- 公開日:2026年03月06日
- | 更新日:2026年03月19日
はじめてでもわかる!車載マイコンの割り込みコントローラー入門
- ライター:Sota Kurihara
- マイコン
はじめに
近年、自動車の電装アーキテクチャは大きく変化しており、車両機能をソフトウェアで定義する”SDV”や、ZoneECUとして複数のECU機能を集約し、配線の簡素化と効率化を実現するゾーナルアーキテクチャが注目されています。
この変化によって、一つのECUがより多くの機能を担当するようになりますが、システムはより複雑化となります。また、センサデータやCAN、LIN、Ethernet通信などの処理すべきイベント頻度が高まり、処理競合の考慮/リアルタイム性の確保が重要になってきました。こうした増大する処理負荷に対応する為に、リアルタイム応答を保証する割り込み機構が必要となります。
今回の記事では車載ECU用途に幅広く用いられるRenesasの車載マイコン:RH850シリーズの機能を例に、割り込み処理を実現するための内臓周辺機能であるInterrupt Controllerについて詳しく紹介していきます。
割り込み処理の基礎
ポーリング処理
まずは、割り込みの説明をする時、よく比較されがちなポーリング処理の説明になります。割り込みもポーリングも、外部からのイベントや信号を処理するための方法ですが、少しだけ動作が異なります。
以下は、ポーリング処理での入出力処理の簡易フローになります。

CPUから周辺機能へ入出力状態の定期的な確認処理を実行し、入出力が確認できたら、決められたデータの処理を行います。
従って、実装は比較的容易且つシンプルですが、
・何度も周辺機能へ確認しに行く度、CPUに負荷がかかってしまう
・確認するタイミングによって、応答性にバラツキが生まれてしまう
・確認する対象が多いと、それらを順番に確認していくことはより困難になる
といった課題があります。
割り込み処理
一方こちらは、割り込みを使用した際の入出力処理の簡易フローになります。

使用している周辺機能に何等かのフラグが発生すると、CPUに割り込み要求を送ります。その後、割り込み要求がある時のみ、データ処理を実行するという流れになります。
このように割り込み機能を使用することで、
・必要なタイミングでのみ反応する為、CPUは無駄な確認(処理)が必要ない
・イベントが起きた瞬間に割り込み要求が発生する為、応答性に優れている
・複数のイベントに対して、複数の割り込み機能を使い分けできる
というメリットがあり、時間を擁する事なく、効率的に作業を進めることができます。
RH850の割り込みの種類
まず、割り込みの種類を語る上では例外の説明が必要になります。例外とはCPU内でプログラム実行中に起こる予期しないエラーや特別な状況で発生する機能をさします。その、例外要因にも様々な種類があり、それぞれ発生要因、優先レベル、例外ハンドラ参照方式が決まっています。
Renesasの車載MCU:RH850において割り込みは例外要因の一つであり、中でもFE レベルノンマスカブル割り込み(FENMI)、FE レベルマスカブル割り込み(FEINT)、 EI レベルマスカブル割り込み(EIINT)があります。
上記割り込みの違いですが、以下はRH850/F1KM-S1における、割り込み機能の比較表になります。

割り込みの優先レベルは、FENMI > FEINT > EIINT となっています。FENMIは緊急性の高い機能が該当し、最も優先度が高い割り込みで、割り込みを停止させることができない割り込みです。FEINTは次に優先度が高い割り込みで緊急度の高い機能が該当するものの割り込みコントローラー側での制御が可能な割り込みです。EIINTは優先度がこの中で一番低いものの最も一般的で、通信・タイマなど多くの周辺機能が利用する割り込みで、RH850/F1KM-S1では内部の割り込みチャネルがトータルで358チャネルも用意されているほど、多様な用途で利用されます。
そのEIINTで制御できる割り込みを、より簡単にしたブロック図を以下に示します。

まず一般的な割り込みの発生要因としては、大きく分けて外部割り込みと内部割り込みがあります。
外部割込みとは、外部割り込み端子に所定の信号が入力されることで発生する割り込みです。また、内部割り込みとは、マイコンに内蔵される周辺機能からの要因による割り込みのことをいい、「周辺機能割り込み」とも呼ばれます。
次に、割り込み要因が発生した後の流れですが、割り込みコントローラーと呼ばれる部分が色々な役割を担っています。ここでは、各割り込み要因ごとの割り込みの許可/禁止の設定、割り込み優先レベルの管理、割り込み要因の検出、発生した割り込み要求のCPUへの通知等を行っています。CPUには割り込みを許可/禁止するためのビットが用意されており、CPUを割り込み許可状態としたり禁止状態にしたりできます。
こうした一連の汎用的な割り込みが割り込みコントローラーのEIINTで制御されます。
RH850/F1KM-S1では0~357の各割り込みチャネルに、それぞれタイマや汎用通信IFなど様々な割り込み要因が割り振られています。そして、EIINTの割り込みチャネル数は一般的にマイコンのスペックが上がるにつれてチャネル数も増え、より多くの機能の制御に特化されることとなります。
RH850での割り込みの設定例
以下はRH850/F1KM-S1のEIレベルマスカブル割り込み(EIINT)の構成になります。

