- 公開日:2019年01月23日
- | 更新日:2022年10月27日
基板が動かない!測定器も無い!そんな時には
- ライター:イシジマ
- その他
すぐに波形を確認したい
みなさん、自分で基板を設計し、完成した際には実際に動くかどうか確認するという評価作業をするのではないでしょうか。
評価内容は基板によって違いますし評価方法も様々かと思いますが、間違いなく言えることは、何かしら測定器を使うということだと思います。簡易的なショートチェックや電圧チェックにはテスターを使用したり、信号ライン等の波形を確認する際にはオシロスコープを使用したりと、様々な場面でこのような測定器を使う場面が出てくるのではないでしょうか。
我が社にも上に紹介したような測定器がいくつかありますが、ものによっては高額ということもあり数はそこまで多くありません。そのため、いろいろな部署の技術者が使用する関係で都合良く好きなタイミングで使えるという訳でもないのが我々の評価事情です。
このように、手元に測定器がないけどすぐに評価を進めなきゃならない!といった場合、みなさんでしたらどうしているでしょうか? 私たちはそういった状況になりそうな場合には外部の試験機関を利用して評価や試験を行っています。ということで、今回は私たちが利用している外部機関での試験について紹介いたします。
どこで試験や測定を行う?
では、実際にどのような機関で試験を行っているかというと、私たちの場合はお台場にある「東京都立産業技術研究センター」(以下、都産技研)を利用させていただくことが多いです。こちらの施設には測定器の貸出以外にも、私たちの会社ではなかなか持てないような大型の試験設備も利用することができます。
私自身も2,3年ほど前に初めて利用させていただきました。その時は基板の温度試験のため、恒温槽を利用し、どれくらいの温度範囲で動作ができるのかを確認した経験があります。その他にもお客様から基板上にある各規格のコンプライアンス試験をして欲しい!と頼まれることもしばしばありまして、そういった際にも都産技研さんの試験設備が役に立ります。
試験設備を利用するためには?
上で紹介した都産技研さんで試験を行うためには、まず使いたい測定器や設備の確認と予約が必要となります。
私が以前利用した恒温槽のような環境試験設備に関しては都産技研さんのHPで予約が可能です。HPには設備の使用料金も記載されていますので、事前に金額情報を知ることもできます。
その他の測定器については、HP上の「技術相談受付フォーム」での問合せ、または使用したい測定器を保有している部署へ直接電話することにより予約が可能です。私は手っ取り早いので毎回電話で予約しています。
試験場に行ってみた
こちらの記事を作成するにあたり、丁度良いタイミングで評価したい基板がありましたので、それを持って実際に都産技研さんに行ってきました。
評価したい内容はUSBのアイパターン波形の確認です。アイパターン波形の確認=アイパターン測定と呼んだりしますが、こちらはUSB,Ethernet,HDMIなどの高速通信IFの信号品質を高性能(高速対応の)オシロスコープを使用して確認する試験となります。
ちなみに試験に使用する測定器や設備はこのような感じです。
実際に測定してみた
今回USBのアイパターン測定をしたのは自社で基板開発を行ったオリジナルボードです。
Texas Instruments製のCPU、AM335xが搭載されたボードとAM437xが搭載されたボードの2種類となります。USB自体は既に動作確認済みですが、信号品質面でPASSできているのかは確認できていませんでしたので、都産技研さんにて信号ラインの波形を観測してみました。
セッティング方法は全て機材を保有している部署の担当の方に教えてもらえますので、初めて利用する方でも問題ありません。また、セッティングし終わった後に機材を動かし、測定してくれるのも担当者さんになります。ですので、測定器の知識がなくても全くもって問題ありません。
アイパターン測定に必要な機材については下記のとおりです。
- 専用ソフトウェアが入ったPC
- アイパターン測定用治具基板
- USBケーブル
- オシロスコープ
- アイパターンを確認したい基板 ←これだけ持っていけばOK
基本的には測定したい基板のみの持参で問題ないですが、基板上のUSB IFがTypeA以外の場合は変換用のコネクタを準備する必要があります。例えば、miniUSB–TypeAやmicroUSB–TypeAなど。
実際に測定した結果がこちらです。
紫色のラインがUSBの信号ラインになるのですが、こちらが真ん中にあるひし形マークと上下にある赤ラインにかぶってなければ、品質的に問題なしということになります。つまり我々のオリジナルボードは信号品質的にも問題なしということがわかりました。(安心しました…)
ちなみにNG例がこちら。
信号のかぶり具合がひどいですね…。ちなみにですが、このような信号の揺れや揺らぎをジッターと呼びます。実はこちら私たちが開発したボードでして、評価の際にPCとボードをUSBケーブルでつないでみたのですが、なかなかボードを認識してくれず、試しにアイパターンを測定してみようということで実施してみたらこの有様です。その後、基板上の部品を見直し、なんとか信号品質は改善することができました。
私たちは部品見直しで何とかしましたが、他の改善方法としてはアートワーク(パターン設計)の見直しができるかと思います。例えばですが、NGボードではUSBのデータライン±が等長ではなかったり、異様に長くパターンが引かれていたり、電源プレーンの直下にあったりなどが想定されます。
まとめ
今回は外部の試験場を利用し基板の評価をしてみる、という内容をテーマに紹介いたしました。
こちらの記事ではアイパターン測定を例に紹介させていただきましたが、他にも様々な試験を行うことができますし、それぞれの試験場に利用方法を教えてくれる方がいますので初心者の方でも安心です。趣味で基板を作成している方や、会社で使える測定器があまりないという方々にはちょうど良いのではないでしょうか。
都産技研さん以外にも評価サポートをしてくれる施設はたくさんありますので、私たちのように評価で困っている方がいましたら、ぜひ試験機関を利用してみてください。