- 公開日:2018年03月08日
- | 更新日:2022年11月21日
IO-Linkデバイスってどうやって作る?IO-Linkの仕様や部品構成を紹介
- ライター:TAZ
- インターフェース
はじめに
近年では、インダストリー4.0の流れに伴い、ファクトリーオートメーション(工場の生産工程の自動化)が日本でも広がり始めています。IO-Linkはその中でも重要な通信技術にとされており、現在急速に普及が進んでいます。IO-Linkがなぜ重要なのかをIO-Linkの仕様の説明と絡めて紹介し、最後にTexas Instruments社(以降、TI社)のリファレンス・デザインを紹介します。
IO-Linkの概要
IO-Linkとは
IO-LinkとはPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)と末端のセンサーや入出力機器の間を接続する通信規格です。市場からの要請で2006年に発足し、2010年にIO-Link協会が設立、2013年に国際規格IEC61131-9にて規定されました。日本では日本プロフィバス協会傘下のIO-Linkコミュニティ ジャパンが管理・運営しています。
従来のPLCとセンサー間の接続はセンサー毎にバラバラで、アナログ信号、デジタル信号、シリアル通信などが混在になっており、工場設備の配線には手間や時間を要するものでした。また、何か不具合が発生した場合に、異常箇所を特定することが難しいという課題もありました。センサーから信号が取れない時に、それはセンサー自体の問題なのか、ケーブルの問題なのかが分からないためです。
IO-Linkは最下位のレイヤーでバラバラだった通信方式を1つに統一することができ、しかも、ケーブル一本で通信だけではなく電力供給もおこなうことができます。これによって配線にかかる手間と時間を削減することができるようになりました。
また、IO-Linkでは双方向通信ができるようになります。これによって、従来の問題であった不具合時の原因特定などを行えるようになります。まさしく「工場内のIoT化」の実現において、重要な通信規格といえるのではないでしょうか。
IO-Linkのインターフェース
IO-Linkの通信は1本のケーブルで信号伝送と電力の伝送を行います。1対1の双方向のシリアル通信となり、IO-Linkマスターを中心としたスター型トポロジーの接続に対応しています。動作モードはIO-Linkモード(デジタルデータを通信するモード)とSIOモード(従来のON/OFFのデジタル信号の入出力を行うモード)が用意されています。SIOモードでは、IO-Linkに対応していない従来のデジタル入出力のデバイスも接続することができます。
IO-Linkデバイスの内部構成
「IO-Linkデバイスを作成したい」という方に向けて、IO-Linkデバイスの基本的な内部構成(ブロック図)を紹介します。
必要となる部品としては、IO-Linkデバイス対応のPHYとマイコン、EEPROMなどの不揮発メモリ、IO-Linkのコネクタです。それに加えて、センサーやLEDといった入出力部品が必要となるでしょう。
TI社ではIO-Linkデバイスに使用できるPHYとマイコンを取り揃えています。以下にTI社の製品の強みを紹介します。
IO-Link PHY
前述のとおり、IO-LinkではマスターからIO-Linkケーブルを通して24Vの電源供給が行われます。そのため、IO-Link対応のPHYにはLDOを内蔵したものがあります。TI社のTIOL111シリーズはLDOを内蔵したものも用意されています。
代表的なTI製品
マイコンと不揮発メモリ
IO-LinkデバイスにはマイコンとEEPROMなどの不揮発メモリが必要です。
TI社のMSP430にはFRAMという不揮発メモリを搭載したものがあります。FRAMはRAMのように高速アクセスができ、Flashのような不揮発性をもつメモリです。FRAMがあればEEPROMを外付けせずにすみますので、実装面積やコストの削減に貢献できます。IO-Linkデバイスは小型なものが多いので、このMSP430の特長は大きなメリットと言えるでしょう。
代表的なTI製品
IO-Linkデバイスのファームウェア
IO-Linkデバイスを作るにはハードウェアだけでは不十分で、当然マイコンに搭載するファームウェアが必要です。
IO-Linkデバイスに書き込むファームウェアはユーザーが自身で作成する必要があります。また、特に重要なのがIO-Linkスタックを搭載する必要がある、ということです。IO-LinkスタックはTMG社などが提供しています。入手するにはTMG社とのライセンス契約(有償)が必要となっていますのでご注意ください。
TI社のIO-Link リファレンス・デザイン
TI社IO-Linkに対応可能なICだけではなく、多数のリファレンス・デザインを提供しています。
リファレンス・デザインには基板の回路図やCADデータ、BOMリストなどが含まれていますので、それをベースにすることで設計、開発に掛かるコストや工数を最小限に抑えることができます。
ここでいくつかのリファレンス・デザインを紹介します。
RTD フロント・エンド付き、超小型 IO-Link センサ・トランスミッタのリファレンス・デザイン
この リファレンス・デザインには、6mm幅のPCB上に測温抵抗体(RTD)とMSP430、IO-Link PHYを搭載しています。温度測定するIO-Linkデバイスの作成を検討している方にはうってつけのリファレンス・デザインです。
IO-Link 採用の超音波距離センサのリファレンス・デザイン
このリファレンス・デザインはトランスデューサから超音波を発生させて物体との距離測定をすることができます。超音波であれば測定対象物の色や測定環境の明るさなどの影響を受けずに距離測定することができます。
産業アプリケーション向け IO-Link センサ・トランスミッタ リファレンスデザイン
このリファレンス・デザインはLEDやスイッチ、ポテンショメータが搭載されていますが、最も特徴的なことはモジュール設計となっていることです。基板の各部を切り離すことができますので、ユーザーが任意のセンサーを接続して検証することができます。
上記以外にも多数のリファレンス・デザインが用意されています。TIの以下ページで「io-link」と検索するとIO-Linkに関連したリファレンス・デザインを検索することができます。興味のある方は是非ご確認ください。
おわりに
今回はIO-Linkの概要とIO-Linkに対応したTI製品について紹介しました。IO-Linkデバイスは非常に速いペースで普及が進んでいき、ファクトリーオートメーションにおける重要な通信技術の一つとなる可能性があります。TI社ではIO-Link対応のICだけではなく、リファレンス・デザインの提供を行っており、これらはこれからIO-Linkの開発を始める人にとっては大きな助けとなるはずです。
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