- 公開日:2025年09月16日
- | 更新日:2025年09月30日
初心者のためのCAN FD 基礎
はじめに
自動車業界をはじめ、様々な業界でCAN(Controller Area Network) 通信が利用されております。しかし、昨今は“データ通信量の増大”、”通信速度の高速化”などが求められる傾向にあります。そのような中で、開発されたプロトコルが”CAN FD”です。
本記事では、CAN FD初学者の方を対象にCAN FDの基礎知識をご紹介いたします。
本記事は、CAN通信の基礎知識を有している方が対象となりますので、CAN通信に関しては以前投稿した以下の参考記事をご確認ください。
ビギナーのためのCAN通信基礎
参考:https://emb.macnica.co.jp/articles/23457/
CAN FDとは
CAN FDとは、CAN Flexible Data rateの略称であり、2010年頃にドイツのボッシュ社によってCAN通信の拡張として開発された通信プロトコルです。通信フレーム内で通信ビットレートをフレキシブルに変更できることが特徴です。
主に車載ネットワークで使用されておりますが、車載用途だけでなく鉄道、航空、産業機器等でも利用されております。
CAN FDには以下のようなメリット/デメリットがあります。
-メリット
・シンプルで設計を容易に行ことができる
・容易にノードを追加できる
・耐ノイズ性に優れている
・CAN通信よりも速い速度で通信ができる
-デメリット
・バスが断線に弱い
・ネットワーク上にあるノード※1はすべて、CAN FDに対応している必要がある※2
・通信速度の高速化によりリンギングが発生しやすくなる
※1:ノードとは、CANネットワークに接続される通信機器のことです。ノードの構成は、“CAN FDノードの構成”の欄をご確認ください
※2: ネットワーク内のすべてのノードがCAN FDに対応している場合、CAN通信 、CAN FDフレームの混在による通信は可能です
CAN FDノードの構成
CAN FD では、通信線(CAN バス)と通信機器(ノード)によって構成されます。CAN FD ネットワークは、CAN バス上に複数のノードを接続することによって構成されます。CAN FDのノードの構成は以下の赤枠部分となっております。
赤枠部分のとおり、CAN FDノードの構成を形成するにはCAN FDコントローラ内蔵のマイコンおよびCAN FDトランシーバーが必要となります。そして、CAN FDトランシーバーをCAN バスに接続することで、各ノード間と通信を行います。また、CAN FDにおけるCAN バスはCAN通信と同様に二線(CAN_H,CAN_L)を用いて差動信号方式を採用しています。
送信時
送信時においては、マイコン内蔵のCAN FDコントローラを用いてCAN FDトランシーバーへデジタル信号を送信し、CAN FDトランシーバーにて二線(CAN_H,CAN_L)の信号に変換しCANバスへ送信します。
受信時
受信時においては、送信時の逆でCAN FDトランシーバーにて二線(CAN_H,CAN_L)の信号からデジタル信号へ変換した後、CAN FDトランシーバーからマイコンへデジタル信号を送信します。マイコン内蔵のCAN FDコントローラにてデジタル信号を受信し必要に応じて受信データを使用します。
CAN 通信とCAN FD は以下のような点で異なります。
・データフレームに関して
項目 | CAN通信 | CAN FD |
データ長 | 0 ~ 8 バイトまで送信可能 | 0 ~ 64 バイトまで送信可能 |
リモートフレーム有無 | あり | なし |
データフェーズの転送速度 | アービトレーションフェーズの通信速度と同一 | 高速化可能
|
・通信速度に関して
項目 | CAN通信 | CAN FD |
通信速度 | 最大1Mbps | 最大5Mbps |
参考までにCAN FDのデータフレームの構成は以下のようなイメージです。
おすすめ製品
RenesasではCANFDの機能を持ったMCUのラインナップがいくつかございます。その中でも、筆者としてはRX26Tがおすすめです。
RX26Tは、CAN FD通信とモータ制御を行うことができる、ルネサス製のMCUです。
主な特徴としては、以下のとおりです。
・CAN FD 対応
・最大3ユニットのPWMタイマ搭載(ブラシレスDCモータやステッピングモータの制御が可能)
・FPU(浮動小数点演算ユニット)搭載(制御アルゴリズムの高速演算が可能。センサフィードバックやPID制御にも対応可能)
そのため、CAN FD通信とモータ制御を必要とするお客様におすすめの製品です。
製品詳細に関しましては、下記ページをご確認ください。
RX26T – 2モータ制御とPFC制御の実現に最適な32ビットマイクロコントローラ | Renesas ルネサス
まとめ
本記事では、CAN通信の基礎知識を有しており、CAN FD初学者の方を対象にCAN FDの基礎知識をご紹介いたしました。CAN FDは、CAN通信よりも通信速度が速く、多くのデータを送受信することが可能なプロトコルです。
また、Renesas社のRX26T をご使用いただくことでCAN FD通信とモータ制御を行うことが可能となります。そのため、CAN FD通信をご検討のお客様はぜひ一度、RX26Tでご評価いただくことをおすすめいたします。
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