- 公開日:2019年09月24日
- | 更新日:2022年12月01日
Micron Technology e.MMC 5.0/5.1の基板レイアウトについて
- ライター:大谷
- メモリー
はじめに
e.MMC製品はNANDフラッシュとそのコントローラーを単一BGAパッケージに搭載しているため、管理や制御が難しい大容量NANDフラッシュを比較的容易に取り扱えることが特長です。
この記事では、Micron Technology社(以下Micron)製の最新のe.MMC バージョン5.1デバイスを使用する設計者向けに、PCB設計とレイアウトについて記載したもので、よく質問を頂く以下のような注意点に関する概要を解説しております。
- Micron e.MMC バージョン5.0から3D TLC(64層) NAND Flash搭載Micron e.MMC バージョン5.1でのボール配置の変更点
- Host CPUとMicron e.MMC バージョン5.1の接続例について
- 信号の配線とキャパシター/抵抗の配置の注意点
- Micron e.MMC バージョン5.1 153-Ball キャパシター配置とPCBレイアウト例
Micron e.MMC バージョン5.0からバージョン5.1でのボール配置の変更点
下図は、Micronのe.MMCデバイス(153-Ball BGAパッケージ)のボール配置です。
e.MMC バージョン5.0の153-Ball品のボール配置(左)とe.MMC e.MMCバージョン5.1のボール配置(右)
Micronのe.MMCデバイス バージョン5.0からバージョン5.1に更新された際に、上図の赤枠部分のように、一部のRFU (Reserved For Future Use)信号がVSF(Vendor Specific Function)に変更されました。
e.MMC VSF信号は、VendorであるMicronが独自に規定した信号で、以下の7ボールあり、全ボールをオープン(未配線)とすることを推奨しております。
- バージョン5.1でRFUからVSFに変更されたボール: ボール位置E8,E9,E10,F10,G10,K10,P10
このVFS信号はデバイスを基板に実装したままの状態で解析などを実施するために使用されるため、e.MMCパッケージ内で配線されております。だたし、これらの機能はデバイス出荷時には無効化されており、Micronによる特別な方法でのみ有効化されます。
また、 RFU信号もオープン(未配線)にするボールとなります。これは、この信号が将来的に使用する可能性がある信号として予約された信号であるためです。このため、Micronの最新のe.MMC バージョン5.1デバイスでVFSとなっているボールは、従来のe.MMCデバイスではオープン(未配線)とすべきRFUであったため変更の必要は無いと思われますが、念のため、確認をお願いします。
Host CPUとMicron e.MMC バージョン5.1の接続例について
ここでは、現在非常に多くのアプリケーションに使用されている、e.MMC バージョン5.1の接続例をご紹介します。
各信号ラインに対して、プルアップ抵抗や、各電源ラインに対しキャパシターなどを設ける必要があることがお分かりになるかと思います。それぞれ、実際のキャパシター/抵抗の推奨値等は次の項目にて記載していますので、参考にしていただければと思います。
また、HOST CPU側にて指定の抵抗値、キャパシターがある場合は、そちらに従って設計してください。
信号の配線とキャパシター/抵抗の配置の注意点
上述でご紹介した通り、Host, e.MMC間の通信を安定させるために、プルアップ抵抗やキャパシターを設置しておりますが、配置の注意点を下記にまとめました。
<注意点>
- 抵抗位置について
下図の通り、SR_CLKはHostデバイスの近く、SR_DSはe.MMCの近くに抵抗を設置して下さい。抵抗はe.MMC側に近いことにより、より安定した入力信号が得られます。
- NCの扱いについて
e.MMC信号は、NCを介して外部に信号線を引き出せます。
⇒NCはe.MMC内部に接続が無い為に、他の信号線に影響を与えません。 - Micron e.MMC バージョン5.1のキャパシター/抵抗 推奨値について
推奨されるキャパシター値/抵抗値は以下の通りです。
Parameter | Symbol | Min | Max | Recommended | UNIT |
---|---|---|---|---|---|
Pull-up resistance for CMD | R_CMD | 4.7 | 50 | 10 | KΩ |
Pull-up resistance for DAT[7:0] | R_DAT | 10 | 50 | 50 | KΩ |
