- 公開日:2020年02月14日
- | 更新日:2024年03月14日
USB Type-Cに置き換える方法 第2話 USB2.0の場合
- ライター:Yaita
- インターフェース
シリーズ記事「USB Type-Cに置き換える方法」は、現行のUSBコネクターをUSB Type-Cに置き換えるためのノウハウを、概要編/実践編の全4話でご紹介します。
第1話の概要編では、導入としてUSB Type-Cコントローラーの機能を紹介しました。実践編の第2話では、Texas Instruments社(以下、TI社)のUSB Type-Cポートコントローラー(以下、ポートコントローラー)を用いて、具体的にどう設計するか/回路を組むかを紹介します。
概要編 USB Type-Cに置き換える方法 第1話 Type-Cの原理を知る
実践編 USB Type-Cに置き換える方法 第2話 USB2.0の場合
実践編 USB Type-Cに置き換える方法 第3話 USB3.1の場合
実践編 USB Type-Cに置き換える方法 第4話 USB2.0 OTG (USB On-The-Go)の場合
※USB Type-CはUSB Power Delivery(USB PD)という新しい規格をサポートしていますが、この連載ではUSB PDに対応する必要が無い機器を取り上げます。USB PDに対応する必要がある場合は、「USB Power Deliveryとは」の連載記事をご覧ください。
概要編 USB Power Deliveryとは
実践編 USB Power Delivery TPS65987D 製品紹介
実践編 USB Power Delivery TPS65987D EVM紹介
USB2.0のシステムでUSB Type-Cへ置き換える方法
現行のUSBコネクターをUSB Type-Cコネクターへ置き換えるとき、対象機器がUSB2.0のシステムなのか、USB3.1のシステムなのかでポートコントローラーへ求められる機能が異なります。まずはより簡単なUSB2.0のシステムをType-Cコネクターへ置き換える方法について見ていきましょう。
ここでは、使用するポートコントローラーとしてTI社のTUSB320LAIを使用します。TUSB320LAIは、ホスト機器(以下、DFP:Downstream Facing Port)、デバイス機器(以下、UFP:Upstream Facing Port)、もしくはホストにもデバイスにもなり得る機器(以下、DRP:Dual Role Port)の3パターン全てを対象にポートコントローラーとして使用することができます。仮にDFPのアプリケーションとUFPのアプリケーションを開発されている場合は、デバイスを共通化できるというメリットもあります。
まずはTUSB320LAIを用いたDFPの回路(図1)を見てみましょう。
図1. TUSB320LAIでDFPモードにした回路例
出典:Texas Instruments – http://www.ti.com/jp/lit/ds/symlink/tusb320lai.pdf
図1をご覧いただくと、USB Type-Cコネクターで新たに追加されたCC1/CC2(CC:Configuration Channel)がコントローラーに接続されている事がわかります。CCがUSB Type-Cの肝となる事は説明しましたが、CCを制御/検出することがTUSB320LAIの主な役割です。TUSB320LAIはPORTピンをVDDにプルアップするとDFPのモードになります。DFPの場合は、UFPと接続された場合にVBUSをソースする必要がありますが、IDピンがその役割を担っており、VBUSスイッチを制御します。また、USB2.0信号のDP/DMは前回の記事で説明した通り、USB Type-Cコネクターの上下にある同信号2ペアをそれぞれショートしています。DP/DMの接続先は従来のシステムと変わらずUSBコントローラーであり、TUSB320LAIはDP/DMには関与していません。
ちなみに、図1ではTUSB320LAIを制御するためのI2C信号がプロセッサーに接続されていますが、TUSB320LAIはGPIOのHigh/Low固定でも設定できますのでI2C制御は必須ではありません。
注:TUSB320LAIが持つ機能の中ではI2C制御が必要なものがあります。詳細はdatasheetをご参照ください。
次に、TUSB320LAIを用いたUFPの回路を見てみましょう。
図2. TUSB320LAIでUFPモードにした回路例
出典:Texas Instruments – http://www.ti.com/jp/lit/ds/symlink/tusb320lai.pdf
