• 公開日:2019年06月07日
  • | 更新日:2022年11月30日
RS232-422-485

RS-232/422/485規格の違いは?シリアル通信と産業用ネットワーク

イーサネット(Ethernet)って速いですよね。

家庭やオフィスのLAN(Local Area Network)で使用されている技術規格はEthernetです。でも自分が大学生の頃はRS-232Cのシリアルポートを使ってISDNの機器をつないでましたよ。もう15年以上も前の話ですね……

ただ産業用分野では、2019年現在でもRS-485規格のシリアル通信が多く使われています。どうしてでしょう?

それは、RS-485規格の特徴が産業用ネットワークに適しているからです。他にもRS-232やRS-422といった規格がありますが、それらの歴史を経てRS-485に至っています。

以下、それぞれの規格についての比較、産業用ネットワークの分野では今でもRS-485が活躍していること、そしてEthernet技術が台頭しつつあることにも触れてみたいと思います。

※追記
最新動向が気になる方は、『産業用ネットワークの種類・シェアの最新情報【RS485はもう古い?】』もあわせてご覧ください。

RS-232, RS-422, RS-485の特徴

一昔前まで、シリアル通信といえばRS-232Cといったように、RS-232Cはいろんな場所で幅広く使われていました。ちなみに、RS-232CとはRecommended Standard 232のVer.Cという意味です。

rs232c-9pin
出展:Wikipedia

ただ、2000年を過ぎて5年10年経った頃には、家庭用PC、オフィス用PCのインターフェースからはシリアルポートやパラレルポートがなくなっていきました。今ではUSBやLANポートが標準装備ですよね。

ただ、産業用分野ではRS-232Cはまだまだ現役です。家庭用PCからシリアルポートが消え去った現在でも、制御機器や計測機器では標準的なインターフェースとして用意されています。産業用分野では昔から安定して動いているものはずーっと使い続けるということが往々にしてあり、これらシリアル通信もその一つと言えます。

RS-232もいまだに使われますが、その後に登場したRS-422, RS-485も広く活躍しています。基本的にはRS-232の弱点を補った規格がRS-422で、RS-422の弱点を補った規格がRS-485と考えて間違いないです。ただし、互換性があるわけではありません。

それぞれの特徴は下記の通りです。

RS-232

  • シングルエンド信号のためノイズに弱い
  • 大振幅電圧(±5~15V)を使うことにより、多少のノイズに影響されない
  • 振幅電圧が大きいので電圧変化に時間がかかり、通信速度を上げられない
  • 長距離の通信には向いておらず、最大ケーブル長は15m程度

RS-422

  • 差動信号のためノイズに強い
  • RS-232より振幅電圧が低い(±2~5V)
  • RS-232より高速に通信可能(規格上の伝送速度は最大10Mbps程度)
  • ノイズに強いので長距離伝送が可能で、規格上の最大通信距離は1.2km

RS-485

  • 差動信号のためノイズに強い
  • RS-422を改良したもので機能の拡充が図られている
  • RS-485は、RS-422におけるマルチドロップ機能の制限に対処
  • 同一のデータライン上で最大32台のデバイスまで利用することが可能
RS-232 RS-422 RS-485
動作モード シングルエンド 差動 差動
ドライバ
レシーバの数
1ドライバ
1レシーバ
1ドライバ
10レシーバ
32ドライバ
32レシーバ
最大通信距離 15 m 1200 m 1200 m
最大伝送速度 160k bps 10M bps 10M bps

 

よくある質問

Q1. UARTとRS-232Cって何が違うの?

混同しがちですが、UARTは集積回路(チップ)を意味しています。Universal Asynchronous Receiver/Transmitterの略語です。それに対して、RS-232Cとはインターフェース仕様のことです。UARTの信号をRS-232CドライバICと組み合わせて外部機器とつなぐ場合が多いため、混同しやすいのだと思います。ちなみにRS-232CドライバICとしては、マキシムのMAX232が有名です。

つまり、UARTはRS-232C専用というわけではありません。外部機器との通信ではなく、例えば基板上の通信にUART同士を直結して用いることも多いです。

Q2. RS-422とRS-485のI/Oを持つデバイスを接続可能ですか?

