• 公開日:2026年01月21日
  • | 更新日:2026年02月26日

Yocto Linux

ルネサスのR-Carファミリを使ったシステム開発で使用されるYocto Linuxについてご紹介します。

はじめに

 

R-CarファミリのようにARM社のCortex-Aコアが搭載されたSoC製品では、開発環境としてLinuxが採用されるケースがあります。

Linuxが採用されるメリットとして以下の理由が考えられます。

メリット
導入コスト ・オープンソースのため、無料で入手可能。

・車載ECU開発で想定されるような大規模プロジェクトでもライセンス費が不要。

・豊富なOSSアプリケーション・ミドルウェア等の資産が活用可能。

高いカスタマイズ性 ・採用するSoCやECUの仕様にあわせて必要な機能に最適化することが容易。

・新しい技術への対応が、商用OSに比べ早い場合が多い。

セキュリティ・信頼性 ・コミュニティによってソフトウェアは常にメンテナンスされ、修正ソフトの入手が容易。

・セキュリティの脆弱性の発見・対策が商用OSに比べ早い場合が多い。

 

 

組み込みLinux

 

IoTや車載機器で採用されるLinuxは、組み込みLinuxと呼ばれます。

皆さんが良く使われる機器ではAndroid搭載のスマートフォンが組み込みLinuxを採用しています。

先に記載したようなメリットから組み込みLinuxを採用する製品が増えていますが、IoTや車載機器固有の課題もあります。

課題 概要
消費リソース 商用OSに比べ使用するRAMサイズ、ROMサイズが大きい傾向があり、製品コストに影響する場合がある。
リアルタイム性 商用のRTOS(Real Time OS)に比べ、ハードリアルタイム(特定の時間内に必ず処理を完了する仕組み)を満たすことが難しい。
起動時間 商用のRTOS(Real Time OS)に比べ、Linuxは起動に時間がかかる。
メンテナンス OSSのためソフトウェアはコミュニティでメンテナンスされるが、最新のソフトウェアを導入し、動作検証を行っていく仕組みをユーザー側で構築する必要がある。
安全規格対応 特定の産業機器や車載製品では、安全規格を満たしたOSや開発ツールの使用が求められる。

 

これらの課題に対していくつかの解決策も提案されています。

ここでは、メンテナンス・リアルタイム性についての解決策をご紹介します。

 

長期サポートカーネル

 

Linuxカーネルは最新カーネルがメインラインによって管理されていますが、組み込み機器のように開発期間が長く、製品寿命も長い場合、固定バージョンで長期間メンテナンス(セキュリティ修正・バグフィックス)されることが求められます。

 

Stable(安定版)は通常2~3か月の間メンテナンスされ、次のStableバージョンへ更新されますが、組み込み製品では以下のような、より長期間サポートのLinuxカーネルが採用される場合があります。

名称 概要
LTSI ・Long-Term Support Initiativeの略。Linux Foundationが主導。

・長期(2~3年)のサポートカーネルを提供。

CIP ・Civil Infrastructure Platformの略。CIPプロジェクトが主導。

・Super Long-Term Support(SLTS)として10年超の産業グレードの超長期サポートカーネルを提供。

 

 

PREEMPT_RT

 

Linuxに対して、リアルタイム性を向上するためのパッチとして準備されたのが、「PREEMPT_RT」です。

PREEMPTはPreemption(プリエンプション)の略で、プリエンプションとは

「あるタスクの実行中に割り込みが入った場合、割り込みハンドラから起動されたタスクが実行できる」

仕組みです。従来のLinuxでは、Linuxカーネル内でプリエンプションは行えない仕様でした。

 

PREEMPT_RTパッチを適用することで、カーネル内のプリエンプションを可能にし、処理時間のばらつき(ジッタ)を小さくすることが可能になりました。

 

加えて、以前はPREEMPT_RTはパッチ提供され、個別に適用して使うソフトウェアでしたが、Linux6.12からメインラインのLinuxカーネルに統合されました。

