- 公開日:2024年10月11日
- | 更新日:2024年10月31日
PMICって何ですか?
- ライター:田中尚行
- 電源
電気回路の設計で、電源部分を構成する際にDC/DCコンバータやLDOはよく使用します。その中で、稀にPMICという言葉が出てきて「??」となった事はありませんか。
「PMIC? 何それ、 やだ怖い…」という方、安心してください。PMICは怖くないです。
PMICの概要
PMICとは、Power Management ICの略語で、その名の通り「電源を管理するIC」です。PMICの機能としては主に次のものがあります。
ちなみに、読み方は「ピーミック」「ピーエムアイシー」などがあります。
1.複数の電源供給
内部にDC/DCコンバータやLDOなどの電源供給機能を登載しており、対象システムで複数の電源が必要なときに一つのデバイスで供給することができます。
2.各電源のパワーオンシーケンス/パワーオフシーケンス制御
供給する電源のパワーオン/パワーオフのタイミングを出力毎に調整することができます。起動/停止の順序が定められているシステムへ電源供給する際に有効となります。また、パワーオン時の突入電流など、急激な電源供給を緩和するためのソフトスタート制御ができるものもあります。
また、一部のPMICには以下の機能を持つものもありますが、本編での詳細説明は割愛します。
供給電圧の制御:DVS(Dynamic Voltage Scaling)
電源供給するシステムの動作状況に合わせて動的に電圧を変化させる機能です。SoCなどのロジック回路は、電源電圧を上げることでより高速に動作する一方、電源電圧を下げることで消費電力を低減することができるため、高負荷時の高性能と低負荷時の省電力を両立させることができます。
スイッチング周波数の制御:DVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)
対象システムの処理能力要求に応じて動作周波数とコア電圧を動的に変更する機能です。例えばSoCの処理負荷が下がれば、電源側も高速応答する必要がなくなるため、スイッチング周波数を下げることができます。スイッチング周波数を下げるとスイッチング損失が低減でき、消費電力を低減することができます。
このように、特定のシステムに必要なDC/DCコンバータやLDOなどの複数の電源を搭載するとともに、それらの各電源のパワーオンシーケンスやパワーオフシーケンス、電圧の動的変更などを制御するいわゆる電源管理(パワーマネージメント)機能をワンチップに搭載したものがPMICです。
なぜPMICが必要なのか
PMICを使用する理由の大半は、SoC(System on Chip)のような高機能システムへの電源供給を一括管理するためです。そして、ほとんどの場合で各出力に対してシーケンス制御を行います。
近年、回路システムの集約化・高機能化に伴い、SoCを使用するシステムが増えてきています。SoCは特定用途に向けた必要な機能がワンチップに集約された製品です。SoCを構成する各機能部は、その性能を最大限にするため各々が必要とする最適な電源電圧が異なっています。更にこれらの起動には順序が決められており、要求された順番で電源供給をする必要があります。
ここで、SoCに対しDC/DCコンバータやLDOなどのような単電源ICを組み合わせて電源構成することができますが、それぞれの電源ICを制御するためイネーブル信号を個別に調整しなければならず、それには別マイコン等の制御ICが必要になります。また、電圧の数だけ単電源ICが必要になるため、実装の観点で電源ICの占有する面積が大きくなってしまいます。
一方で、PMICであれば、それ単体で複数の電源電圧を供給したり、各出力のシーケンス制御ができます。また、部品点数としても1つで済むため専有面積を最小限に抑えることができるのです。【図1.PMICへの置き換え】参照
【図1.PMICへの置き換え】
PMICのカスタム化
SoCなど特定用途に向けたシステムには、それに最適なPMICで電源管理をする必要があります。言い換えれば、対象システムによって、最適なPMICの構成は変わります。世の中には膨大な数のシステムがありますが、それに合わせてPMICの品番を作るのは現実的ではありません。現状としては、汎用PMICに搭載されたOTPを使い、対象システム向けに設定する方法が一般的となっています。
OTPとは、One Time Programmable Romのことで、格納するデータを一度だけ電気的に書き込むことが出来るものを指します。ほとんどの場合、このOTPはPMICを購入する際、購入元であるメーカーが工場出荷する際にデータを書き込むため、ユーザーが直接何かすることはありません。なお、書き込み後は「読み出し」しかできず、2度書き込む(プログラムし直す)ことはできません。
このOTPには、対象のSoCに合わせて、DC/DCコンバータやLDOの起動/終了順序、起動時の出力電圧についての設定値が書き込まれ、PMIC起動時にOTPからデータがロードされて、パワーオン/パワーオフシーケンス設定をするレジスタや、出力電圧を設定するレジスタに反映※されます。その後、ENピンがLow→Highになったタイミングでパワーアップシーケンスが機能し、ENピンがHigh→Lowとなったタイミングでパワーオフシーケンスが機能します。【図2.OTP設定】参照
また他にも、ソフトスタート機能を搭載しており、ここでは各電源の立ち上がり時間(出力電圧が設定値に達するまでの時間)を設定することができます。立ち上がり時間を緩やかにすることで、電源投入時の突入電流を抑制することができます。
※メーカーや型番によっては、電圧値を抵抗器による外付け部品で設定できるものもあります。
【図2.OTP設定】
補足ですが、OTPで書き込んだデータは上書きできませんが、PMIC起動後にI2Cによって対象のレジスタを操作できる製品もあり、マイコン等によりOTPで書き込んだ内容とは異なる設定にすることができます。ただし、電源を入れ直すとOTPで設定した内容に戻ります。
このように、PMICの設定(電源電圧、シーケンス、立ち上がり時間)をOTPによりカスタマイズすることで、様々なシステムに適したPMICを準備することができます。
最後に、電気回路におけるシステム集約化・高機能化で、電源回路についてもその集積化が要求されるようになってきました。そのような背景からもPMICはこれからの電源回路では必要不可欠な存在となっています。
出力できる電源電圧範囲や出力数、シーケンス設定できる時間間隔や順番など、汎用PMICの種類によりそれぞれ特徴が異なるため、ご自身のシステムに必要な仕様と照らし合わせてPMICを選定していただく必要があります。本記事を、最適な電源回路を構築して頂くための一助としてもらえれば幸いです。
おすすめ製品はこちら
どうでしたか、PMICは怖くないですよね?このようなPMICですが、ルネサスでも製品を取り揃えています。
以下、オススメのPMICです
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RAA271082
・VIN:4.0V~42V 《オススメ① 入力電圧範囲が広い!》
・VOUT×4ch(3xBuck:~1.0A 、1xLDO:~300mA)
・機能安全 ASIL-B に対応 《オススメ② 機能安全対応!!》
・AEC-Q100のグレード1に適合し、周囲温度範囲 -40℃~125℃ で動作します 《オススメ③ 高温環境でも動作可!!!》
・保護機能:入力電圧 UVLO、出力 OV/UV、内部および出力LDOでの過電流保護、過熱保護
https://www.renesas.com/ja/products/automotive-products/automotive-power-management/mcu-pmic
※RAA271082では、ソフトスタートはOTPで設定可能ですが、I2Cでの変更はできません
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