• 公開日:2025年09月26日
  • | 更新日:2025年09月30日

組込み機器における画像処理について

画像処理ニーズの高まり

近年、スマート化・自動化の加速に伴い、組込み機器における画像処理技術の重要性が一段と高まっています。特に、高性能なカメラモジュールと AI 技術の普及により、各種機器への画像処理の実装が広範に進展しています。例えば白物家電では、カメラを用いた対象認識によって自動動作が可能となり、バーコードスキャナや生体認証、監視用途でも適用領域が拡大しています。コミュニケーションロボット分野では、画像認識を介した人との自然なインタラクションが実現しつつあります。
さらに、GUI 表示やカメラを活用する応用機器――FA 表示器、インターホン、計測器、ディスプレイ端末など――においても、画像処理は操作性の向上、ユーザビリティの改善、安全性の強化に直接寄与しています。このように、画像処理は家庭用から産業用までを跨ぐ基盤技術として位置づけられ、今後も用途拡大とともに継続的な成長が見込まれます。

組込みシステムにおける課題

組込み機器で画像処理を実装する際には、主に処理性能・消費電力・メモリーの三点が制約となります。
第一に処理性能。小型 MCU は演算資源が限られるため、画像処理のような高負荷ワークロードをソフトウェアのみで安定的かつリアルタイムに実行するのは難しいです。
第二に消費電力。バッテリ駆動機器では省電力が必須条件であり、高性能 MPU を適用して処理能力を確保すると、消費電力増や発熱による動作時間の短縮・筐体設計の難易度上昇を招きやすいです。
第三にメモリー。高解像度画像の前処理や推論には大容量 RAM が必要で、一般的な MPU では外付け RAM を前提とする構成になりやすいです。その結果、コストや実装難易度、基板面積の増大につながります。

Renesas独自技術である「動的再構成プロセッサー」について

1.DRP(動的再構成プロセッサー)とは

DRP は、用途に応じて演算回路を動的に切り替えられる再構成型ハードウェIPです。固定構成のハードウェアと異なり、処理内容に最適な回路へリアルタイムに再配置できる点が特徴で、ハードウェア級のスループットソフトウェア級の柔軟性を両立できます。

  • Dynamic Configuration
    アプリケーション内の演算ブロックを約 1nsオーダで切り替えます。フィルタ、変換、特徴抽出など処理段に合わせて回路を差し替えることで、同一ハードウェア資源を時間多重で高効率に活用できます。
  • Dynamic Loading
    アプリケーション全体の構成を約 1msで切り替えます。これにより、複数アプリケーション/パイプラインを低オーバーヘッドで連続実行できます。

 

2.ソフトウェアの柔軟性とハードウェアの性能を両立

一般に、ソフトウェア(CPU)はプログラム変更による高い柔軟性を備える一方、単体でハイレートな画像処理をリアルタイムに捌く性能には限界があります。
対して、FPGA や ASIC などのハードウェアは専用回路による高スループットと低レイテンシを実現できるが、機能変更や拡張の自由度は小さいです。
このトレードオフを解消するのが、ルネサス独自のアクセラレータ DRP(動的再構成プロセッサ)ですDRP は処理内容に応じて演算回路を動的に入れ替え、同一ハードウェア資源を時間多重的に活用することで、ソフトウェア並みの適応性ハードウェア級の実行性能を同時に満たします。結果として、アプリケーションの要件変化やシーン変動に追随しつつ、スループット・電力・コストのバランスを高水準で維持できます。

 

ルネサスMPU製品 RZ/A紹介

 

1.RZ/Aシリーズのコンセプト

RZ/Aは、「MCUのように使えるMPU」を目指して設計された製品です。

一般的なMPUは高性能ですが、電源構成が複雑で、外付け部品も多く、設計が難しくなりがちです。一方、MCUはシンプルで使いやすいものの、性能に限界があります。

RZ/Aはその中間に位置し、MCU並みの使いやすさとMPUレベルの性能の両立を実現しています。大容量RAMを内蔵し、外付けメモリーが不要な場合も多く、部品点数や配線の複雑さを大幅に削減できます。

そのため、GUI付きの操作パネルや制御端末など、高速処理と簡易設計の両方が求められる用途に最適です。

 

2.RZ/A2Mに搭載された「Simple ISP」

Simple ISPは、ルネサスのDRP(動的再構成プロセッサー)を活用した画像処理ライブラリで、画像認識システムの価値を高める以下の特長を提供します。

  • コスト最適化:MIPIインタフェースと低価格CMOSセンサの組み合わせで、外付けISPを不要化しつつ所要機能を実現します。システムのBOMと実装負担を抑えます。
  • 認識率・安定性の向上:自動露出/ホワイトバランス/ガンマ補正/ノイズ低減等に加え、環境変動に応じたコグニティブ制御で、照度変化・逆光・低照度に対する堅牢性(ロバスト性)を確保します。AI前段のS/N改善と誤検出低減に寄与します。
  • 高スループット処理:CFA補間(デモザイク)や前処理パイプラインをDRPでリアルタイム実行します。CPU負荷を下げ、推論処理のスループットを底上げします。

 

おわりに

 

RZ/Aに関する詳細な情報は、Renesasの公式ウェブサイトにてご確認いただけますので、ぜひチェックしてみてください。