 

 

Yocto Linux

 

続いて、R-Carファミリの開発環境として採用されているYocto Linuxについて説明します。

 

Yocto Linuxは、Linux Foundationが主導するプロジェクトの1つである、“Yocto Project”が提供しているLinuxディストリビューションのことです。

 

Linuxディストリビューションとは、Linuxカーネルを含め、ミドルウェア・アプリケーション・ツール等を含んだパッケージのことです。

RedHatやUbuntuなどが有名です。

 

Yocto Projectでは、ハードウェアアーキテクチャに依存しない、組み込み機器向けに最適化された、Linuxディストリビューションを提供しています。また、このディストリビューションをカスタマイズして、独自のLinuxディストリビューションを構築することが可能です。そのため、組み込み機器向けの開発環境として広く使われています。

 

2026年1月時点で2024年4月にリリースされたバージョン5.0(Scarthgap)がLTSとして2028年4月まで採用されるメジャーバージョンとなっています。(コードネームはイングランド北部の地名が由来のようです)

 

Yocto Linuxの構成要素を以下に示します。

構成要素 概要
Recipe レシピはパッケージをビルドするための設定とタスクが記述されたファイルです。
Layer レイヤーは関連するレシピや設定をまとめたディレクトリで、レイヤーの組み合わせでディストリビューションのカスタマイズが可能になります。

Base Layerとして、Yocto ProjectとOpen Embedded Projectで開発・管理されるopenembedded-coreと、openembedded coreに含まれない、Open Embedded Projectが提供するmeta-openembeddedがあります。

Distro Layerとしては、Pokyが提供するmeta-pokyがあります。

BSP Layerとしては、Pokyが提供するmeta-yocto-bspやルネサスがルネサス製SoC向けのBSPとして提供するmeta-renesasなどがあります。

Meta data メタデータはレシピ、設定ファイル、ビルドのための参照情報から構成されます。
Open Embedded 組み込み機器用のLinuxディストリビューションを作成するためのフレームワークです。
Poky Yocto Projectが提供するリファレンスの組み込みディストリビューションです。
Bitbake Yocto Projectのビルドシステムです。レシピと設定データを解析するスケジューラとビルドを実行する実行エンジンからなるビルド自動化ツールです。

 

Automotive Grade Linux

Automotive Grade Linux(AGL)はLinux Foundationが主導するプロジェクトの1つで、コネクテッドカーやSDV(Software Defined Vehicle)向けのオープンソースベースのリファレンス実装環境を提供しています。

プロジェクトメンバーには、日本の自動車メーカーやTier1メーカーが含まれています。

 

AGLのツールやコアのOSS部分はYocto Projectをベースにしています。

 

AGLが提供するUCB(Unified Code Base)は、自動車のインフォテインメントシステム製品の70-80%のソフトウェアコンポーネントを提供し、自動車サプライヤーは残り20-30%に固有の機能を盛り込むことができるプラットフォームとなることを目標に開発され、公開されています。

 

RoX Whitebox

 

ルネサスでは、お客様のR-Carソフトウェア開発を加速させるためのプラットフォームとして、RoX(R-Car Open Access)プラットフォーム(RoX Whitebox)を提供しています。

加えて、2025年12月より、第5世代R-CarX5H向けにRoX Whiteboxを拡充いたしました。

Yocto Linuxベースのソフトウェア開発もこれらを利用して開発が可能です。

 

第5世代R-Car SoC向け開発プラットフォーム「R-Car Open Access(RoX)」を拡充し、SDV開発を加速

 

 

ルネサスの車載SoC

 

さいごに、ルネサスでは自動運転、ADAS、コックピット等の幅広いアプリケーションに向けたSoCとして、
「R-Carファミリ」をラインナップしております。

お客様向けの評価ボード等もご準備しておりますので是非弊社までお問い合せ下さい。

R-Car自動車用SoC (System-on-Chip) | Renesas ルネサス

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