RS-485は出力線にデータを乗せない状態(トライステート状態)がありますが、RS-422は常にデータを乗せてしまいます。RS-485が出そうとした時、RS-422が出し続けるので信号がぶつかります。信号の衝突を避けるように回路を工夫する必要があります。

産業用ネットワークで活躍するRS-485

ネットワークを利用して、遠隔地でデータの入出力を行う装置や手段として、以前リモートI/Oの紹介をしましたが、ここにもRS-232C/422/485のシリアル通信が使われています。コントローラ(PC、PLC、マイコンボードなど)本体と離れた地点のアナログ入出力、デジタル入出力が可能です。

特にRS-485は同一データライン上に複数の装置を接続可能であり、制御アプリケーションのリアルタイム性を確保することができるため、産業用ネットワークの物理層として最も多く用いられています。

もちろん、Ethernetや無線(Bluetoothなど)といった技術も使われていますが、リアルタイムな処理が重要視されるためRS-485が今でも活躍し続けています。(RS-485は1960年代に開発された規格ですけどね。)

RS-485のマルチドロップ
出展:ステップテクニカ Let’s Try CUnet

 

制御に必要なのはリアルタイム性

10Mbps程度のRS485ベースのフィールドバスと比較すれば、Ethernetの通信速度は100Mbps以上で、より多くのデータを送受信できそうですが、それはすなわちリアルタイム性があると言えるのでしょうか。

リアルタイム性とは「一定時間で必ず通信が実行されること」と考えられます。つまりリアルタイム性があるとは、データの入力から処理を行って結果を出力するまでの応答時間が保証されるということです。5msec毎の通信が求められるなら、5msec経過するタイミングでデータ送受信を行うことが重要視されます。遅延は論外ですが、早すぎてもダメなんです。

RS-485の技術はリアルタイム制御に向いており、RS-485の技術を用いているステップテクニカ製品のリアルタイム性については、『FA装置で重要視される定時性とリアルタイム性とは』で解説しています。

それに対して、オフィスや家庭で使われているEthernetの仕組みは、このリアルタイム性が劣っています。

例えばオフィスのEthernetの場合、どこかのPCが大量のデータ通信を発生させると処理しきれなくなり、通信の遅延やデータ破棄が発生してしまいます。昔はE-mailに大容量のデータを添付して送るとよく止まってましたよね。

FA現場の制御においては、通信データをリアルタイムに届ける必要があるため、Ethernetの仕組みは向いていません。

Ethernetが産業用ネットワークで使われなかった理由

100Mbpsで通信可能といっても、データの更新速度が極端に遅くなったり止まったりする場合は、産業用ネットワークで求められるリアルタイム性は確保できません。Ethernetを産業用ネットワークとして使用するのであれば、Ethernet技術でどのようにリアルタイム性を確保できるかがポイントになります。

一昔前にEthernetがFAの現場で使われていた主な用途は、基幹系情報システムと現場間の通信、あるいはコントローラ間の通信としてでした。しかし、リアルタイム性の観点から、現場機器とコントローラ間のネットワークとしては使用されていなかったようです。

FAの現場ではノイズや周囲温度などの外部環境が、家庭やオフィスに比べて厳しいといった点も理由です。ただ、これらの課題を克服したEthernet系の産業用ネットワークが近年台頭しつつあります。

有名なところでは、EtherCATやEtherNet/IP、CC-Link IEなどがあります。サーボモータのモーション制御や、画像データの送受信など、通信データが大きい箇所はこれらEthernet系ネットワークが得意とするところです。今後はリモートI/OもEthernet系ネットワークでまとめて制御するケースが増えそうです。

まとめ

RS-485を使った産業用ネットワークの代表例はPROFIBUS DP, DeviceNet, CC-Linkでしょうか。これらは1990年代初めから存在しており、そろそろ限界が来ているのでは? というのが世間の見方ですね。ステップテクニカのHLS/CUnetも同時期から存在しています。

そこで、RS-485に代わる次世代の技術としてEthernetが注目されているわけですが、産業用ネットワークの全てがEthernet系ネットワークに置き換わるとも思えません。

RS-485系ネットワークのリアルタイム性はこれからも必要とされるはずで、両者を共存させてシステムを組み上げる技術が今後は重要視されると思われます。

さらに詳細な情報をお求めの方は弊社の問い合わせフォームからお問い合わせください。

お問い合わせはこちらから