RH850/F1KM-S1のEIINTではINTC1とINTC2の2つの割り込みコントローラーで制御されます。そして、カスケード接続によって合計358chの割り込み要求信号をサポートしています。割り込み要求信号が割り込みコントローラーに入力されると、EIレベル割り込み制御レジスタの割り込み要求フラグが立ちます。そして、EIレベル割り込み制御レジスタの割り込みマスクフラグの許可/禁止によって、割り込み要求を受け付けるかどうか決まります。
割り込み要求が受け付けられると優先度判定に移ります。EIINTは、EIレベル割り込み制御レジスタでチャネル毎に優先度を設定することが出来ます。この時、受付中の割り込み要求の優先度は、ISPR(受け付け中割り込み優先度レジスタ)で管理されています。優先度判定では、受付中の割り込み優先度(ISPRレジスタ:ビット 0~15)と要求されている割り込みの優先度(ICxxxレジスタ:ビット 0~3)を比較し、要求している割り込み優先度の値が小さい時、CPUに割り込み要求を通知します。
CPUが割り込み要求の通知を受けると、CPU内部レジスタであるPSW(プログラムステータスワード)の割り込み許可/禁止の状態によって、割り込み要求を受け付けるかどうかが決まります。なお各レジスタの詳細機能は対象デバイスのハードウェアユーザーズマニュアルをご確認ください。
今回の説明で主に取り上げるのは、EIINTを使用する際に、最も重要な設定となるEIレベル割り込み制御レジスタです。EIレベル割り込み制御レジスタとは、EI レベルマスカブル割り込み(INT)のチャネルごとに設けられ、各チャネルの制御条件を設定可能にするレジスタになります。
ここから、このレジスタで設定が可能な割り込み制御における特筆すべき設定を2つ説明します。
割り込み優先度設定
一つ目は割り込み優先度設定になります。この設定では最大0~最低15の優先度を設定可能とし、数字の値が小さいほど、同時に複数の割り込みが発生した際の制御における優先順位が上となります。
例として仮に割り込み優先度0と10の割り込みが同時に発生したとすると、優先度:0の割り込みを実行後、優先度:10の割り込みを実行するといった流れになります。

このように複数の処理の競合を防ぎ、必要性の高い処理をすぐさま実行可能とするために優先度を設定する必要があります。
EIレベル割り込み制御方式設定(直接ベクタ/テーブル参照方式)
二つ目はEIレベル割り込みの制御方式の設定です。
EIINTではCPUが割り込み要求を受け付けた後、どのように割り込み処理に分岐するかを設定でき、要因毎に2つの分岐方法を選択出来ます。その一つが直接ベクタ方式、もう一つがテーブル参照方式です。
まず直接ベクタ(直接分岐)方式の説明となります。
直接ベクタ方式とは、優先度数分のベクタテーブルを持ち、このベクタテーブルにはハンドラへの分岐命令を配置します。より詳しく説明するとCPU内蔵の基本システムレジスタ(RBASEレジスタ、またはEBASEレジスタ)で示すベースアドレスと、例外/割り込み毎のオフセットを加算して算出したアドレスから、ハンドラへの分岐命令を読み出す方式になります。簡単に説明すると直接分岐方式は割り込みの0~15の優先度別に実行したい処理を設定する割り込み方式というイメージになります。
以下は直接ベクタ方式の割り込み処理のイメージ図になります。例として今回は、優先度15に設定した割り込みが発生したとします。

直接ベクタ方式に設定した際のプログラムの挙動として、まずは①発生した優先度に応じたハンドラアドレスにジャンプします。ここではjr32 _intp15が該当します。次に②割り込みのプログラムを実行するため、優先度15のプログラム、つまりintp15のコードを実行します。このプログラムが実行されたあとは、③元のプログラムの処理へと戻ります。
次にテーブル参照方式の説明になります。
テーブル参照方式とは、要因数分のベクタテーブルを持ち、このベクタテーブルにはハンドラアドレスを配置し、CPU内蔵の基本システムレジスタ(INTBPレジスタ)で示すベースアドレスと、割り込みチャネル番号を用いて算出したアドレスから、ハンドラアドレスを読み出す方式です。
先ほどの直接ベクタ方式では、複数の同一優先度を示す割り込みチャネルは同じ割り込みハンドラへ分岐させましたが、テーブル参照方式では、割り込みチャネル1つ1つに対して異なる割り込みハンドラへ分岐させることが出来ます。
以下はテーブル参照方式の割り込み処理イメージになります。今回は優先度ではなく、タイマやCAN、SPIなどとある要因の割り込みが発生したとします。

