- 公開日:2025年09月26日
AFE(アナログ・フロント・エンド)GreenPAK SLG47011で自在に実装
- ライター:Hirose
- その他
AFE(アナログ・フロント・エンド)とは?
私たちの周りには民生品から業務用まで、様々な電子機器があふれています。大部分の機器では、CPUやMPUなどのプロセッサのデジタルで処理をしている部分がシステムの中心となりますが、多くの機器では様々なアナログ入力によるセンシングが行われています。
例えば、スマートホンのシステムを考えてみましょう。スマートホンの中に搭載されているプロセッサが、様々な動作を行っています。私たちがスマートホンをコントロールするには、何かしらの入力をする必要がありますが、そこには様々なセンサーからのアナログ入力が含まれます。例えば、タッチコントロール、音声入力、カメラの入力などです。 昨今プロセッサの性能が向上し、スマートホンなど身近な製品でもより効率が良く、そしてより精度の高い演算が可能になってきています。この進化の裏には、プロセッサのコアの性能だけでなく、それを支える周辺のアナログ回路の発展も重要な要素となります。
プロセッサに入力するセンサーデバイスの信号は、アナログ信号であればデジタル信号に変換する必要があります。なぜならば、プロセッサーはデジタル信号しか処理できないためです。このアナログ信号を適切なデジタル信号に変換するまでの処理、またはその処理をするデバイスを アナログフロントエンド、AFE と呼びます。
AFE(アナログ・フロント・エンド)は何をしている?
次にアナログのセンサー出力をプロセッサーで取り込むまでの経路を見てみましょう。
大きなながれとしては、このようになります。
センサー信号を電圧に変換しー>適正なレベルに正規化しー>AD変換(またはコンパレーター)>プロセッサーで扱えるデジタル信号
各要素については説明する必要のない方も多いと思いますが、簡単におさらいしましょう。
センサー信号を電圧に変換
センサーの出力が微弱な場合、オペアンプなどを用いて信号を増幅し、センサーの出力が大きすぎる場合は逆に減衰させます。また、センサーによっては出力インピーダンスが高いものもあります。センサー自体が微弱な電流しか流せる能力がなく、外来ノイズに弱いものとなります。適切にセンシングするためにはインピーダンス変換をするためのバッファーを挟みます。
また、センサー信号はDC信号とAC信号に分けることができます。DC信号はセンサーの計測時の値を絶対値として扱うのに対し、AC信号は基準値に対してどれだけ変動しているかを計測します。音声信号や振動などはAC信号になります。また、より精度を求める場合は、差動で扱います。
適切なレベルに正規化し、AD変換しデジタル信号に変換
アナログのセンサー信号をADコンバーターで測定するには、センサーで検出したい最大の値を、後段のAD Converterの入力範囲いっぱいに設定するのが理想です。例えば、ADコンバーターの入力レンジが0~3Vの場合は、センサーの出力レベルを0~3Vにすると、よりノイズが少なく、AD変換での誤差を最小限に抑えることができます。
また、半導体デバイスは、デバイス自体から発生するノイズがあり、それを除去することはできません。これをノイズフロアと呼びます。測定する信号の精度をより高めるには、ノイズフロアに対し、出来るだけ信号のレベルを大きくする必要があります。
アナログ信号を適正レベルに整えた後、AD変換を行います。ADコンバーターの基本的な性能を示すのは分解能とサンプリングレートになります。
分解能
分解能とは、アナログ入力信号をデジタルで表現したときの細かさになり、ビット数で表します。
サンプリングレート
こちらは、1秒間に信号変換を行う回数になります。単位はSPS:エス・ピー・エス(サンプリング・パー・セカンド)やHz(ヘルツ)を使用します。どちらも同義と捉えていただいて問題ありません。サンプリングしたい波形に対して、変換回数が多いほど元の信号をより忠実に読み取ることが出来ます。つまり、入力するアナログ信号の変化が速くなるほど、より高いサンプリングレートで処理を行う必要があります。
GreenPAKとは
GreenPAKシリーズには現在40種類以上の種類があり、ベースダイと呼んでいます。各ベースダイ事に特色があり、搭載しているマクロセルと呼ばれるモジュールや、ピン数などが違います。Go Configure Software HubというGUIツールが用意されており、シミュレーションや評価ボードを使用したエミュレーションを簡単に行うことができます。GreenPAKについての詳細は、記事下方のリンク先をご参照ください。
この記事で紹介するのは、GreenPAKの中でもAnalogPAKファミリーといわれている製品群のなかの一つ、SLG47011です。
SLG47011
皆様、さまざまなアプリケーションを開発していると、プロセッサだけでちょうどよいシステムを組むことが難しいケースがあるかと思います。例えば、現行モデルよりに新しいセンサーを搭載したい場合、現在採用しているマイコンではAD入力の数が足りない、そこでADの本数が多いものを採用しようとすると、マイコンのサイズが大きくなりすぎて筐体に入らない、などシステム設計で悩まれる場面もあるのではと思います。 そういった場面の救世主になりえる製品が、GreenPAK SLG47011です。
SLG47011で実現する機能のうち代表的な例と、機能実現に利用できるSLG47011に搭載されたモジュールをいくつか紹介いたします
メジャーメント機能
また、GPIOを6本、温度センサー、Vreg、コンパレーターなどを内蔵しています。
データプロセッシング機能
