• 公開日:2018年02月28日
  • | 更新日:2022年11月21日
LED

LEDドライバーを使うべき6つの理由 ~仕組みや使い方から理解するドライバーの必要性~

  • ライター:William

みなさん、LEDドライバーをお使いでしょうか?

LEDは電気を流せば光る電子部品ではありますが、正しく回路設計しないとLEDの破損や光の明るさが安定しない、製品ごとで明るさが違う・・・といったトラブルを引き起こしかねません。
こういったトラブルを回避するためにLEDドライバーを使用することが最適です。

本記事では、LEDの仕組みから、LEDの回路設計の陥りがちな落とし穴、LEDドライバーを使用すべき理由を解説していきます。

LEDとは?

LED(Light Emitting Diode)はダイオードの一種です。
一般的なダイオードと同じようにP型半導体(正孔が動くことで電流が流れる半導体)とN型半導体(電子が動くことで電流が流れる半導体)を接合させており、電流を流すと接合面で正孔と電子が結合し、電気エネルギーが光エネルギーに変換されて接合面から光が放出されます。(図1)
実際には光エネルギーになるのは一部で、多くは熱エネルギーになります。
そのためLEDは点灯させると発熱します。

LED発光の仕組み
図1:LED発光の仕組み

LEDの駆動には定電流駆動が重要!

LEDの輝度(光束:光の量のこと)は、グラフ1の例の様にLEDに流れ込む電流値(順方向電流:If)とほぼ比例します。
そのためLEDの輝度を一定に保つには、Ifを一定に保つ定電流駆動が必要です。
(ただし、同じIfでも、個体により輝度のばらつきはあります。)

順方向電流 vs 相対光束
グラフ1:順方向電流 vs 相対光束

LEDは、一般的なダイオードの特性と同様に、アノードとカソード間にかける電圧(順方向降下電圧:Vf)により、流れ込む電流(If)が変わります。(ただしVfはPNダイオードに比べると高いです。)
一般的なLEDの特性グラフの例をグラフ2に示します。

順方向効果電圧 vs 順方向電流
グラフ2:順方向効果電圧 vs 順方向電流

ここで、LEDを一定の電圧で駆動(定電圧駆動)するとしましょう。

常温の場合はVfを上げていっても、約2.5VまではIfは流れていませんのでLEDは点灯しません。
そこからさらにVfを上げることで電流は流れはじめ、LEDは輝度の低い状態で点灯します。
それ以後はVfの少しの増加でIfが大きく増加し、輝度が上がっていきます。

Vf=3V時のIfを見ると、高温時で約76mA、常温時で約44mA、低温時では約19mAとなっており、
高温時と低温時で4倍も違いますので輝度も大きく変わります。(前述の通り、LEDは電流を流すと発熱します。)
これはつまり、流れ始めた時のIfよりも、点灯してしばらくたった時のIfの方が大きくなることを意味します。
さらにLEDのVfは一般的に±0.2~0.3V程度の個体ばらつきもあります。

これらの要因により、一定の電圧でLEDを点灯させようとすると、温度やLEDの個体ばらつきによって、大きく輝度が変わることになります。
また、場合によっては周囲温度が高い時にLEDを点灯すると、電流が増えてLEDの絶対最大定格を超え、
LEDが破壊されてしまう可能性さえあります。

この破壊を避けるためにも、LEDを点灯させるときは、一定の電圧で駆動する定電圧駆動ではなく、
一定の電流で駆動する定電流駆動を使うことがとても重要です。

ディスクリート部品を使った定電流駆動回路

ディスクリート部品を使った場合の回路例を2つご紹介します。

①抵抗だけを使い電流を一定にする回路(図2)

抵抗を使ったLED駆動回路例
図2:抵抗を使ったLED駆動回路例

LEDに流れる電流(If)は、直列につながっている電流制限抵抗Rに流れる電流と同じになりますので、R両端の電圧をRで割った値となります。
Rの両端の電圧はVdc-(n*Vf)になりますので、
If=(Vdc-(n*Vf))/Rで計算できます。

この回路は簡単で安価に実現出来ますが、LEDのVfの個体ばらつきや温度による変化、DC電源の電圧変化でIfが変化するため、
LEDの輝度も変化してしまいます。

②抵抗とNPNトランジスターとツェナーダイオードを使い電流を一定にする回路(図3)
LEDに流れる電流は、電流センス抵抗に流れる電流とほぼ同じです。
(正確にはIfはRに流れる電流よりベース電流分だけ少ないです。)

トランジスタとツェナーダイオードを使ったLED駆動回路例
図3:トランジスターとツェナーダイオードを使ったLED駆動回路例

Rに流れる電流は、Rの両端の電圧がツェナー電圧Vzから、トランジスターのベース・エミッタ間電圧Vbe分下がった電圧になりますので、
If=(Vz-Vbe)/Rで計算できます。

この回路は①と比べると複雑ですが、Ifの変動は少なくなります。
ただ、トランジスターやツェナーダイオードの個体ばらつきや温度によりVzやVbeが変化しIfも変化するため、
やはりLEDの輝度が変化してしまいます。

やってはいけない!この並列接続

輝度を上げる、あるいは広い面を光らすためにLEDの個数を増やしたときに並列接続することがあります。

LEDを直列接続しても個数を増やすことが出来ますが、LEDを駆動するための電源電圧もそれに合わせて高くしていく必要があります。
同じ電圧でLEDの個数を増したい場合は、並列接続が使われています。ただ図4の左側の並列接続はNGです。

