- 公開日:2019年03月29日
- | 更新日:2022年11月30日
人数カウントも可能なToFセンサーの原理とリファレンス・デザインの紹介
- ライター:Rio
- センサー
はじめに
ToF(Time of Flight)というものをご存知でしょうか。
ToF技術は、物体との距離を測定する技術の1つで、有名な家庭用ゲーム機のコントローラに使用されて一時期大変有名になりました。
本記事ではToFの距離測定する仕組みと、特定のエリアにいる人数を高分解能かつ高精度でカウント可能なTIのリファレンス・デザインについて紹介したいと思います。
ToFの仕組み
ToF、Time of Flightはその名の通り、飛行時間です。ToFは光を発光して、その発光した光が物体に反射して受信するまでの時間、つまり光の飛行時間を測定しています。
これに光の速さを併せることで距離を算出することができます。
ただ、単純な光では太陽光や照明の光などとの区別ができません。ToFセンサーは光の発光の仕方に人間の目には分からないくらいの変調をかけ、これにより発光した光と外光との区別を行っています。
ToFにはどんなメリットがある?
距離測定の方法はToF以外にもいくつか方法があります。たとえば、ToFセンサーの利用が見込まれる三次元計測ではステレオカメラやストラクチャードライトといった方式があります。
まずはステレオカメラとストラクチャードライトの2つの方式について、簡単に説明します。
ステレオカメラ
ステレオカメラは2つのカメラを平行に並べて同時に撮影し、画像処理を行うことで、撮影した物体の奥行き情報を取得するものです。
この方式は装置の構成が単純化しやすく、コストも抑えることができるメリットがありますが、奥行きの精度が悪いという欠点があります。
ストラクチャードライト
ストラクチャードライトはストライプ、または、格子状のパターンを物体に投影し、それを別の角度のカメラで撮影します。投影されたパターンは物体の形によってゆがむため、そのゆがみ方から物体の形や奥行きを求めることができます。
この方式は奥行きの精度がとてもよいため、工場の製造工程で製品の形状チェックを行ったりするのに非常に向いています。一方、パターンを投影する装置と撮影するカメラが必要なので、コスト高になるという欠点があります。
2つの方式とToFとの比較
ToFにはストラクチャードライトほどではないものの奥行き精度が高く、暗い環境でも問題なく動作可能という特徴があります。他にも装置構成の単純さ、コストなどで他の方式に比べてメリットが多いです。
以下の表にこれら2つの方式とToFとの比較をまとめましたのでご覧ください。
ToFセンサーのリファレンス・デザイン
TIではToFイメージ・センサーと人物検出、人数のカウント、追跡アルゴリズムを組み合わせた以下のリファレンス・デザインが用意されています。
人数計測、デマンド制御換気用、3D 飛行時間(ToF)使用、リファレンス・デザイン:TIDA-00750
では、このリファレンス・デザインの構成を確認してみましょう。
以下がこのリファレンス・デザインのブロック図です。
このリファレンス・デザインはOPT8241-CDK-EVMと3rdパーティー製のRicoボードの2つの基板で構成されています。
OPT8241-CDK-EVMには、ToFセンサー(OPT8241)とToFコントローラ(OPT9221)が使用されています。
ToFセンサーは、内部ピクセル・アレイと外部イルミネーションドライバ回路に数十MHzの変調信号を出力できます。変調された近赤外(NIR)光が、イルミネーション基板からレーザダイオードを介して放射され、対象物が光を反射し、レンズを通ってToFセンサー内に投影されます。
放射した光と受信した光との間の位相差がデジタル化され、ToFコントローラに出力されます。
次に、ToFコントローラはその位相差データから各ピクセルの距離を算出して出力します。OPT8241-CDK-EVMは、USB2.0インターフェイスを介してホストコントローラと接続することができます。リファレンス・デザインではTIのプロセッサであるAM437xが搭載されたRicoボードを用いています。
このようなプロセッサを用いることで、物体との距離測定だけではなく人物検出や人数のカウントなど、さらに高度な処理を行うことが可能です。
デモ動画
TIではToFのデモ動画を公開しており、人物検出や人数のカウント、ジェスチャー認識など様々な応用例が示されています。
まとめ
ToFには他の距離測定方式に比べ、暗い環境でも問題なく動作可能、精度が高いなどの大きなメリットがあり、応用次第では距離の測定だけではなく、人物の検出や人数のカウント、ジェスチャー認識など幅広い利用用途があります。
TIにはすぐに性能を評価することが可能な評価ボードやリファレンス・デザインが用意されており、検討、導入しやすい環境が整っています。
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