- 公開日:2025年09月24日
- | 更新日:2025年10月06日
初めてモータを回してみた ①モータとは
- ライター:daiki suda
- モータードライバー
はじめに
皆さんこんにちは。
この記事では、「初めてモータを回してみた」体験をもとに、モータの基本的な仕組みや動作原理について解説していきます。
第1弾では、「モータとは」という基本的な問いから始め、代表的なモータである「DCモータ」について紹介します。
1. モータとは
モータとは、電気エネルギーを“回す力”=機械エネルギーに変換する機械です。
家電製品や自動車、産業機器など、私たちの生活のあらゆる場面で活躍しています。
下の図では、モータが電気エネルギーを機械エネルギーに変換する流れを示しています。
ただし、変換の過程では一部のエネルギーが熱や振動として失われてしまいます。
この“損失”をいかに減らすかが重要です。
永久磁石と電磁石の役割
モータは、永久磁石と電磁石で構成されています。
- 永久磁石:N極とS極が固定されていて、常に一定の磁力を持つ
- 電磁石:コイルに電流を流すことで磁力を発生させる磁石
電磁石は、電流の向きによって磁界の向きが変わるという特徴があります。
この性質を利用して、永久磁石と電磁石の磁界を制御します。
ちなみに、電磁石に電流を流して磁界を発生させることを「励磁(れいじ)」と呼びます。
2. ブラシ付きDCモータとは
まずは「ブラシ付きDCモータ」についてご紹介します。
このモータは、以下のような部品で構成されています。
- 固定子(ステーター):回転子の外側に固定されていて、永久磁石で磁界を作り出す役割を持つ
- 回転子(ローター):コイルが巻かれていて、電流を流すと、励磁され電磁石になる
- ブラシ:電源と回転子をつなぐ導電部品で、整流子と接触しながら滑るように動き、電流を供給する
- 整流子(コミュテータ):回転子に取り付けられた円筒状の部品で、ブラシと接触しながら回転する
この仕組みによって、回転子のコイルに流れる電流の向きが周期的に切り替わり、一定方向のトルクを維持できるようになっています。
ブラシ付きDCモータの制御方法
モータの中では、回転子のコイルが磁石(固定子)に囲まれていて、コイルの両端が整流子につながっています。
動作フロー:
- 電圧をブラシにかけると、整流子を通じてコイルに電流が流れます。
- 回転が進むと、ブラシと整流子の接触位置が変わり、一時的に電流が流れなくなりますが、惰性で回転は続きます。
- さらに回転すると、コイルに流れる電流の向きは切り替わります。
この繰り返しによって、モータはスムーズに回り続けるのです。
メリット・デメリット
ブラシ付きDCモータのメリット・デメリットについてです。
メリット:
- 構造がシンプルで設計しやすい
- 部品点数が少なく、コストが低い
- 電流で回転速度を変化できる
デメリット:
- ブラシが摩耗するため、定期的なメンテナンスが必要
- ブラシと整流子の接触による電気的ノイズが発生する
構造がシンプルで制御しやすいため、幅広い用途で使われます。
3. ブラシレスDCモータとは
次は「ブラシレスDCモータ」についてです。
名前の通り、ブラシや整流子がなく、電子回路で電流の切り替えを行うモータです。
構成は以下の通りです。
- 固定子(ステーター):コイルが巻かれていて、電流を流すと、励磁され電磁石になる
- 回転子(ローター):固定子の内側に固定されていて、永久磁石で磁界を作り出す役割を持つ
- センサー:回転子の位置を検出して、どのコイルに電流を流すかを判断する
センサーには、ホールセンサー、エンコーダ、レゾルバなどがありますが、これらの詳細はまた別の機会に。
ブラシレスDCモータの基本構造
一般的なブラシレスとして3相のブラシレスモータを用いて説明していきます。
このブラシレスDCモータは、回転子の磁極がNとSの2つあり、固定子には電磁石が3つあります。
この3つの電磁石を120度ずつ位相をずらした、3相(U,V,W)の電圧で励磁します。
ちなみに回転子の磁極数と固定子の電磁石数が増えると、大きなトルクと平滑な回転力を得ることが出来ます。
ブラシレスDCモータの制御方法
一般的な3相モータ(U, V, W)を例に説明します。
センサーでローターの位置を検知しながら、電流を流していきます。
- U相に正電流、V相に逆電流
- U相に正電流、W相に逆電流
- V相に正電流、W相に逆電流
- V相に正電流、U相に逆電流
- W相に正電流、U相に逆電流
- W相に正電流、V相に逆電流
この複雑なステップを繰り返すことで、モータはスムーズに回転します。
メリット・デメリット
ブラシレスDCモータのメリット・デメリットについてです。
メリット:
- エネルギー効率が高い
- センサーによって位置制御が可能
デメリット:
- 電子制御回路が必要で、設計が複雑
- 部品点数が多く、コストが高くなる
ただし、ブラシ付きDCモータより長寿命で高効率なため、トータルコストが下がるケースもあります。
無接点により低ノイズ長寿命が可能となるので、連続可稼働を要する機器や信頼性が求められる用途に広く使われています。
4. その他:モータの種類
モータにはいくつかのタイプがあり、電源の種類や制御方法によって分類されます。
モータの種類 | 特徴 |
---|---|
DCモータ | 直流電源で動作。制御が簡単で、構造もシンプル。 |
ACモータ | 交流電源で動作。家庭用コンセントなどで使われる。 |
ステッピングモータ | パルス信号に応じて一定角度ずつ回転。位置制御に強い。 |
DCモータに関するご質問や、技術的なご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
5. 次回予告
次回は、「初めてモータを回してみた ②モータを回すための周辺機能」というタイトルで、
Renesas ElectronicsのRH850/U2Bの周辺機能についてご紹介しますので、お楽しみに!!