• 公開日:2025年09月03日
  • | 更新日:2025年09月08日

[ルネサス]新製品RL78/L23のLCD表示の新モードを検証してみた!

はじめに

スマート家電製品や、IoT、ヘルスケア機器ではLCD表示や静電容量タッチセンシング機能が欠かせません。

これらの製品を強力にサポートする、ルネサスLCDマイコンにおいて、RL78ファミリ待望のRL78/L2Xシリーズのラインナップが追加されました。

第一弾はRL78/L23 です。

次世代スマート家電向け超低消費電力マイコン「RL78/L23」を発売 | Renesas ルネサス

従来製品のRL78/L1xより色々と改良が加えられているようですので、簡単に紹介し、ここでは、LCDの新しい表示機能について検証していきます。

 

RL78/L23で追加、改良された機能

簡単に、RL78/L23で追加された機能、改良された機能を紹介します。

1、ロジック&イベント・リンク・コンローラ (ELCL)

周辺機能の出力や割り込み信号に論理回路を組み合わせて周辺回路のイベントにすることが可能です。

以前に記事を書いていますので、こちらも参照ください。

RL78でI2S通信を実現しよう! | 組込み技術ラボ

2、SNOOZE モード・シーケンサ(SMS)

シーケンサ処理コマンドによる演算処理や値比較処理によって、CPUを使わずに間欠動作を実現し低消費化することが可能です。

CPUで行っていたLCD表示内容の更新処理をSNOOZEモード・シーケンサで実行することもできるようです。

3、静電容量センサユニット

RL78/G23などに搭載されていたタッチセンサの機能がLCDマイコンにも搭載されました。

LCD表示が付いた家電製品などのタッチキー化にも貢献すると思います。

4、デュアルバンク フラッシュ

RL78ファミリでの搭載は初となります。

512KBのコードフラッシュ領域を2つに分けて“Bank0(256KB)とBank1(256KB)”使用することによりプログラム更新などを簡単に実施することができます。

さらに、RL78/L23ではRESETを掛けずにバンクを切り替えることも可能です。

 

LCDコントローラの改良点

LCDコントローラの機能と改良点について確認していきます。

 

RL78ファミリのLCDは3つの駆動方式を搭載しており、LCD駆動電流は、容量分割方式が最も駆動電流が小さくなります。

出典:ルネサスマイコン紹介資料より

 

RL78/L23では 内部昇圧方式に選択できる基準電圧が追加されています。

基準電圧にVL2を選択することで、従来の内部昇圧方式と比較して消費電流が約30%~50%減少します。

出典:ルネサスマイコン紹介資料より

 

RL78/L23では容量分割方式の基準電圧に3vが追加されました。

今まで、マイコンが5v動作時に3vのLCDパネルを使うには、内部昇圧方式しか使えませんでしたが、容量分割方式で3vパネルが使えるようになりました。

出典:ルネサスマイコン紹介資料より

 

LCDを表示させてみる(アプリケーションノートの実行)

RL78/L23のアプリケーションノート“RL78/L23 LCD表示(時計編)”の手順通りに動作させていきます。

アプリケーションノートはこちら-> RL78/L23 LCD表示(時計編) Rev.1.00

1.サンプルコードをダウンロードします。

こちらー>RL78/L23 LCD表示(時計編) Rev.1.00 | Renesas ルネサス

解凍後のフォルダ構成は以下のようになっています。

今回の開発環境はE2studioを使用しましたので、workspace下のE2studioのフォルダ内となります。

2.プロジェクトをE2studioに読み込み ビルド、デバックを開始します。

実行すると、時計表示が開始しました。

 

市販パネルのLCDを表示させてみる

  • 実際に家電機器で使用されているパネルを使って、表示させてみます。

今回、手元に要らない炊飯器がありましたのでそのパネルを取り出し動作させてみました。

3v電源で起動していましたので、3vパネルと思われます。

2.パネルと接続のためのケーブルを用意します

ミニQIケーブル8S-Z / 311-331を購入しました。 ミニQIケーブル8S-Z / 311-331

3.SEG/COMを接続します。

全点灯状態のSEG出力で電源投入すると、LCD表示されました。

 

