- 公開日:2026年03月05日
【ルネサス社】FGICで何ができるようになるのか ― 電池を“使える情報”として扱うためのIC ―
- ライター:Kita
- バッテリー管理IC
はじめに
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本記事を読むことで、次のことが分かります。
・FGIC(Fuel Gauge IC)は従来の電池保護ICと何が違うのか
・電池残量や残り時間が「なぜ」分かるようになるのか
・FGICの情報を使うと、製品の振る舞いをどう設計できるのか
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バッテリーを使用する機器では、
「どれくらい残っているのか」「あとどれくらい使えるのか」といった
電池の状態把握が製品価値に直結します。
FGIC(Fuel Gauge IC)は、単に電池電圧を監視するICではなく、
電池の状態を“情報”としてシステムに提供するためのICです。
FGICはBMSの中核となる「状態把握エンジン」であり、
BMSはFGICの情報を活用して製品全体を安全かつ賢く動かす仕組み、と考えると理解しやすくなります。
本記事では、
FGICが持つ特徴的な機能を
「それによって何ができるようになるのか」
という視点で整理します。
※補足
―FGIC(Fuel Gauge IC)―
電池の残量・劣化・使用可能時間などを推定し、数値として出力する中核IC
―BMS(Battery Management System)―
FGICが出力する情報を使って、保護・制御・通信などを行うシステム全体を指す

図1. FGICによる電池状態情報
電池管理ICは「保護できれば十分」ではないのか?
バッテリーを使った製品の設計において、
次のような疑問を持ったことはないでしょうか。
「電池管理ICは、過充電や過放電を防ぐ“保護”ができれば十分なのでは?」
「そこまで高度なICを使う必要があるのだろうか?」
従来の電池管理では、安全に使える範囲を守ることが最優先でした。
- 電圧が上がりすぎたら止める
- 電圧が下がりすぎたら止める
- 温度が異常なら止める
これにより、バッテリーを壊さずに使うことはできます。

図2.従来の電池保護ICの役割
「守る」だけでは残る課題
一方で、
保護中心の電池管理では次のような課題が残ります。
- まだ使えそうなのに突然止まる
- 残量表示が信用しづらい
- ユーザーが次に何をすればよいか分からない
つまり、安全ではあるが、使いにくい 状態です。
近年のバッテリー搭載機器では、単に壊れなければよい、という考え方から、
- どれだけ使い切れるか
- どれだけ予測できるか
- どれだけ安心して使えるか
といった 使い勝手や体験 が重視されるようになっています。

図3.保護中心の電池管理で生じる課題
電池を「情報」として扱うという考え方
ここで重要になるのが、
電池の状態をどこまで把握できているか です。
電圧が分かることと、電池の状態が分かることは同じではありません。
- 同じ電圧でも使える量は異なる
- 使用条件や温度で挙動が変わる
- 劣化した電池は見かけの電圧が保たれることもある
このため、
電圧監視だけでは 「今どれくらい使えるのか」を判断することは困難です。
FGICは、
電池を単なる電源ではなく
状態を把握すべき“情報源”として扱うためのICです。

図4. 電池を“電源”ではなく“情報源”として扱うFGICの考え方
FGICを使うと、何ができるようになるのか
◆残量が「数値」で分かる
FGICを使うことで、バッテリーの残量を数値として扱えるようになります。
これは、クーロン積算やOCV特性、温度補正モデルなどを組み合わせることで、
単純な電圧監視では不可能な残量推定を行っています。
- 残量を○%で表示できる
- バッテリーの減り方が安定する
- 残量が急激に変化する違和感を減らせる
製品側は、
「残量が一定以下になったら制御を切り替える」といった 明確な判断基準 を持てます。
「FGICの推定方式を詳しく知りたい方はこちら」
リンク:リチウムイオンバッテリー(Li-ionバッテリー)の残量予測方法の基礎知識 – 半導体事業 – マクニカ

図5.バッテリー残量を数値化するFGICの情報出力
◆「あとどれくらい使えるか」を時間で把握できる
FGICは、残量だけでなく 残り使用時間の目安 を提供できます。
- あと○分使えるかが分かる
- 作業を続けるか止めるか判断できる
- 充電のタイミングを考えやすくなる
残量%よりも 「あと1時間使える」という情報の方が、ユーザーにとっては直感的です。
◆バッテリーの劣化状態が分かる
FGICでは、今の残量だけでなく バッテリーの劣化状態 も把握できます。
- 電池がどれくらい元気か
- 交換の目安
- 劣化に応じた使い方
劣化状態が分かることで、「まだ使えるのか/交換すべきか」を 感覚ではなく、状態に基づいて判断できるようになります。
◆状態に応じて、動作の仕方を変えられる
FGICの情報を使うことで、製品の振る舞いを 段階的に制御 できます。
- 残量が十分 → 通常動作
- 少なくなってきた → 出力を抑える
- さらに減った → 機能を制限
- 限界 → 安全に停止
突然電源が落ちるのではなく、「そろそろ終わり」を予測できる挙動 を実現できます。

図6.電池状態に応じた製品動作制御
FGICの効果が分かりやすい製品とは
◆使用時間が重要な製品
例:ポータブル電源、業務用機器
ポータブル電源や業務用機器など、使用時間そのものが価値になる製品では、
- あとどれくらい使えるか
- 作業を最後まで続けられるか
を事前に判断できることが重要です。
FGICによって、「使える/使えない」を予測できる製品になります。
◆突然止まってほしくない製品
例:掃除機、ロボット、電動工具
掃除機やロボット、電動工具など、
動作中に電源が落ちると困る製品では、
- 徐々に出力を下げる
- 注意を促しながら動作を続ける
- 最後は安全に停止する
といった 自然な止まり方 が求められます。
FGICは、こうした振る舞いを設計するための情報を提供します。
◆分かりやすい表示が求められる製品
例:電動工具、ハンディ端末
ユーザーが電池状態を見て判断する製品では、
- 今どういう状態なのか
- 次に何をすればよいのか
が直感的に分かることが重要です。
FGICを使うことで、行動につながる表示 を実現しやすくなります。
FGICは、セル数や用途に応じて適した製品を選ぶことが重要です。

図7. FGIC使用例のイメージ
ルネサス社のFGICラインアップ
例えばルネサス社では、
2~4セル向けの RAJ240055、
3~10セル向けの RAJ240100 などのFGICが用意されており、
ここまでに挙げたような製品に幅広く対応できます。
その他製品および、詳細な機能や評価方法については、
別記事で紹介していますので、用途に応じて参照してください。
「FGICのラインナップはこちら」
リンク先:https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/manufacturers/renesas/products/145234/
「RAJ240100を使った評価例はこちら」
リンク先:ルネサス社FGIC”RAJ240100″の動作確認をしてみた – 半導体事業 – マクニカ
リンク先:https://emb.macnica.co.jp/articles/23398/
「BMSとしてまとめて導入したい方はこちら」
リンク先:https://emb.macnica.co.jp/articles/24108/
まとめ
FGICは、電池を単に守るためのICではありません。
- 残量が分かる
- 残り時間が分かる
- 劣化状態が分かる
- 状態に応じた制御ができる
こうした情報を通じて、電池を「判断できる存在」へと変えるICです。
バッテリーを使った製品において、
FGICは使い切るため、安心して使うための土台となるICと言えるでしょう。
FGICは、電池を使った製品で
・残量表示に不満がある
・突然止まる挙動を改善したい
・BMSを導入したいが難しそうと感じている
といった課題を持つ設計者にとって、有効な選択肢となります。