四則演算や、ADコンバーターで変換した値をオーバーサンプリングできる機能が備わっています。16bit相当まで分解能を擬似的にに上げることが可能です。その他、リニアライゼーション機能、デジタルコンパレーターが備わっています。
ロジック機能
ステートマシーン、ルックアップテーブル、フリップフロップ、シフトレジスタ―、タイマー、カウンター、ディレイなどが備わっています
最後に入出力ブロックを紹介します。
最大13本のGPO / 12bit DAC / PWM出力 / Vref, Iref 出力 / I2CとSPIが備わっています
代表的なモジュール
アナログ・フロント・エンドを構成するために必要な代表的なモジュールを紹介します。それぞれ各モジュールをクリックすることで、詳細パラメータを設定できます。
プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)
シングルエンデッド入力、差動入力など、設定を選ぶことが可能です。PGAはOPアンプをベースに周辺回路をとりこんだ増幅回路です。増幅率や回路構成を設定して使用することができます。増幅率は1倍から最大64倍まで設定することができます。また、シングルエンデッド、ディファレンシャルなど複数の構成を選択することができます。
ADコンバー タ
SLG47011は4つのADコンバーターを内蔵し、分解能は最大で14bitです。ADコンバータの後段のブロックで、変換した結果の平均値を算出するなどのデータ工が可能です。”Sample per Channel” では後段のブロックに渡すデータ数を指定します。また、4つの各チャンネルの設定はPGAの設定に追従します。
コンパレータ
電圧値を検知するアナログコンパレータに加え、ADコンバータ出力などデジタル値の検知をする4chのデジタルコンパレータを内蔵しています。デジタルコンパレータにはヒステリシス機能もついているので、出力値を安定させることができます
独自の便利なモジュール
SLG47011は、AD変換した信号をプロセッサにそのまま渡すだけではなく、扱いやすくなるよう加工することや、プロセッサを介さずにSLG47011から直接出力することができます。
DATA BUFFER
Strage(FIFO), Moving Average, Oversampling の3つのモードがあります。この設定では、AD変換したデータを安定化させるため、Moiving Average(移動平均)モードを選択しています。センサーの出力はノイズを含んでいますが、移動平均をとることで安定した値を得ることができます。
MATH CORE
電圧値を検知するアナログコンパレータに加え、ADコンバータ出力などデジタル値の検知をする4chのデジタルコンパレータを内蔵しています。デジタルコンパレータにはヒステリシス機能もついているので、出力値を安定させることが出来ます。測定したデータ同士や、測定したデータとあらかじめ決めた値との、乗算、加算、減算を行うことが出来ます。このモジュールにより様々な応用用途が考えられます。例えば、PGAを使用し電圧値と電流値を検出、2つの検出結果を掛け合わせて電力値の算出などが可能になります。
MEMORY TABLE
RAMモードとROMモードの2つのモードを持っています。RAMモードでは、メモリーテーブルはADコンバーターで取得したデータを格納するために使用します。ROMモードでは、メモリーテーブルには、あらかじめ任意のブロックデータを書き込みます。これは入力値からテーブル参照し出力値をだすためのテーブルとなります。2次関数や3次関数を使用して入力から出力を算出するよりも、より高速に結果を得ることができます。
WIDTH CONVERTER
メモリーテーブルに格納されたデータを変換し出力します。出力形式は 12bitパラレル、3x4bit、 6x2bit、 シリアルビットストリームの4種類です。このモジュールを利用して、I2C,SPI信号などのエミュレーションやLEDの表示コントロールなど様々な用途に活用できます。
評価ボード
・GreenPAKシリーズでは様々な評価ボードが用意されています。
今回は、GreenPAK Lite開発ボードとSLG47011 20ピンDIPプロトタイピングボードを使用し、下記の評価をおこないました。
面倒なプログラミングは要らず、Go Configure Software Hubで組むことができます。
- 電源ラインの電圧を測定し計測 (A)
- 電源ラインの電流値を計測するために、電流検知用抵抗を挿入し、その両端の電位を計測 (B)
- PGAで(A)と(B)の値を計測
- Data Bufferで移動平均をとる
- Math Core で移動平均処理後の(A)と(B)を掛け合わせる
- その結果が設定した任意のスレッショルド値以上になったら、LEDを点灯させる
評価ボードとツールはこちら
GreenPAK Lite開発ボード
SLG4DVKLITE – GreenPAK Lite開発ボード | Renesas ルネサス
SLG47011 20ピンDIPプロトタイピングボード
SLG47011V-DIP – AnalogPAK SLG47011 20ピンDIPプロトタイピングボード | Renesas ルネサス
Go Configure Software Hub
Go Configureソフトウェアハブ | Renesas ルネサス
まとめ
・AFE(アナログ・フロント・エンド)はセンサーなどアナログ信号をシステムに取り込むための処理、または処理をするデバイスです
・Renesas製GreenPAKを使うことで、システムに合わせて「ちょうど良いAFE」を実現することが出来ます
・プログラミング要らずGUI上で詳細の設定が出来ます。