その際、プログラムは優先度のハンドラアドレスにジャンプするのではなく、①発生した要因に応じたハンドラアドレスのワードデータを読みだします。今回は例にベクタテーブルの500番地のアドレスを示すこととします。その後②500番地のワードデータを取得し、このアドレスにプログラムカウンタ(PC)を遷移、該当領域のコードを実行して、割り込み処理が完了します。最後③は直接分岐方式と同様に元のプログラム処理へと戻り、次のプログラムを実行します。
このように、テーブル参照方式では発生した要因に応じてテーブルにアドレスを書き込む方式で、割り込み機構の拡張性が非常に高い方式となっております。
最後に直接分岐方式とテーブル参照方式の特徴を比較を以下に示します。

直接分岐方式の場合、優先度0~15での処理に限定されるため、実装がシンプル且つ、処理速度も速くなります。ただしアドレスは優先度に固定されるため、割り込み数が増えるとシステムの管理が非常に困難となります。
一方でテーブル参照方式は、割り込みチャネル数分のテーブルにアドレスを書き込む方式で、拡張性が高くシステムの効率化が図りやすい反面、実装が複雑且つ、直接分岐方式と比較すると処理速度がやや遅くなるというデメリットがあります。
もちろんどちらの制御方式でも割り込み機能自体は活用可能ですが、ここで大事になってくるのは、開発するシステムを考慮して使用する割り込み制御方式を選択するという事です。
例えばZoneECUなど制御機能が複雑なECUではテーブル参照方式での管理が望ましいですが、簡素なアクチュエータなど複雑な機能を擁さないECUにおいては直接分岐方式を選択することで、高速な処理に対応が可能となります。
実際に開発を行う立場になった際は、用途を意識して割り込みを実装することでより効率性の高い割り込み機構を実現することが可能になると言えます。
RH850シリーズ別EIINT割り込みチャネル数比較
まずはRenesas の車載向けマイコン RH850シリーズ全体のロードマップは以下に示します。RH850シリーズは、車載用途に求められる信頼性・リアルタイム性・安全性に対応しており、車載ECUの幅広い用途で様々なお客様にご採用頂いております。また本製品は世代を重ねるごとに処理性能や周辺機能、セキュリティ機能が強化しております。特に最新のRH850/U2xシリーズは、Zone ECU や高機能ボディ制御、さらには次世代の車載電子アーキテクチャに向けて設計されており、より大規模で複雑なシステムを支えるポジションにあります。

索引:28nm車載用マイコンRH850ファミリを拡充し、ボディ制御やシャシー、セーフティ用途向け「RH850/U2C」を発売
続いて、RH850シリーズの用途別の位置づけと、デバイスごとの割り込みチャネル数の違いについて、以下に示します。

索引:Renesas RH850 車載用マイクロコントローラー(MCU)

RH850/F1LやF1KなどRH850 Gen1は主に単体ECU向けに利用され、一方で RH850/U2AやU2B、U2CのRH850 Gen2はZone ECU といった、より高度で複数機能を統合する領域で使われています。注目すべき点は 割り込みチャネル数の増加 です。RH850ではF1Lの288チャネルから、F1K/F1KM‑S1の358チャネル、さらにU2Cは630チャネル、U2Aは 768チャネル、U2Bでは1,024 チャネルと、世代が進むにつれて大幅に増えていることがわかります。これは車載システムの高度化に伴い、扱うセンサや通信インターフェースが増え、より多くの割り込み要因に対応する必要があり、マイコンの高機能化に比例して割り込みチャネル数も増加するということを示しています。
まとめ
- Zone、SDV化で増大する処理負荷に対応するにはリアルタイム応答を保証する割り込み機構が必要になります。
- より効率的な割り込みを実現するためには、制御するシステムに応じて、割り込み優先度、制御方式(直接ベクタ/テーブル参照方式)の詳細設定を行う必要があります。
- Renesas RH850シリーズについて、マクニカでは全ラインアップをサポート行っており、デバイス選定の段階からご相談いただける体制を整えています。ぜひ本製品を検討の際には弊社窓口へお問い合わせ頂けますと幸いです。

