- 公開日:2019年07月02日
- | 更新日:2022年10月27日
ESD試験にはデバイスレベルとシステムレベルがある!?
- ライター:Macnica
- その他
ESD (Electro Static Discharge) 対策は、静電気によるシステム誤動作やデバイスの破壊から守るために行われます。
例えば、工場の出荷検査などでオペレータが触った際にデバイスを静電気によって壊したり、パソコンや通信システムが市場で静電気によって誤動作したりしないよう、ESD回路で保護しています。
そのようなESDの規定に、デバイスレベルの規定とシステムレベルの規定があることをご存知でしょうか?
ESDのデバイスレベルとシステムレベルの違いを知らずに、システムのESD試験をしてしまうとデバイスを破壊してしまったり、十分な対策をせずに製品出荷して市場で不具合を出してしまったりするので注意が必要です。
デバイスレベル
最も一般的な規定は、HBM(Human Body Model/人体モデル)と言われている試験方法です。多くのデバイスは、2KV持つよう各ピンに保護素子を入れる設計がされています。
「2KVも静電耐性があるなら、リストストラップをしなくても壊れない!」と考える方がいるかもしれませんが、静電対策していない環境では、人体は2KV以上に帯電しているので必ずアースリングなどの静電対策を実施してください。
リストストラップ
システムレベル
システムレベルのESDは、IEC(International Electrotechnical Commission)で定めているIEC61004-2の方法で試験を行います。レベル3では、システムに対して接触放電6KVと気中放電8KVを行いシステムが誤動作しないかを試験します。
まれに、筐体が無い状態でデバイスの上からESDガンで6KVを印加して簡易的にシステムESDの試験をしているエンジニアの方がいますが、デバイスはHBM 2KVの耐性しかありません。ダメージを与えるので注意してください。
デバイス単体では難しいシステムのESD対策は、どのように行うのでしょうか?
静電気放電試験
システムレベルのESDに対応するには
インターフェースのコネクターに対して、接触放電を6KV印加した場合を考えます。コネクターにHBM 2KVのデバイスが接続されている場合、デバイスに6KVが印加されるので壊れてしまいます。
対策としては、コネクター直近にESDの保護素子であるツェナーダイオード、TVS(トランジェントボルテージサプレッサー)やバリスタを配置することです。
稀に、コネクターから遠い場所にあるデバイス付近にESD保護素子を入れていることが見受けられます。この場合、配線のインダクタンス成分が原因で印加したESDのノイズが大きくなりデバイスを破壊する場合があります。保護素子の配置は注意してください。
また、仮にHBM 8KV対応のデバイスがあったとしてもIEC 61000-4-2の8KVを満たすことはできません。下図(HBMとIECモデルの比較)のように、与えるエネルギーが全く異なる為デバイスを壊してしまう可能性が高いので注意が必要です。
HBMとIECモデルの比較
システムレベルのESDに対応したアナログ・デバイセズ社製品
アナログ・デバイセズ(ADI)社のADM3065Eは、ESD保護素子をRS-485のインターフェースのバスラインに配置することなしに、IEC 61000-4-2のレベル3規格に対応しています。ADM3065EのESDは、次のような耐性を持ちます。
- IEC 61000-4-2 ≥ ±12 kV の接触放電
- IEC61000-4-2 ≥ ±12 kV の空気放電
- HBM ≥ ±30 kV
ADM3065Eは外付けの保護素子が無い状態でIEC 61000-4-2のレベル3規格を満たす為、PCB基板の小型化が可能になります。モータ用エンコーダ基板のRS-485通信を実現するインターフェース用デバイスとして最適です。
ADM3065E評価ボード
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提供元:株式会社マクニカ