LCD駆動方式の違いの確認

マイコンを5vで動かした場合に3vパネルを使用できる条件は今回追加されました、VL4リファレンス方式含めて3種類となりましたので、表示差異を確認したいと思います。

出典:RL78/L23 ユーザーズマニュアル ハードウェア編Rev.1.00(表22-4抜粋)

条件1.1/3バイアス内部昇圧方式(基準電圧:VL1)にて表示させます。

出典:RL78/L23 ユーザーズマニュアル ハードウェア編Rev.1.00(表22-15)

設定値  VDD:5V  VL1:1.01V ―昇圧―>  VL4:3.03V (デフォルト設定値)

LCDクロック:32768/27 = 256 Hz(LCDC0 = 06H設定)   LCDフレーム周波数:64 Hz

A波形                          B波形

 

条件2.1/3バイアス内部昇圧方式(基準電圧:VL2)にて表示させます。

出典:RL78/L23 ユーザーズマニュアル ハードウェア編Rev.1.00(表22-15)

設定値  VDD:5V  VL2:2.02V  ―昇圧―> VL4:3.03V (デフォルト設定値)

LCDクロック:32768/27 = 256 Hz(LCDC0 = 06H設定)   LCDフレーム周波数:64 Hz

A波形                          B波形

 

条件3.1/3バイアス容量分割方式 VL4リファレンス にて表示させます。

出典:RL78/L23 ユーザーズマニュアル ハードウェア編Rev.1.00(表22-16)

設定値  VDD:5V  VL4:3.0V

LCDクロック:32768/27 = 256 Hz(LCDC0 = 06H設定)   LCDフレーム周波数:64 Hz

A波形                         B波形

 

結果:VL1内部昇圧、VL2内部昇圧、VL4容量分割ともに ちらつきや表示が暗くなることはなく、

表示の見かけには全く差が有りませんでした。

 

フレーム周波数を変更して確認

動作モードの違いによるパネル表示にはほとんど差が見られませんでしたので、

フレーム周波数を変化しパネル表示を見てみます。

 

動作モードは1/3バイアス容量分割方式 VL4リファレンスで固定です。

条件1. LCDクロック:32768/2 = 512 Hz(LCDC0 = 05H設定)  LCDフレーム周波数:128 Hz

―>すこし暗い表示となりました

条件2. LCDクロック:32768/27 = 256 Hz(LCDC0 = 06H設定)  LCDフレーム周波数:64 Hz

―>表示に遜色なしです

条件3. LCDクロック:32768/28 = 128 Hz(LCDC0 = 07H設定)  LCDフレーム周波数:32 Hz

―>表示に遜色なしです

条件4. LCDクロック:32768/2 = 64 Hz(LCDC0 = 08H設定)  LCDフレーム周波数:16 Hz

―>かなりのちらつきが見られました

 

結果: VL4容量分割の推奨フレーム周波数は、24Hz-128Hzとなっていますが、使ったパネルでは128Hzで暗い表示となることが分かりました。

このパネルの推奨フレーム周波数が不明ですが、パネルじたいが128Hzは保証外かもしれません。

また、推奨値以下の16Hzでは、正しく見えない表示となることが分かりました。

 

 

検証に使用した製品はこちら

RL78/L23シリーズ

RL78/L23 – 静電容量式タッチ機能付き32MHz超低消費電力LCDマイクロコントローラ | Renesas ルネサス

RL78/L23 Fast Prototyping Board

FPB-RL78L23 – RL78/L23 Fast Prototyping Board | Renesas ルネサス

ご購入はこちら↓

https://www.macnica-mouser.jp/ProductDetail/Renesas-Electronics/RTK7RLL230S00001BJ?qs=CoAU%2FpHVZXyvq59VtxPXqA%3D%3D&utm_source=octopart&utm_medium=aggregator&utm_campaign=968-K7RLL230S00001BJ&utm_content=Renesas%20Electronics

 

まとめ

この記事では、RL78/L23のアプリケーションノートを使って簡単にLCD表示ができることを確認しました。

また、実際の家電に使われている比較的大きなパネルを使って、実際に表示させることにより

新しい表示モードに差が出ないことを確認しました。

RL78/L23の発売と同時にルネサスHPにはこれ以外の様々なアプリケーションノートが登録されています。

機会があればまた、実験していきたいと思いますので、ご期待ください。