UFPの回路もDFPとほぼ同じですが、 PORTピンをVSSにプルダウンしてUFPモードにしています。また、VBUSをソースする必要がないため、VBUSスイッチがなく、VBUS検出のためにVBUSピンを抵抗を介してUSB Type-CコネクターのVBUSにつなげています。
次に、TUSB320LAIを用いたDRPの回路を見てみましょう。
DRPに関する詳細はこちらを合わせてご参考ください。USB Type-Cに置き換える方法 第4話 USB2.0 OTG (USB On-The-Go)の場合
図3. TUSB320LAIでDRPモードにした回路例
出典:Texas Instruments – http://www.ti.com/jp/lit/ds/symlink/tusb320lai.pdf
DRPの回路もDFPとほぼ同じですが、 PORTピンをOpenにしてDRPモードにしています。また、DRPはデバイス(UFP)の動作になる事もあるので、UFPの時と同様にVBUSピンを抵抗を介してUSB Type-CコネクターのVBUSにつなげています。
TUSB320LAIの機能まとめ
DFP、UFP、DRPそれぞれの回路を見てきました。ここで、TUSB320LAIがそれぞれのモードで持つ機能を図4にまとめます。各機能の詳細はデータシートをご参照ください。
Port pin | High (DFP ONLY) |
Low (UFP ONLY) |
NC (DRP) |
---|---|---|---|
Supported features | |||
Port attach and detach | Yes | Yes | Yes |
Cable orientation (through I2C) | Yes | Yes | Yes |
Current advertisement | Yes | – | Yes (DFP) |
current detection | Yes | Yes (UFP) | |
Accessory modes (audio and debug) | Yes | Yes | Yes |
Try.SRC | – | – | Yes |
Try.SNK | – | – | Yes |
Active cable detection | Yes | – | Yes (DFP) |
I2C / GPIO | Yes | Yes | Yes |
Legacy cables | Yes | Yes | Yes |
VBUS detection | – | Yes | Yes (UFP) |
図4. TUSB320LAIのモード別機能表
出典:Texas Instruments – http://www.ti.com/jp/lit/ds/symlink/tusb320lai.pdf
VBUSスイッチを内蔵したDFPコントローラー
ここで少し補足情報です。
図1「TUSB320LAIでDFPモードにした回路例」を見ると、Legacy TypeA Switchと書かれたVBUSスイッチが別途必要である事がわかりますが、TI社にはVBUSスイッチを内蔵したDFP用のポートコントローラー TPS25810があります。
※この製品はDFP向けのデバイスで、UFPやDRPでは使用できません。
図5にTPS25810の回路例を記載します。図1のVBUSのスイッチが取り込まれている事がわかるかと思います。
図5. VBUSスイッチを内蔵したDFPコントローラー TPS25810の回路例
出典:Texas Instruments – http://www.tij.co.jp/jp/lit/ds/symlink/tps25810.pdf
まとめ
ここでは現行のUSB2.0のシステムをUSB Type-Cに置き換える方法について、DFP/UFP/DRPの3パターンで説明しました。現行のUSB2.0システムをUSB Type-Cに置き換えるには、従来のコネクターをType-Cに置き換えてTUSB320LAIを搭載するだけでほぼ設計が終わるイメージは持っていただけたでしょうか。
Texas Instruments社の製品をお探しの方は、メーカーページもぜひご覧ください。
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次回はUSB3.1の場合を解説!
本記事では、対象機器がUSB2.0のシステムをType-Cコネクターへ置き換える方法について紹介をしましたが、いかがでしたでしょうか。次は対象機器がUSB3.1のシステムから置き換える場合、どのように設計すれば良いかを紹介していきます。