• 公開日:2025年11月05日
  • | 更新日:2025年12月01日

チラシ・郵便物判定システムを作ってみた~仕様書作成編~

はじめに

皆様はじめまして。2025年新卒入社の阿久澤です。マクニカでは新人FAEに「製作実習」の機会が与えられます。「製作実習」は実際にモノづくりを体験しながら基礎知識を身につけようという教育研修の1つです。

今回は困難も成長もあった、そんな日々を過ごした「製作実習」について私の体験談をお話していきます。

製作条件

製作実習における製作条件を以下に示します。

・Renesas FPB-RA0E1マイコンキットを使用する

・FSP(C言語)を用いてプログラムを作成する

・センサを使用する (温度・湿度・照度・圧力など)

・表示系を使用する (LED・7セグメントLED・LCDなど)

・駆動機構をつける (モーター等)

・割り込みを使用する

・予算1万円以内で製作する

製作アイデアの模索

モノを作るためにはまず、何をつくるか決めなければなりません。上記の条件を満たせば何でも作れてしまうのです…アイデアのセンスが問われますね…しかし2週間後には仕様書の提出日が迫っています。悩める時間がありません。思いついたものを書き出していきます。

・ロボット犬

⇒関節部分の工作に時間がかかることが想定され、製作実習の本質(工作ではなくソフト面における学びが重要)とはズレてしまう。

・ドローン

⇒ドローン用のモーターが高価であり、予算内に収まらない。また、制御が複雑で期間内に製作できるか不透明。

何かユニークでちょっと役に立つような製品を作りたかったため、かなり悩みました。私は空を飛んだ経験があるので、どうしてもドローンを作りたかったのですが・・・これはプライベートで作ることにします!

 

悩む中で、日常における困りごとに焦点を当てて考えてみたところ、

「そういえば、家のポストに大量のチラシが投函されている!」

と思い出しました。これには長年悩まされており、どうしても解決したいため

 

「チラシ・郵便物判定システム」

 

をつくることにしました。

ちなみに実際にポストに投函されているチラシは以下になります。

 

これは大変なことです。郵便物がどこにあるのか、まったくわかりません!!

完成イメージ

早速完成をイメージしていきます。まずは、チラシ・郵便物判定システムとして何が必要なのかを考えていきます。

 

・チラシと郵便物を識別するためのセンサ

→カラーセンサを4つ使用し、RGB値からチラシと郵便物を判定します

・投函物を照らすためのLED

→白色LEDを使用します

・投函物を検知するためのセンサ

→光センサを2つ使用し、照度の変化で投函物を検知します

・判定した投函物を自動で返却、投函するための機構

→モーター駆動のタンク工作キットを使用します

・投函物に応じたディスプレイ表示、音響機能

→表示用としてLCD、音響用としてmicro:bitを使用します

 

機能をまとめると以下のようになります。

これらの仕様を元に全体の完成イメージ図はこんな感じになりました。

 

筐体の上部に白色LEDに隣接させてカラーセンサを配置し、底面部分には自動搬送で使用するタンク工作キットを配置しています。工作キットの部分に光センサを2つ配置し、天井部分のLEDの光を読み取る構造にしました。

仕様の詳細

次に仕様の詳細について説明します。

下図のように照度の変化により投函物を検知します。その後、LEDを1つ光らせて隣接したカラーセンサでRGB値を取得します。これを4つのカラーセンサで繰り返し、すべて読み取りが終了したら判定終了です。

判定の結果がチラシであればモーターを逆転させて、チラシを投函者へ返却し、郵便物であればモーターを正転させて投函ポストへ投函します。LCDにはそれぞれ異なる表示をし、micro:bitでそれぞれ音を鳴らします。

モーターを回し終わった後に光センサで照度を確認し、少なくとも1つのカラーセンサの照度がしきい値以下であればエラー対処を行います。

以下にブロック図を示します。

カラーセンサとLCDはI2Cを用いて通信を行い、光センサモジュールからは電圧を取得し、その他はGPIOを用いて制御を行いました。今回使用するカラーセンサはスレーブアドレスを2つ選択できるため、I2Cは2ch使用しています。

次に電源ツリーを示します。

この電源ツリーを見ていただくとわかる通り、ACアダプターなどは使用せず、電源はすべて5V用USBから供給できます。

仕様書作成までのまとめ

個人的にはアイデア出しでかなり苦戦しました。ひらめいたアイデアはことごとく却下となり、検討に検討を重ねた結果、「チラシ・郵便物判定システム」に辿り着きました。苦労して辿り着いたアイデアなので必ず実現させたいと思います!

次回「第2話:ソフトウェア編