• 公開日:2025年09月29日
  • | 更新日:2025年09月30日

半導体における熱抵抗とは

はじめに

半導体を用いて商品の開発を行うにあたり、下記品質を確保してご使用する半導体の熱抵抗からシステムの放熱設計を実施する

必要があります。

  • 想定商品寿命の確保

:商品定格内の環境で使用しているにも関わらず、半導体故障により想定寿命前に壊れるなど、メーカの信用度劣化防止

  • 熱暴走防止

:半導体は一定温度以上の高温になるとより多くの電流が流れることによって、更に温度が上がり、この負の連鎖(熱暴走)

によって、最終的にデバイスが壊れてしまう事の防止

  • 商品使用環境最大温度の確保

:商品の使用環境保証温度を規定

この放熱設計を行うにあたり、半導体の「熱抵抗とは」をご説明させて頂きたいと思います。

 

1. 熱抵抗とは

半導体を基板に実装した時、各ポイントの温度間の「熱の伝わりにくさ」を数値化したものを熱抵抗と言います。

この各ポイントの温度は下記、熱抵抗構成図に示すTa,Tc,Tjのポイントで表現され、そのポイント間の「熱の伝わりにくさ」

を熱抵抗:θj-a,θj-c,θa-cとしています。

熱抵抗の単位は、

・熱抵抗=℃/W

とワットあたりでの温度の伝わりにくさの抵抗値として表します。

この熱抵抗は「抵抗」とある様に、値が大きいと熱が伝わりにくく(Ta視点での各ポイントの温度差大)、小さいと熱が伝わり

やすい(Ta視点での各ポイントの温度差小)事になります。

 

ここで各ポイントの温度は半導体デバイスの消費電力に応じて変化するので、

各ポイントの温度の関係は

Power OFF時は全ての熱抵抗は「0」℃/Wとなる為、Ta=TC=Tt=Tj と環境温度:Taとなります。

また

Power ON時は各ポイント間に熱抵抗を持つため、温度の関係は、Ta<TC≦Tt<Tjとなります。

   

2. 熱抵抗は使用環境で変化する!?

 

例えば、半導体デバイスの仕様として、

Ta=85℃、もしくはTj=125℃、熱抵抗は、θj-a =20℃/W

であったとします。

 

この半導体デバイスメーカが規定している熱抵抗 「θj-a =20℃/W」 

JEDECの規格に準じ、どの様な基板サイズ、基板層数、基板材質、実装位置、配線厚/寸法、各層のパターン、ビアサイズ/位置

の他、測定時の高温槽の空間サイズ等、細かく規定された条件で測定された値となっています。

この為、半導体デバイスメーカが規定している熱抵抗値は、実際には装置設計における参考値にしかなりえません。

 

この為、装置の放熱設計を行う為には熱抵抗の考え方を理解する必要があります。

 

半導体デバイスを基板に実装した時、Tj-Ta間の熱抵抗(θj-a)は下記の様に各種経路を経由します。

上記、経路を等価回路で示すと、電気抵抗の並列接続と同じであり、

θj-a = 1/((1/θj-a(3))+(1/θj-a(1))+(1/θj-a(2)))

となり、トータルの熱抵抗は放熱設計により変化します。

 

3. Tj:ジャンクション(チャネル)温度について

トランジスタのPN接合部の温度をTjとしています。

 

電流が流れると接合部が発熱します。

動作時(電流が流れた時)、この接合部温度がTjとなります。

 

 

但し、この接合部温度(Tj)を測定する事は困難であり、θj-c等からTjを推測しています。

例えば、ケース温度(Tc)が100℃であった時、

・θj-c=20℃/W

・消費電流が100mA@5V=0.5W

とした場合、 Tj=Tc+(20℃/W×0.5W)=100℃+10℃=110℃となります。

 

また、TjはTt(パッケージセンターケース温度)から近似値を推測する事もできます。

 

TtとTjとの熱抵抗(Ψt-j)は小さく、電力による熱抵抗も安定している為、

Ttを測る事で、実際の実動作でのTjを代用測定する事ができます。

 

 

例えば、ケースセンター温度(Tt)が100℃であった時、

・ Ψt-j (ジャンクション温度:Tj、ケースセンタ温度:Tt間熱抵抗)=5℃/W

・ 消費電流が100mA@5V=0.5Wとした場合

Tj=Tt+(5℃/W×0.5W)

=100℃+2.5℃=102.5℃  ∴Tt≒Tjと近似します。

 

 

 

4. 熱抵抗まとめ

  • デバイスの動作保証温度はTa、もしくはTjで規定される。
  • Ta自身の最大消費電力で発生する発熱が影響しないポイントの温度になります。
  • TjTt(パッケージセンターケース温度)を実測する事で、Tjの近似値を知る事ができます。

 

以上