• 公開日:2025年09月25日
  • | 更新日:2025年09月29日

アナログエンジニアがマイコンを触ってみた 第1回 導入編

アナログエンジニアがマイコンを触ってみた

アナログ回路設計者である私達が、ひょんなことからルネサス製RXマイコンを使ってみることに。
普段見慣れたデータシートとは違う、分厚いユーザーズマニュアル。
聞いたことのない専門用語の数々。正直、どこから手をつけていいか分かりませんでした。
今回のシリーズは、同じようにマイコンの第一歩を踏み出すアナログエンジニアへの、
ささやかな道しるべとなれば幸いです。

本シリーズは、複数回程度の連載を予定しており、
「PWM制御」と「割込制御」の実現を目標に進めていきます。

評価基板について

市販されている「Target Board for RX231」を使用しました。
本ボードはプログラムを書き込むためのエミュレータ回路が搭載されていることです。
つまり、他に特別な機材を用意する必要がありません。
この基板とPCをUSBケーブルで繋ぐだけで、すぐに開発をスタートできます!

e2 Studioについて

評価基板の準備が整ったあと、ソフトウェア開発をスムーズに始めるために
ルネサスでは、無料のソフトウェア開発環境(IDE)として「e² Studio」をご用意しています。

(*)e² Studioのダウンロードはこちらから
【ダウンロードはこちら】

e² Studioの最大の特長は、「スマート・コンフィギュレータ」。
これは、これは、少し難しいハードウェアの初期設定を、とても簡単にしてくれる便利機能です。
例えば、「このピンは入力にする」「あのピンは出力にする」といったマイコンの
各端子の役割設定などを、コードを書かずにGUIの操作だけで行えます。
(こちらの操作方法については後述します)

例えば、タイマーやシリアル通信といった
マイコンの機能(ペリフェラル)を使う際に
本来はデータシートを見ながら複雑なコードを書く必要がありましたが、
この機能があれば、GUI画面上で使いたい機能を選ぶだけで、
必要な初期化コードが自動生成されます。

また、以下URLにある
「統合開発環境e² studio ユーザーズマニュアル クイックスタートガイド」で
インストール方法の記載どおりに実行しました。

(*)統合開発環境e² studio ユーザーズマニュアル クイックスタートガイドのダウンロードはこちらから
【ダウンロードはこちら】

プロジェクトスタート

 1.プロジェクトの始め方

インストール後、以下の画面が出てくるので、
「ファイル」→「新規」→「C/C++ project」より、プロジェクトをスタート。

 

 

 

2.プロジェクト名の設定

プロジェクト名を設定します。今回は「jikken」として、次へを押します。

3.新規C/C++のプロジェクトのテンプレートの設定

こちらは、コンパイラ(ソースコードを、コンピュータ(CPU)が理解できる機械語に翻訳してくれるプログラム)
の選択になります。
今回はRX231をベースに開発を進めるので、
「Renesas RX」→「GCC for Renesas RX C/C++ Executable Project」
というコンパイラを選択します。

4. Select toolchain, device & debug settingsについて

次にプログラムを作るためのソフトウェア/ハードウェア環境を設定します。

○ToolChain Settingについて

プログラムを書く言語: (CかC++)、コンパイラ (GCC for Renesas RX) 、
リアルタイムOS(RTOS)について、以下のように設定しました。

言語:C

ツールチェーン:GCC for Renesas RX
→「新規C/C++のプロジェクトのテンプレート」で設定をした時点でバージョン名も含め
自動入力されています。

RTOS:None
→複数の処理を決まった時間内に終えることを保証する、
組み込み機器用のOSです。今回は複数処理をするような事はない為、Noneとします。

○Device  Settingについて

今回は「Target Board for RX231」を使用するので、以下のように設定します。
Target Board:Target Board RX231

ターゲットデバイス:R5F2318AxFP
→Target Board RX231を設定すると自動的に設定されます。

エンディアン:Little
→メモリ上で複数バイトのデータをどの順番で並べるかというルールのことです。主に「リトルエン
ディアン」と「ビッグエンディアン」の2種類あり、RXマイコンは通常、小さい位のバイトから順番
にメモリに格納されるので「Little」を選択します。

・Bank Modeについて
バンクモードは、マイコンに搭載されているフラッシュメモリ(プログラムを書き込む記憶領域)の
動作モードを選択する設定で今回は特に使用しません。

 Configurationsについて

目的毎(評価用?量産間近?)でプログラムをビルド(=ソースコードから実行ファイルへ変換)するデバックモードを以下より選択できます。

・Hardware Debug構成を生成
実際のマイコンに接続して、バグがないかテストするためのバージョンです。

・ Debug (Simulator)構成を生成
マイコンが無くても、PC上で動きをシミュレーションするためのバージョンです。

・ Release構成を生成
バグ取りが完了した、製品としてマイコンに書き込むための最終バージョン。

今回は実験段階なので、「Hardware Debug構成を生成」を選択し、
デフォルトで選択されている「E2 Lite(RX)」を選択しました。

5. Select Coding Assistant Settingsについて

先ほどご紹介した「スマート・コンフィギュレータ」を使用するので
Use Smart Configuratorをチェックします。

6. 追加 CPU オプションの選択について

この項目については同僚に聞いた所、「上級者向けの微調整オプション」との事なので、触らず。。

7. ライブラリジェネレータ-設定の選択

今回はNewlib/Pre-builtを使用します。

○ライブラリー・ソースの選択
Optimized: コードサイズ(プログラムの大きさ)が最小になるように、
機能を削って最適化された、ライブラリーソースです。
マイコンのメモリが非常に小さい場合に選びます。

Newlib: 組み込みシステム向けとして広く使われている、
標準的でフル機能のライブラリーソースです。機能とサイズのバランスが良く、
一般的にはこちらが選ばれます。

○ライブラリー・タイプの選択

Project-Built:  プログラムをビルドするたびに、
ライブラリもソースコード(設計図)から毎回一緒に作り直します。
プログラムと完全に同じ設定で作られるので最適化されますが、ビルドに時間がかかります。

Pre-Built:コンパイル済みのライブラリをリンクするのみ。
メーカーがあらかじめ用意した、すでにコンパイル済みのライブラリファイル(完成品)
をプログラムに連結(リンク)するだけです。ライブラリをコンパイルする手間が省けるため、
ビルドは非常に高速です。

8. プロジェクトの完成

以下の画面が出てきたら、終了をクリックします。

すると、以下のようにプロジェクトのなか「jikken」が出てきたので、これをもとにコードを書き込む形になります。

まとめ

今回は、「プロジェクトの作成方法」を中心に紹介しましたが、次回はスマートコンフィグレーターを使って、コードを生成していきます。