• 公開日:2018年11月15日
  • | 更新日:2022年10月14日

新人FAEの「人感リモートレリーズ」作成への道(1)

はじめに

はじめまして。2018年度に富士エレクトロニクスのFAEとして入社しました「やっとも」です。今回は新人研修の山場である「製作実習」について、私の体験とともに皆様にご紹介します。
私は入社してから約3ヶ月間、研修を通して半導体について学んできました。製作実習は、これまでの研修の締めくくりとして、マイコンを使って電子工作をします。
しかし、電子工作といえば中学校の技術家庭の時間でラジオや電源タップを作った程度で、プログラミングに関しては全くやっていません。そして与えられた期間はわずか1ヶ月・・・。果たして、無事に製作実習を終えることができるのか、、、険しい道を駆け抜けていきます!

「人感リモートレリーズ」

私の家では花壇を野良猫に荒らされて困っていました。また、近年の防犯対策ブーム?に習って、そこで、庭を監視するものが欲しいと思っていました。そこで考案したのが「人感リモートレリーズ」です。
リモートレリーズとは、カメラを遠隔で操作するカメラアクセサリで、フォーカスとシャッターを操作することが出来ます。カメラに直接触れずにシャッターを操作できるので、遠隔操作や、手ブレの無い撮影をすることができます。これを人感センサと組み合わせることで、無人で自動的にカメラを操作してくれる監視用装置を作ろうと考えました。

図:「リモートレリーズ」

リモートレリーズの仕組み

リモートレリーズの中身は一体どうなっているのでしょうか?
リモートレリーズはボタンの押し込みが二段階になっており、シャッターとフォーカスそれぞれをグランドとショートさせることでカメラを操作しています。

図:リモートレリーズの仕組み

意外と単純な仕組みで、これ自体はすぐに再現できそうです。

仕様を決める

まず、製品の仕様を考えていきます。こんな製品にしたい、便利だなというイメージを膨らませて、、、
人感リモートレリーズに必要な仕様をまとめてみました。

  1. 人感センサで人の侵入を感知
  2. センサの感知した値と人を感知した回数をモニタに表示
  3. センサでフォーカスとシャッターを操作
  4. 設置箇所がコンセントに依存しない電池駆動

かなりざっくりしていますが、大きな流れとしてはこんな感じです。

今回使用するボードについて

図:Arduino互換機「Maruduino UNO R3」

ここで、製品の要であるボードを選びます。ボードには「マイコン」とマイコンを動かすための回路が搭載されています。マイコンは製品を動かす頭脳となる部分です。
数あるボードの中から今回は、「Maruduino」を選びました。「Arduino」の互換品で、電子部品販売を行っているマルツエレック製のものです。
Arduinoのプログラミングは「Arduino言語」で行い、通常のC言語より少ないコードでプログラミングが可能です。また、Arduinoを使った電子工作の記事がサンプルプログラムと共にWeb上で多く公開されており、部品さえあれば誰にでも同じものを作ることが可能です。そのため、電子工作の入門として一般の方にも広く知られています。
私も手軽で便利なArduinoを用いて製作を行おうと思いましたが、値段が3000円程と少々お高めです。また、既に多くの人に記事にされているため、せっかくやるならあまり記事になっていないもので製作を行おうと思いました。そこで、マルツエレックのサイトで見つけたMaruduinoを使うことにしました。

(Maruduino 主な仕様)

・搭載CPU:ATMEGA328P-PU
・ATMEGA16U2:USB-シリアル変換
・入力電源:5~10V
・5Vピン出力電流:500mA
・3.3Vピン出力電流:50mA
・ディジタルI/Oピン:14本(内6本はPWM出力可能)
・アナログ入力ピン:6本
・フラッシュメモリ:32KB
・SRAM:2KB
・EEPROM:1KB
・クロック周波数:16MHz

「ブロック図」で形にしていく

ブロック図とは

主要な構成部品や機能をブロックで表し、線でつなぐことでブロック間の関係を示したものです。ブロック図を書くと、仕様よりも更に製品のイメージがわかりやすくなりました。また、各部品のデータシートを読んで、接続する部分や対応する電圧についても書く必要があるので、部品や製品について深く考えることが出来ました。
そして、これが今回作成する「人感リモートレリーズ」の全貌です!
今回のボードは5Vの電源入力ピン(Vdd)があります。ここに乾電池×3で4.5Vで電気を流します。また、各部品にも電源が必要です。どれも4.5Vで駆動ができるものを選んだので、乾電池からそのまま入れています。
LCDには赤外線センサの感知した値を表示します。文字盤の明るさを調節できるように可変抵抗を付けています。
センサが人を感知したときには、マイコンからカメラへ信号を送ります。信号はマイコンからの電圧ではなく間にフォトカプラを入れ、電池から電圧を入れるようにしました。カメラにはΦ2.5mmのステレオプラグを差し込みます。
これでカメラが操作できるはずです!!

図:ブロック図

さらに、部品表「BOMリスト」と回路図を作成しました。ここまで来ると早く手を動かして、作成したくなってきました!

図:BOMリスト

図:回路図

今回は「人感リモートレリーズ」を考案し、製作に取り掛かる準備が整いました。序盤にして希望が見えてきました!
第2話は赤外線センサの動作を行います。この調子で駆け抜けていきます!