• 公開日:2019年10月25日
  • | 更新日:2022年12月01日
ドローン 表紙

ドローンを自作する方法 回路図、プリント基板の作り方

ドローンやコントローラを自作するためには、プリント基板を作成する必要があります。プリント基板を業者に発注する際は、回路図を完成させなくてはなりません。今回のコラムでは、プリント基板作成の発注をするため、基板の仕様を決定して回路図を完成させるプロセスについて解説します。

今回制作するドローンは、「残業監視ドローン MrkⅡ」です。残業している社員の後ろで、音と光を出して退社を促すというドローンです。ドローンをホバリングさせ、コントローラで操縦することを目指します。

プリント基板の仕様を検討する

ドローンやコントローラのプリント基板製作にかかる費用は、主に、基板設計費用(アートワーク<配線>設計費用)と基板製造費用(部品実装も含む)の2つです。基板製造会社から基板設計、基板製造費用の見積もりを出してもらうためには、発注する基板の仕様を決めなくてはなりません。以下が、発注に必要な基板仕様例です。

[基板仕様例]

  • ピン数(総接続本数)→基板配線設計(アートワーク設計、CAD設計)費用に関係
  • 製造枚数→基板製造費用に関係
  • 部品点数→部品実装費用に関係(部品調達をしてもらうなら調達費用にも関わる)
  • 基板構成層数、板厚、材質、基板の寸法 など

他にもさまざまな項目がありますが、今回は割愛します(プリント基板発注先によって項目が異なる場合があります)。より正確な見積金額を出すためには回路図を先に完成させる必要があるのです。

プリント基板の仕様、回路図を確定させる

ドローン、コントローラのプリント基板の仕様を確定させるため、回路図と基板の大きさを決めていきます。

プリント基板の回路図を作成する

より正確な見積書を出してもらうために、まず回路図を作成していきます。以前に作成したブロック図を参考に、回路図を作成してみましょう。

今回作る基板は2種類

  •  [CPU-BOARD] MSP432E401Y(Texas Instruments社)を搭載
  •  [Wireless-BOARD] CC1352R1(Texas Instruments社)を搭載

2種類の基板は図1のようなイメージでドローンとプロポ(コントローラ)に搭載していきます。

ドローン完成イメージ図図1 ドローン完成イメージ図

基本的にはMSP432E401YとCC1352R1の設計資料と、それぞれのデータシートを参考に描きました。

Wireless-BOARDの無線アンテナを取り付けるコネクタ(RF)周辺の回路に関して、CC1352R1の評価基板(CC1352R1 LaunchPad:Texas Instruments社)と同じように設計したほうがよいため、評価基板を参考にしています。また、部品などもできるだけ同スペックのものを選びました(MouserやDigikeyに在庫がないものに関して)。今回は、自社で開発した基板に接続できるように設計したかったため、それも考慮しつつ回路図を描いていきます。。

基板の大きさを決定する

基板の大きさは、自社の基板と接続するため基本的に固定です。

  • CPU-BOARD : 60.0×55.0mm
  • Wireless-BOARD : 28.0×51.0mm

また2種類の基板を別々で基板製造、部品実装するよりも、一つにまとめて基板製造および部品実装した方が金額的に安くなるため、図2のようなイメージで進めることにしました。

面付加工基板 完成イメージ図

図2 面付加工基板 完成イメージ図

基板を1つにまとめたシート(面付加工)を合計で5枚作ります(CPU-BOARD×5,Wireless-BOARD×10)。プリント基板は、発注先からこの状態で届き、使用する際は点線部分で分割して使います。

プリント基板の発注先選び

回路図が完成し、より正確な見積書を依頼できる状態になりました。発注先を探し、見積もりを依頼しましょう。念のため、2種類の基板を外形イメージ図で進める場合と、別々で進める場合の2パターンの見積もりを出してもらい比較しました。発注先を比較した結果、今回は株式会社ピーバンドットコム(以下、P板.com)にプリント基板の設計、製造をお願いすることにしました。

P板ロゴ

P板.comにプリント基板を発注するための準備

P板.comに配線(アートワーク)設計から基板を作ってもらうためには、いくつかの資料を準備する必要があります。

  • 回路図
  • ネットリスト(あると安価になる)
  • 部品リスト(P板.comフォーマット)
  • 部品データシート
  • 基板外形図
  • 部品配置図(なくても可)
  • 設計指示書(P板.comフォーマット、なくても可)

以上の資料を準備していきます。

回路図をチェック

回路図は完成しているので、接続ミスやつながっていない信号線がないか確認していきます。これをしっかりやらないと、回路図からエクスポートしたネットリスト(どの部品同士が接続されているかを示すもの、図3)に影響が出てしまい、配線(アートワーク)設計をスムーズに行ってもらうことが難しくなります。

ネットリスト例

図3 ネットリスト例

例えば、電源供給するピンであれば、入力電圧が異なる部分の違いがわかるように、電源部の表記を使い分けることが必要です。同じ表記にしてしまうと、ネットリストを出したときに同じ電圧を入力するポイントとなってしまいます。
また、ピンナンバーを表記していないと、ネットリストを見たときに、部品同士のどの部分と、どの部分が接続されているのかが発注先には伝わりません。自分たちでわかっていても、基板を発注する相手に正確に接続が伝わらなければ意味がないのです。
ネットリストを出し、おかしな箇所があったら回路図を修正することを繰り返し、P板.comに提出できる形にしていきます。

基板外形図と配置図

外形図は完成しているので、部品の配置を考えていきます。部品配置では、ズレてはいけない部品の配置位置の寸法を記載します。

  • CPU-BOARDとWireless-BOARDを接続するためのコネクタ
  • CPU-BOARD,Wireless-BOARDと自社ボードを接続するためのコネクタ
  • センサMPU6050の位置

これら以外の部品の配置は大体の位置にしました。

プリント基板を発注し基板設計へ

部品表と設計指示書はP板.comのフォーマットに沿って書いていきます。また、回路図や部品配置図の方にも設計指示を書くことにしました。データシートをそろえ発注します。

発注後の基板設計の流れ

発注をかけた後は、P板.comと、配置や配線について入念に話し合いながら、設計を進めてもらいます。

[基板設計の流れ(発注後)]

基板発注までのフロー

図4.基盤発注フロー図

特に部品配置の確認は重要な工程です。配置によって配線の仕方が変わり、配線のよしあしに関係してしまうからです。時間はかかるかもしれませんが、念入りに配置確認を行いましょう。完成する基板が思い通りに動作してくれるか、1つのポイントです。もちろん、その後の配線確認も大切です。

Wireless-BOARDのアンテナを接続するラインに関しては、特に入念に話し合いをして、修正してもらいながら進めましょう。

また、製作の途中で、抵抗のサイズが大きすぎて思うように配置できず、部品を再選定したり、電源とGNDが回路図およびネットリスト上でつながっていなかったりなど、確認したつもりでも思ったとおりにいかない点もありました。仕様を実現するために、その都度、修正箇所がないか確認する必要があります。

まとめ

今回は、ドローンを自作する際に必要な部品のつなげ方や、具体的な回路図について解説しました。基板が届くまで約2.5カ月かかります。この後、2種類の基板それぞれに書き込む予定のソフトを作成していきます。MSP432、CC1352などのチップについて、詳しくはこちら

MSP432E401Y SimpleLink™ イーサネット・マイコン
CC1352R SimpleLink™ マルチバンド・ワイヤレス・マイコン
ドローン自作のポイント 部品や回路図の基礎知識

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