• 公開日:2019年10月23日
  • | 更新日:2022年12月01日

220Vを直接入力できる高精度オペアンプ

ハイサイド電流検出、 高電圧ドライバやATE(自動試験装置) 、LiDARのようなアプリケーションでは、数十ボルトを超える高電圧のアナログ回路が必要とされます。
高電圧のアナログ回路は、これまでトランジスタのディスクリート回路などで実現されていましたが、部品が高価であることや、回路の小型化が難しいこと、また発熱などの課題がありました。

アナログ・デバイセズから提供されるADHV4702-1は、同社独自の次世代半導体プロセスと革新的なアーキテクチャにより、これらの課題を解決する高耐圧・高精度を兼ね備えたオペアンプです。

ここではADHV4702-1の以下の4つの特徴について紹介します。

少ない部品でも高電圧信号を低ノイズで測定
高価なディスクリートトランジスタ回路なしでも最大220Vの信号出力を駆動
内部温度センサーとシャットダウン機能による発熱保護(サーマル・シャットダウン)
EC61010-1に準拠したピン配置の小型パッケージ

少ない部品でも高電圧信号を低ノイズで測定

ADHV4702-1は、アナログ・デバイセズによる独自の次世代プロセスであるバイポーラ/相補型金属酸化膜半導体(CMOS)/横方向拡散金属酸化膜半導体(BCDMOS)プロセスを使用して設計されています。

これらの技術により、ADHV4702-1は少ない部品点数で高耐圧かつ高精度のアナログ回路を実現します。
以下にADHV4702-1の機能ブロック図を示します。

ADHV4702-1の機能ブロック図(出典:ADHV7402-1 データシートより抜粋)

ADHV4702-1の入力段のアーキテクチャは、自動試験装置(ATE)などの高精度が求められるアプリケーション向けに、低入力バイアス電流、低入力オフセット電圧、低ドリフト、低ノイズで高い入力インピーダンスというメリットを提供します。

ADHV7402-1は以下の特性グラフが示すように、170dB(代表値)のオープンループ・ゲイン(AOL)、および 160dB(代表値)の同相ノイズ除去比(CMRR)という高精度の性能を実現しています。また、ADHV4702-1は 2µV/ºC(最大値)の入力オフセット電圧(VOS)ドリフトと8nV/√Hzの入力電圧ノイズを実現しています。

ADHV7402-1の高い精度性能(出典:ADHV7402-1 データシートより抜粋)

高価なディスクリートトランジスタ回路なしでも最大220Vの信号出力を駆動

ADHV4702-1は±110V の対称な両電源、非対称な両電源、または220V の単電源で動作します。
この広い電源電圧範囲によって、以下の代表的なアプリケーション回路のように、高電圧回路を少ない外付け部品で実現します。

ADHV4702-1の代表的なアプリケーション回路(出典:ADHV7402-1 データシートより抜粋)

ADHV4702-1は周辺の回路構成により以下の機能も実現できます。

高電圧 DAC による電圧減算器

この構成で、ADHV4702-1 をゲインが 20の電圧減算器としてセットアップすると、化学分析(質量分析)、ピエゾの駆動、走査電子顕微鏡(SEM) 、LiDAR APD/SPAD、シリコン光電子増倍管などのバイアス制御に最適 です。

ADHV4702-1と高電圧DACによる電圧減算器(出典:ADHV7402-1 データシートより抜粋)

高電流出力ドライバ

ディスクリート部品を使用し たユニティ・ゲインの出力段を導入することで、ADHV47021 を 高電力出力ドライバとして使用することができます。
オフセッ ト、ドリフト、オープンループ・ゲイン、CMRR といったアンプ単独での高精度性能を維持しながら、出力電流駆動をディス クリート製品で対応可能な電流まで増幅させることができます。

ADHV4702-1による高電流出力ドライバ(出典:ADHV7402-1 データシートより抜粋)

内部温度センサーとシャットダウン機能による発熱保護(サーマル・シャットダウン)

ICは絶対最大定格で規定されている動作温度以上で動作させると、製品の信頼性に影響を与えることがあります。

このリスクを最小にするため、ADHV4702-1は抵抗により調整可能なサーマル・シャットダウンのオプションを備えています。

ADHV4702-1はSDピンの電圧が DGND の 0.8V 以内まで低下 すると、ディスエーブルされて低消費電力状態に入ります。これにより、静止電流を約 0.18mA まで低減できます。

また、TMPピンに電圧で出力される温度情報はICチップのおおよその温度を表すので、消費電力のモニタリングにも使用できます。室温でTMPピンのワンタイム・キャリブ レーションを行うことで、より正確に温度を測定することができます。
以下のグラフはTMPピン電圧とジャンクション温度の関係を表しています。

ADHV4702-1 TMPピン電圧とジャンクション温度の関係(出典:ADHV7402-1 データシートより抜粋)

以下の回路図のように、TMPとSDに接続し、TMPおよびSDとDGNDの間の、ADHV4702-1 とできるだけ近くの位置に 200kΩ の抵抗(RTMP)を接続することで、サーマル・シャットダウン機能が実現できます。

ADHV4702-1 短絡保護とサーマル・シャットダウン用の構成(出典:ADHV7402-1 データシートより抜粋)

IEC61010-1に準拠したピン配置の小型パッケージ

ADHV4702-1は計測機器に関連する安全規格であるIEC61010-1に準拠したパッケージ構成になっています。
またパッケージサイズは7mm×7mm(LFCSP)で、回路の小型化・多チャンネル化に貢献します。

ADHV4702-1 IEC61010-1に準拠した7mm×7mmパッケージ(出典:ADHV7402-1 データシートより抜粋)

ADHV4702-1の主な機能は以下になります。

●広い動作電圧範囲
〇両電源動作:±12V~±110V
〇非対称な電源動作:24V~220V
●広い入力コモンモード電圧範囲:レールから3V
●高い同相ノイズ除去比:160dB(代表値)
●高いAOL:170dB(代表値)
●高速スルー・レート
〇74V/μs(代表値)
〇外部入力クランプ・ダイオード使用時に24V/μs(代表値)
●低い入力バイアス電流:2pA(最大値)
●低い入力オフセット電圧:1mV(最大値)●
●低い入力オフセット電圧ドリフト:2μV/°C(最大値)
●低い入力電圧ノイズ:10kHz で8nV/√Hz(代表値)
●広い小信号帯域幅:10MHz(代表値)
●抵抗により調整可能な静止電流:0.6mA~3mA(VS = ±110V)
●ユニティ・ゲインで安定動作
●熱モニタリング
●シャットダウン・モード
●小型フットプリント:IEC 61010-1 のスペースに準拠した12 ピン、7mm × 7mm LFCSP

アプリケーション例

●ハイサイド電流検出
●ATE(自動試験装置)
●高電圧ドライバ
●ピエゾ変換器
●D/A コンバータ(DAC)出力バッファ
●LiDARのバイアス

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ADHV4702-1BCPZ
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※本記事は株式会社マクニカのウェブサイトに掲載されている技術情報を、株式会社マクニカからの許可を得て転載しております。
提供元:株式会社マクニカ