- 公開日:2025年09月18日
- | 更新日:2025年09月30日
映像表示方式(インターレースとプログレッシブ)の違い
- ライター:Takumi ueda
- その他
はじめに
みなさんが普段目にする映像は、どのように画面に描かれているかご存じでしょうか。テレビやスマートフォン、そして車のナビゲーションシステムまで、映像の裏側には「走査方式」と呼ばれる仕組みがあります。代表的なものがインターレース方式 と プログレッシブ方式 です。
かつてのアナログ放送では帯域の制約からインターレースが広く使われましたが、現在では液晶や有機ELなどデジタルディスプレイの普及により、プログレッシブが主流となっています。
この記事では、両方式の違いやメリット・デメリットを解説するとともに、身近な車載ディスプレイの進化を例に「映像表示方式の移り変わり」を整理していきます。
インターレース方式の技術的特性と課題
発展の背景
インターレース方式は、1970年代にテレビ放送で普及してきました。当時は、映像伝送に電波帯域や送信設備に大きな制約があり、1フレーム全体を一度に送信することが困難でした。そこで、1フレームを奇数ラインと偶数ラインに分割し、交互に送信することで帯域を半分に抑えつつ、滑らかな動きを実現する技術が採用されました。
技術的特性と利点
- 帯域幅の節約が可能
- 毎秒50〜60フィールドの更新により動きが滑らかに見える
- CRT(ブラウン管)との高い互換性
技術的課題
- 静止画に縞模様が発生しやすい
- 動きの速い映像ではギザギザやちらつきが目立つ
- フィールド間の時間差により、デジタル編集や高解像度表示には不向き
プログレッシブ方式の進化と技術的優位性
基本原理
プログレッシブ方式は、1フレームの全ラインを順に描画する方式です。インターレースのようにフィールドを分割せず、完全な画像を1回で更新するため、映像の鮮明さと安定性が大きく向上します。
採用の背景
プログレッシブ方式は、LCDディスプレイにおいて初期から標準的に採用されてきました。文字や図形を扱う用途では、インターレース方式では表示が不鮮明となるため、プログレッシブ方式が求められました。
デジタル化による普及
2000年代以降、Blu-rayや動画配信、地上デジタル放送の普及により、プログレッシブ方式の採用が加速。映像圧縮技術(MPEG-2、H.264、H.265など)の進化により、帯域消費の課題も大幅に緩和されました。
技術的利点
- 静止画や文字情報の鮮明な表示
- 編集・合成などのデジタル処理に最適
- 液晶・有機ELディスプレイとの高い互換性
- 4K/8Kや高フレームレート映像への拡張性
車載ディスプレイの進化と映像表示方式の変化
初期の車載ディスプレイとインターレース方式
1990年代の車載ディスプレイは、小型CRTや低解像度液晶を用いており、放送機器やVHSとの互換性を重視してインターレース方式が採用されていました。地図表示の精細さよりも、動作の安定性が優先されていた時代です。
液晶化とプログレッシブ方式への移行
2000年代に入り、液晶パネルの普及により、地図や文字の視
認性が重視されるようになりました。インターレース方式では文字が滲む・ちらつくといった問題があり、バックカメラ映像や地デジ入力への対応も求められたことで、プログレッシブ方式への移行が進んでいきました。
現代の車載ディスプレイ
現在の車載ディスプレイは、10インチ以上の高解像度液晶や有機ELを搭載し、映像表示は完全にプログレッシブ方式が標準です。その理由は以下の通りとなっています:
- 地図や文字情報の視認性向上
- バックカメラやサラウンドビュー映像の遅延・ちらつき防止
- HDMIやLVDSなどのデジタルインターフェースがプログレッシブ前提で設計
メリット・デメリットの比較と用途
以下に両方式の比較をまとめます。
比較表
観点 | インターレース | プログレッシブ |
---|---|---|
帯域幅 | 少なくて済む(低容量) | 多く必要(高容量) |
静止画 | 縞模様が発生 | 鮮明で繊細 |
編集・加工 | ※デインターレースが必要 | フレーム単位での処理可能 |
ディスプレイ適性 | CRT向き | 液晶・有機EL向き |
※デインターレース:インターレース方式の動画をプログレッシブ方式に変換すること
用途の整理
- インターレース:アナログ放送、VHS、DVD、初期の地デジ放送
- プログレッシブ:Blu-ray、動画配信、スマホ、PC、ゲーム機、車載ディスプレイ、4K/8K放送
特に車載ディスプレイでは、安全性や視認性の観点からプログレッシブ方式以外の選択肢はほとんどなくなっています。
まとめ
インターレース方式はアナログ時代の帯域制約を解決するための方式であり、テレビ放送の普及に大きく貢献しました。しかし多くのデジタルデバイスがプログレッシブ方式を標準とする中で、インターレース方式は徐々にその役割を終えつつあります。
プログレッシブ方式は常に完全なフレームを扱えるため、帯域幅を多く必要とする課題もありましたが、現在は映像圧縮技術の進化もあり、放送や配信、PC、ゲームに加え、車載ディスプレイでも標準となりました。
車載ディスプレイもまた、時代の要求に合わせて変化しており、今後も映像処理技術の進化や高解像度化が進んでいき、より鮮明で滑らかな映像表示が期待されます。
Renesas製品のご紹介
Renesasは、車載向けのビデオ信号処理ソリューションとして、インターレース方式・プログレッシブ方式の両方に対応する製品を展開しています。中でもR-Carシリーズは、ADASや車載インフォテインメントに採用されているSoCであり、高度なグラフィック処理性能と高品質なデインターレース機能を搭載しています。
これにより、アナログカメラから入力されるインターレース信号を、ナビゲーション画面やメーター表示に適したプログレッシブ信号へと変換可能です。また、車載カメラからのプログレッシブ信号も直接処理できるため、高解像度かつ低遅延での映像表示を実現が可能となります。
Renesasの車載SoCをご検討の際には、是非弊社へお問い合わせください。
Renesas R-Carシリーズ