- 公開日:2019年03月29日
- | 更新日:2024年03月14日
初心者でもわかるDLPの原理と応用例の紹介
- ライター:UNA
- その他
はじめに
世界初のDLPプロジェクタが発表されてから20年あまりが経ちました。今ではプロジェクタに限らず、デジタルシネマや3Dプリンタ、分光器の分野などでみなさんもDLPという言葉をよく耳にするようになってきたのではないでしょうか。
今回はこのDLPの仕組みと応用例について紹介していきたいと思います。
DLPとは?
DLPとは、Digital Light Processingの頭文字をとった言葉で、Texas Instruments(以降、TI)社独自のテクノロジーが使われています。DLPチップには、デジタル・マイクロミラー・デバイス(Digital Micromirror Device、DMD)といわれる反射率の高いアルミニウム製のミラーが最大で数百万個敷き詰められていて、このミラーの傾きと光源の制御によってさまざまな映像の投影を可能としています。
DLPチップの構造
DLPチップにはDMDという極小のミラーがアレイ状に並べられていて、各ミラーの1つ1つが独立動作し、ミラーの傾きをON状態と、OFF状態の2つの状態に切り替えることができます。以下はDLPチップの表面を拡大撮影した写真で、ひし形の形をした1つ1つがDMDです。
ミラーの傾きをON/OFFすることによって、投射面に対して光源が照射される部分(明るいピクセル)と、照射されない部分(暗いピクセル)を作り出します。1ミラー=1ピクセルに相当し、超高速でON/OFFを切り替えることができます。最近では、5.4μmピッチのDMDが採用された製品もでてきていてより鮮明な画像投影が可能となっています。また、ミラーはちょうどメモリーデバイスのように”0”と”1”の2進数でON/OFFを表現でき、専用のDMDコントローラチップを用いてON/OFFのパターンやタイミング制御を行っています。
明るさとカラーの表現
明るさは1フレームあたりの各ミラーのON/OFF間隔によって表現されます。ミラーのON期間が長ければ照射面に対する光源の投影時間が長くなるため明るくなり、逆にミラーのOFF期間が長ければ暗くなります。このON/OFF期間はDMDコントローラによって、PWM(Pulse-width Modulation)制御されます。
投影する画像をカラーで表現するには、赤、緑、青の光源を時分割にDMDへ照射することで実現しています。各ミラーは投影したい色がDMD面に照射されているタイミングでONにします。ミラーは1秒間に数千回の割合でON/OFFを切り替えることができるため、人間の目の錯覚(残像効果)によってRGBが合成されたカラー画像に見えます。各LEDの点灯時間と、ミラーのON/OFF時間を組み合わせてさまざまな絵を表現できるというわけです。また、光源にはランプやLEDのほかレーザーを用いることもでき、可視光だけではなく不可視光(紫外線、近赤外線)にも対応しています。
DLPチップと光学エンジン
ここまでで説明してきましたようにDLPチップ自体は光の反射板としての役目を担っており、実際に画像を投影する際には光源と光源を集光させるレンズ(光学エンジン)が必要になります。このDLPチップと光学エンジンが一体となったLightCrafterと呼ばれる評価キットも販売されています。
DLP評価キット:DLP LightCrafter 4500
この評価キットには、DLPチップだけでなくRGBのLEDが実装された光学エンジンも含まれています。DLPチップとしてはDLP4500が搭載されており、解像度は最大でWXGA(912x1140)となっています。ビデオ入力ポートが2つ(mini-HDMI、FPD Link)あり、外部からの映像を入力して投影することが可能です。また、ボード上に実装されているFlashメモリに保存された画像データを投影することもできます。DMDコントローラ(DLPC350)との通信にはUSBまたはI2Cを使用し、PCや外部マイコンから専用のコマンドを送信することによってDLPの制御を行います。
DLPLCR4500EVM
PCのディスプレイ画面を投影
PCの映像出力をHDMI経由で読み込み、DLPにて投影している様子です。
Flashメモリのパターン画像を投影
ボードに実装されているFlashメモリ内に保存されているパターン画像をDLPにて投影している様子です。
DLPを動かしてみよう
DLPを動作させるための専用ファームウェアとGUIツールが提供されています。評価キットとGUIツールがインストールされたPCをUSBで接続するだけで簡単にDLPを動作させることができます。ファームウェアのアップデートや、ユーザー任意のパターン画像を作成し、Flashメモリに保存することもできます。
GUIとファームウェアはこちらからダウンロードできます。
DLPの応用例
DLPによる投影方式は、デジタル処理のため温度変化や経年劣化による影響が極めて少なく、精密な光制御が可能であり、近赤外線から紫外線までの幅広い光源に対応できることから、プロジェクタ用途以外にもさまざまな分野への応用がされています。
ここでプロジェクタ以外の応用例についていくつか紹介します。
3Dマシン・ビジョン
DLPから特定のパターン画像を測定対象物に投影し、それを別の角度のカメラから撮影します。
投影されたパターンは物体の形よってゆがむため、そのゆがみ方から物体の形や奥行きを測定することができます。主に工場の製造工程で製品の形状チェックで利用されています。
3Dプリンタ
3Dプリンタの中でも光造形と言われるタイプのものにDLPが利用されているケースがあります。
このタイプの3Dプリンタは感光性樹脂にDLPから造型するパターンに合わせて紫外線を照射し、断面的に硬化させて造型します。
分光器
物質はさまざまな波長の光に対して独特な応答を示します。分光器は、こうした独特な応答から物質の成分分析などを行うことができます。
下記の技術記事に成分分析を実際に試した模様を掲載していますので、詳しくはこちらをご覧ください。
【IoT】Bluetooth対応DLP NIR分光器で成分分析やってみた
まとめ
DLPの原理と評価キット、DLPの応用例について紹介しました。
DLPの主な利用用途はプロジェクタですが、応用次第では今回紹介した例以外にもさまざまな分野への応用できる可能性があり、アイデア次第ではあらたな市場開拓も期待されている技術です。
Texas Instruments社の製品をお探しの方は、メーカーページもぜひご覧ください。
Texas Instruments社
メーカーページはこちら
関連情報はこちら
※本記事に記載されている会社名、製品名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。