• 公開日:2020年02月17日
  • | 更新日:2022年10月28日
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振動データを取得、MT法で異常検知する ― SENSPIDERで実験!―

はじめに

こんにちは!日頃、製造現場のデジタル化を支援させていただいているリリィです。
今回は、状態監視保全*1に用いられることの多い、振動データからの異常検知をテーマに、センサーデータの取得・活用方法を実験(デモ)の様子とともにお伝えします。生産設備の状態監視保全に少しでもお役に立てば幸いです。

*1:状態監視保全:状態基準保全、CBM(Condition Based Maintenance)と呼ばれることもあります。

センサーデータを活用した状態監視

製造現場の現状は?

工場内で稼働している装置を動かす動力源には、モーターやポンプなどが使われています。
それが故障してしまうと製造ラインが止まって大きなロスとなるため、あらかじめ決められた稼働時間やサイクル数が経過したら装置を止め、マニュアルに従った点検や部品交換などをする定期メンテナンスが行われていることが多いです。
しかし、生産効率の低下や壊れていない部品の交換という無駄が発生しますし、装置に設置しているPLCやNCの機能だけでは、突発故障によるダウンタイムを無くすことはとても困難です。図1

状態監視とは

設備に故障が発生する前に異常を知ることができれば、定期メンテナンスをする間隔を伸ばせるばかりか、最適なタイミングでメンテナンスを行うことができるようになります。
すると、製造ラインの稼働率向上、歩留まり向上によるコスト削減が期待できますよね。

そこで取り組みたいのが、「状態監視」です。状態監視とは、機械や設備などの状態を把握できるデータから、稼働中の設備の状態を評価・診断・可視化することです。
状態監視により設備の状態を把握することが、設備保全に関するさまざまな課題を解決するための基礎となります。

具体的な監視手段としては、設備装置から振動、音、圧力、電圧、電流などのアナログ量を取得してデジタル変換し、しきい値検出やAIアルゴリズムでデータ処理を行い、異常発生前にアラートを出す方法があります。

状態監視のためのデータ取得に用いられる主要なセンサーは「振動センサー」「温度センサー」「電流センサー」などです。

最も一般的に使われる振動データ

動的機器の多くの不具合は振動の変化・増大となって表れるため、振動は設備の状態を表す上で特に有用な物理量です。また、ISOに振動レベルの基準が設けられており、これを利用して状態診断をすぐに開始することができます。

装置の故障や不良品の発生の原因の中でも、よくあるのがモーターの異常動作です。
モーターの異常を検出するセンシングの方法は、振動、音、温度、電流などいくつかありますが、今回はテーマに沿って、振動データを取得してファンモーターの異常を検知してみましょう。

デモ ~ 振動データの取得と分析 ~

振動データの取得には、広い周波数範囲をカバーできて最も多く用いられる圧電型加速度センサーを使用します。

  • ファンモーターの正常時の振動
  • ファンモーターの異常時の振動(振動の異常を模擬するため、回転軸から少し離れたところにおもりをつけた状態の振動)

の2つを測定します。
その測定値から振動速度を計算した値を使って、FFT解析した場合、MT法を使って解析した場合を見ていきます。

用意したもの

  • ファンモーター
  • PC
  • おもり
  • 振動加速度センサー(PCB製 加速度ピックアップ M607A11/005AC)
  • データ収集用ターミナル(マクニカ製 SENSPIDER®)
  • データ分析ソフトウェア(IIU製 Sigma)

デモ動画の概要

  • 実験環境について
  • 振動加速度データの測定
  • 振動速度を計算する
  • FFT解析結果を表示する
  • MT法で異常を判別する

それでは、動画でデモをご覧ください。

この動画のように、センサーで振動データを取得し、MT法を使って異常を数値で判定できるようになれば、生産設備のメンテナンス時期をアラートで知らせることができるようになります。

SENSPIDER開発の背景

さて、突然説明もなく動画に登場しているSENSPIDERについて、遅ればせながら簡単にご紹介します。SENSPIDERは、異常検知や予知保全の方法を模索する方々と多く接する中、その解決策の1つとして生み出されたセンシング&エッジコンピューティング端末です。

装置が安定稼働しているかをモニタリングするために、モーターやポンプなどの動力源にセンサーを取り付け、メンテナンス直後の正常な状態のデータと、その後の稼働状態のデータを比較検証し、故障が発生する前にメンテナンスを行う時期を知らせてくれるAIアルゴリズムがあれば、生産パフォーマンスが大幅に改善します。
SENSPIDERはこれを実現します。

SENSPIDERの基本的機能

測定器や計器などアナログ出力のセンサーデバイスから、振動、電流電圧、温度データの信号チャネルを同時に受信してデジタルデータに変換後、LAN経由でサーバーアプリケーションに転送する装置

SENSPIDERの主な特徴

  • 機械状態を把握できるため、異常検知や予知保全等に有効
  • 産業機械・設備の IoT 機能追加ユニットとして組み込み可能
  • 各種センサーのロギングに必要な機能を搭載
  • モーター等の状態把握に必要な広帯域振動センサーに対応
  • AI利用データの抽出、AIアルゴリズム等のデータエッジ処理機能等の拡張性

SENSPIDERの主なスペック

  • Max 48KHz の高速サンプリング
  • DINレール取り付け可能
  • 最大 8ch 入力
  • 3つのインターフェースカードを空スロットに自由自在に組み合わせ可能

SENSPIDER

SENSPIDERの詳細はこちら

※ SENSPIDER は、株式会社マクニカの登録商標です。

さいごに

今回は、状態監視の必要性と、その状態監視の手段としてよく使われる、振動センサーデータを使った異常検知の方法について、デモをメインにお伝えしました。
「もっと詳しく知りたい」「異常検知に取り組んでみよう」と思った方は、ぜひお問い合わせください。

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