- 公開日:2024年12月01日
- | 更新日:2024年12月11日
初めてでもわかる!オーディオ・コーデック
- ライター:Hirose
- オーディオ
初めてでもわかる!オーディオ・コーデック
オーディオ・コーデックとは?
オーディオコーデックを直訳すると、「音声信号を符号化したり、符号化された音声信号を元に戻すもの」となります。
端的に言うと、オーディオ用のADコンバーターとDAコンバーターが1つのパッケージに入ったICを指します
MP3などの音声信号のデータ形式を扱うための方式も、オーディオ・コーデックと呼びますので紛らわしいですが(Bluetoothのオーディオ・コーデックも圧縮技術に関連します)、この記事でお話しするのは、「半導体デバイスのオーディオ・コーデック」です
何に使うの?
民生機器、業務用機器問わず、音声を入出力する電子機器は多様にあります。
オーディオ・コーデックを搭載した製品は、おおよそ以下の処理を行います。
自然音 -> マイクなどで収音し電気信号に変換ー>オペアンプなどで増幅→AD変換→デジタル領域でデータの通信や保存、エフェクト処理(低音増強、エコー処理など)→DA変換→アンプなど→スピーカーから音声出力
オーディオ・コーデックに関する代表的な要素
オーディオ・コーデックを選定したり、周辺回路を設計する上での大事な要素をご紹介します
サンプリング周波数、Fs
一秒間に何回サンプリングするかを表します。標準的なFsは48kHzや44.1kHz(CDで使用)です。96kHz以上を使用するケースも昨今増えてきました。
理論的には、Fsの1/2の帯域の信号を、サンプリングし、再現することが可能です。Fsの1/2の周波数をナイキスト周波数と呼びます。
他の機器と通信しないアプリケーションであれば、サンプリング周波数は任意の値に設定することも可能です。
ビット長
サンプリングした信号の分解能を示します。
ビット長の数が大きいほど、解像度が高くなり、再現度が高くなります。24bitであれば、2^24段階の解像度となります。
S/N比
シグナル/ノイズの比率を表した数値となります。20 x log S/N で算出でき、数値が大きいほど性能が高くなります。
ADコンバーター部、DAコンバーター部それぞれにS/N比があり、SとNはそれぞれ以下となります。
ADコンバーター
S(シグナル):AudioCodecに入力可能なアナログ信号のレベル
N(ノイズ):AudioCodecへの入力を終端させた時、AusioCodecに入ってくるノイズのレベル
DAコンバーター
S(シグナル):AudioCodecから出力できるアナログ信号のレベル
N(ノイズ):AudioCodecの出力信号を0とした時、AudioCodecの出力端子のノイズレベル(残留ノイズ)
アナログ入出力のいろいろ
アナログ電源とデジタル電源とは分離して設計することがほとんどです。アナログ電源をきれいに設計するこで、AudioCodecの実力を引き出すことができます。
また、設計する上で片電源か両電源か、シングルエンデッドかディファレンシャルか、など様々な要素があります。システムの性能は、オーディオコーデック単体の性能で決まるのではなく、入出力のアナログ回路と密接に関わってきます。
両電源か片電源か
音声信号は交流なので、基準となる電位を中心に動作します。GND基準の両電源、任意の電圧を基準とする方電源、それぞれにメリット、デメリットがあります。
両電源:GNDを中心に動作。GNDが基準となるので、ノイズの影響を受けにくく性能を出しやすいが、負電源を用意する必要がある。
片電源:アナログ電源の電位とGNDの中間点にリファレンス電源を用意。音声信号はリファレンス電源の電位を中心に動作させる。負電源を用意する必要がなく、コストが安価
オーディオコーデックと前後のアナログ回路に電位差がある場合、カップリングコンデンサを通して接続します。
シングルエンデッドかディファレンシャル(差動)
こちらもメリット、デメリットがあります
シングルエンデッド:回路がシンプルで安価
ディファレンシャル:伝送経路でうけたノイズを打ち消しあう、アナログでの実質レベルを2倍に出来るので、適切に設計すれば性能を出すことが出来る。
デジタル・インターフェース
オーディオコーデックとDSPやマイコンなどのデバイスの間で音声のデジタルデータを送受信するための信号の形式について紹介します。
信号線の種類
LRCLK (FsCLK, WCLKなど):サンプリング周波数と同期したクロック
BCLK:シリアルデータと同期したクロック。LRCLKの64倍や128倍などに設定します
シリアルデータ登り:(オーディオコーデックから見て)登り方向のデータ線
シリアルデータ下り:(オーディオコーデックから見て)下り方向のデータ線
LRCLKとBCLKは2つの接続したデバイスのどちらかがマスターとなり、他方がスレーブとなります。(おそらくほぼ全ての)オーディオコーデックにはマスターとスレーブを切り替える機能が付いています。
データフォーマット
I2S
標準的なオーディオ用のデジタルインターフェースフォーマット
LRCLKの立上り/立下りからBCLKx1分間をあけて、シリアルデータの送受信を行います。
Left Justified (左詰め)
LRCLKにのLRCLKの立上り/立下りからシリアルデータの送受信を行います。
Right Justified (右詰め)
LRCLKにのLRCLKの立上り/立下りで終わるように、シリアルデータの送受信を行います。
TDM(Time Division Multiplexing)
通常はLRCLKのなかでLeftとRightの2チャンネル分のデータの送受信をおこないますが、時分割し複数のデータの送受信を行えるようにします。
I2SのTDM、Left JustifiedのTDMというように、各フォーマットをTDMで多チャンネル化することができます。
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