Pull-up resistance for RST_n | R_RST_n | 10 | 100 | ― | KΩ |
Pull-down resistance for R_DS | R_DS | 10 | 100 | ― | KΩ |
Impedance of CLK/CMD/DS/DAT[7:0] | ― | 45 | 55 | 50 | Ω |
Serial resistance on CLK line | SR_CLK | 0 | 47 | 22 | Ω |
Serial resistance on DS line | SR_DS | 0 | 47 | 22 | Ω |
VCCQ capacitor value | C1, C2 | 2.2 + 0.1 | 4.7 + 0.22 | 2.2 + 0.1 | μF |
VCC capacitor value | C3, C4 | 2.2 + 0.1 | 4.7 + 0.22 | 2.2 + 0.1 | μF |
- ビアとキャパシターパットの間は広くて短いトレースを使用するか、ビアを配置して下さい。
- キャパシターパットの接続方法は下記を参照下さい。
※注意 電源とグランドプレーンは、上記の「1」以外での接続を推奨します。(パット間は広く短くしてください。)
⇒インダクタンスを最小限に抑える為に、よりパットを太く距離を短くしていただく必要があります。
キャパシターパットについては、5つの例をご紹介しています。1番から5番まで掲載されていますが、5番を一番推奨しています。この違いというのは上述の通り、可能な限りピンに近く、パットの幅は広く設定ビアからキャパシターの長さを短く設定していただくためです。
5番については、スルーホールの直下に置くため一番ピンから近く、幅が短くなるため推奨されています。
Micron e.MMC バージョン5.1 153-Ball キャパシター配置とPCBレイアウト例
キャパシターパットは電源プレーンとグラントプレーンに接続する必要があります。
電源プレーンとグラントプレーンに近い所で、かつキャパシターのインダクタンスを最小限に抑える為に、よりパットを太く距離を短くしていただくことを推奨しています。したがって前の項目にあるキャパシターパットでご紹介した 「1」は非推奨です。
キャパシター配置とPCBレイアウトは下図を参照ください。
青い四角の記載部分にキャパシター配置を推奨しています。
赤がTop Side,、青がBottom Side、緑はInner Layer となります。
まとめ
- Micron e.MMCのバージョン5.0とバージョン5.1ではピンアサインが異なる。
- キャパシター/抵抗の配置場所やキャパシター値/抵抗値を精査していただくことで、安定的にe.MMCをお使いいただくことができる。
Micron Technology社製e.MMCのラインナップ表
Micron Technology社では、e.MMCを数多く取り揃えています。
e.MMCのラインナップをまとめましたので、以下リンクより是非ダウンロードください。
Micron Technology社ではワイヤレス品(-25℃~+85℃)や産業機器向け品(-40℃~+85℃)等の色々な温度に対応した製品を提供しています。現時点(2022年7月)ではe.MMC バージョン5.1 BGA153 Ball製品を推奨しております。
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参考文献
- JEDEC: JESD84-B51 Embedded Multi-Media Card (e.MMC) Electrical Standard (5.1)
https://www.jedec.org/sites/default/files/docs/JESD84-B51.pdf - JEDEC: JEDEC Standard No. 21-C 3.12.1-1 MCP and Discrete e•MMC, e•2MMC, and UFS
https://www.jedec.org/system/files/docs/3_12_01R31.pdf - Micron Technology: TN-FC-62: e.MMC PCB Design Guide 5.1
https://www.micron.com/-/media/client/global/documents/products/technical-note/e.MMC/tnfc62_e.MMC_pcb_design_guide_5,-d-,1.pdf
※1:ダウンロードするには、簡単な登録は必要になります。
※2:本資料はあくまで理解の参照に留めて下さい。最終的な判断は最新のデーターシートやテクニカル・ノートなどの資料をご確認いただき、シミュレーション等を実施の上でお願いします。