモニタしてSinkのRd抵抗介しての GND接続を検知したらAttachと認識します。 - Plug面の検知
ケーブルのCCがCC1 or CC2のどちらとAttachしたかを検知します。 - Source to Sink
Host とDeviceの関係を確立し、まずはSourceはSinkに対してVBUS(5V)を供給を開始します。 - VBUSから供給される電流値のCapabilityの検知
Rpの値によってSourceが供給できる電流値が決まります。5V/3A 5V/1.5A 5V/500mAの3パターンあります。 - CC上のパケット送受信を行い、相互のコミュニケーションに応じて供給電圧、電流、電力方向を決定します。
- Alternate Mode(USB3.x以外のプロトコルを使用してデータ通信をおこなうモード)のコミュニケーションが発生します。
電力の供給方向
Type-Cケーブルは両端をType-Cにすることが可能ですが、どちらかの機器がホストでもう一方はデバイス機器という認識をし、ホスト側からデバイス側に給電を行います。
USB PD規格では、Dual Role Power 略してDRPと言われる機能を持つことが可能です。給電側をソース、受電側をシンクといい、ソースとシンクの役割を入れ替えることが可能です。つまり、データの通信方向と電力の供給方向を逆向きに設定することが可能となっています。
EPR
USB PD対応であれば、PD2.0またはPD3.0の最大100Wの電力供給が可能となります。
さらに、2021年に制定されたPD3.1では、240Wというように大きな電力に対応することもできるようになりました。
この240Wまで対応した規格を、USB PD EPR (Extended Power Range)、従来の100Wまでに対応する規格をUSB PDSPR (Standard Power Range)と呼びます。
USB PD パワールール
USB PDを搭載した機器のあいだで、提供すべき供給可能、必要な電圧、電流の標準的な組み合わせのことです。
SPRで60Wを超えて電力の受給をするには5A対応ケーブルが必要になります。EPR (Extended Power Range)での電力需給にはEPR対応ケーブルが必要になります。
出力電流 (A) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
パワー・レンジ | SPR (Standard Power Range) | EPR (Extended Power Range) | |||||
PD Power (W) | 5V | 9V | |||||
0.5 ≦ x ≦ 15 | x / 5 | ||||||
15 < x ≦ 27 | 3 | x / 9 | |||||
27 < x ≦ 45 | 3 | 3 | x / 15 | ||||
45 < x ≦ 60 | 3 | 3 | 3 | x / 20 | |||
60 < x ≦ 100 | 3 | 3 | 3 | x / 20 | |||
100 < x ≦ 140 | 3 | 3 | 3 | 3, 5 | x / 28 | ||
140 < x ≦ 180 | 3 | 3 | 3 | 3, 5 | 5 | x / 36 | |
180 < x ≦ 240 | 3 | 3 | 3 | 3, 5 | 5 | 5 | x / 48 |
認証試験について
開発した製品がUSB-IFによる仕様に適合しているかを評価するための任意の試験となります。
認証に合格すると、USB-IFのIntegrators Listに掲載され、USBロゴの利用が可能となります(別途ライセンス料が必要)。
安全性について
USB PD規格では、万が一に備えて、過電圧保護、過電流保護、過熱保護機能を取り込むことが規格で定められています。
しかしながら、USBUSB PDの規格に沿っていない、Type-C形状のACアダプタも市場では出回っており、そういったACアダプタを使用した場合の動作については想定されておらず、組み合わせて使用した場合に不具合や最悪の場合は故障が発生する可能性があります。
設計の方針により、想定外のACアダプタは繋がれないことを前提に設計されるか、想定外のACアダプタが繋がれる可能性も考慮してさらなる高付加の過電圧や過電流に対する保護回路を追加した設計にするかが決まってくるかと思います。
おススメ製品
USB PD機能を製品に組み込むには、USB-IFが制定した規格に準拠する必要がありますが、一から実装するには規定が多くハードルがとても高いものです。
また、先にあげたEUでのポータブル機器にUSB Type-C搭載を義務づける規制が施行されることにより、対応が急務となるケースがあります。
ルネサスエレクトロニクス社から、USB PDの制御をおこなうUSB PD Controllerとバッテリーチャージャーまたはバックブーストレギュレーターを組み合わせた、トータルソリューションが提供されています。受電、給電、充電、またEPRに対応したソリューションなど揃っています。
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