並列接続回路例
図4:並列接続回路例

左側の接続をした場合、各列のLEDに流れる電流(If)は、LEDの個数×Vfが同じであればIfも同じになりますが、Vfの個体ばらつきで一方の列のトータルのVfが低くなると、Vfが低い列により多くの電流が流れることになります。
その結果、LEDの輝度が列ごとに異なってしまうことや、最悪の場合ほとんどの電流が片方にだけ流れてLEDを壊してしまう可能性もあります。

そのため、並列接続の場合は、図4の右側の接続を使う必要があります。
※前述のように、個体ばらつきや温度による輝度ばらつきが起こることに変わりはありません。

LEDドライバーを使うべき理由

ここまでLEDの駆動方法や問題点について説明しました。
LEDは簡単な部品と思いきや、回路設計時に考慮すべきことが多いことが分かったと思います。
これらの問題点をクリアするために、LEDドライバーがあります。

LEDドライバーを使うべき理由6つご紹介します。

理由1:電流精度を高くできる

LEDは個体のばらつきや温度、電源電圧によって明るさが変動します。
LEDドライバーにはLEDに流れる電流をモニターしながら一定の電流を流すように調整するため、高い精度で電流を流すことができ、明るさの変動を最小限に抑えることができます。

理由2:効率が良くなる

ディスクリート部品で構成した回路(図2、図3)では、直列に入れた電流制限抵抗や、バイポーラトランジスターが発熱するため、エネルギーロスが大きくなります。
LEDドライバーは、LEDに流れる電流を一定に保つようにLEDにかかる電圧を最適に調整します。
これによって、エネルギーロスを最小限に抑えることができます。

理由3:並列接続できる

多チャンネルのLEDドライバーを使うことで、並列接続されたLEDに流れる各電流を細かく制御できるため、電流の不均等を防ぐことができます。
これにより、列ごとに明るさが異なる、といったディスクリート回路であった問題は発生しません。

理由4:高い精度、高い階調数で調光制御ができる

LEDドライバーは、LEDに流す電流を調整する回路も、LEDをON/OFFする回路も最適化されています。
そのため、電流値や電流を流す時間を正確に制御できるため、より細かい輝度調整(調光)やLEDごとの輝度ばらつきの補正をすることができます。

理由5:LEDの故障を検出できる

LED自体の故障やLEDとの配線が断線したことによって、LEDが点灯しなくなったことを検出することができます。
この機能をもったLEDドライバーを使用することで、より信頼性の高いシステムを構築できます。

理由6:部品点数の削減ができる

様々な機能をディスクリートで実現させるより、LEDドライバーであれば部品点数を大幅に削減することができます。
これにより基板面積を小さくできたり、コストの削減、部品仕入れに掛かるリスクの低減ができます。

Texas Instruments社のLEDドライバーのラインナップと特長

Texas Instruments社(以降、TI社)では、LEDドライバーを数多く取り揃えています。
以下にてLEDドライバーのタイプについて、代表的なものを紹介します。
LEDドライバーのラインナップをわかりやすく一覧にまとめましたので、以下リンクより是非ダウンロードください。

製品ラインナップを見る

・リニア制御タイプ

リニア制御タイプリニア制御タイプは、LEDに流れる電流をモニターしながら、LEDと直列につながっている内部のトランジスターやMOSFETの抵抗値を調整して、一定の電流が流れるようにします。

◆メリット
・周辺部品が少ない
・電流精度がよい
・LEDのちらつきが少ない
・EMIノイズが少ない
・比較的安価

◆デメリット
・発熱が大きい

・降圧DCDCタイプ

降圧DCDCタイプ

降圧DCDCタイプは、LEDに流れる電流をモニターしながら、降圧型のDCDCコンバーターの出力電圧を調整して、一定の電流が流れるようにします。

◆メリット
・効率が良く発熱が少ない
・大電流のLEDが駆動できる

◆デメリット
・周辺部品が多い
・LEDのちらつきが出やすい(リップル電流が発生する)
・EMIノイズが多い

・昇圧DCDCタイプ

昇圧DCDCタイプ昇圧DCDCタイプは、LEDに流れる電流をモニターしながら、昇圧型のDCDCコンバーターの出力電圧を調整して、一定の電流が流れるようにします。
入力電圧<出力電圧の時に使用します。
例えば、LEDを多く直列にしてVfが高い場合や、入力が乾電池で電圧が低い場合に使用します。

◆メリット
・効率が良く発熱が少ない
・入力電圧が低くても多数のLEDを駆動できる

◆デメリット
・周辺部品が多い
・LEDのちらつきが出やすい(リップル電流が発生する)
・EMIノイズが多い

・ACDCタイプ

ACDCタイプ

ACDCタイプは、家庭用電源のような高電圧の交流電源からLEDを駆動する回路を作ることが出来ます。
トランスを使うことで絶縁した回路にすることが出来ます。力率を改善できるPFC(Power Factor Correction)機能が入ったものもあります。

 

 

 

 

TI社製LEDドライバーラインナップ
リニアタイプ、降圧タイプ、昇圧タイプ

簡単なフォームにご入力いただくと、TI社製のLEDドライバーラインナップ表をダウンロードいただけます。

製品ラインナップを見る

さいごに

LEDドライバーをお探しの際は、以下の項目を当社へご連絡ください。
最適のLEDドライバーICを選定させていただきます。

  1. お求めのLEDドライバーのタイプ(リニア制御、昇圧DCDC、降圧DCDC、ACDC)
  2. LED駆動回路の入力電圧(V、最小値/通常値/最大値)
  3. LEDに流す電流値と精度(mA、±%)
  4. LED1個の順方向降下電圧(Vf)
  5. LEDの直列接続数
  6. 並列接続する場合の列数
  7. 制御インターフェイス(I2C、SPI、1線または2線I/F等)
  8. アナログ調光やデジタル調光の階調数
  9. アプリケーション

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