• 公開日:2020年02月27日
  • | 更新日:2022年12月02日

USB Power Deliveryとは 第2話 業界最高レベルの統合性!容易に設計できるUSB Power Deliveryコントローラーとは?

シリーズ記事「USB Power Deliveryとは」は、USBのPower Delivery以下USB PD)の機能について、概要編/実践編の全3話でご紹介します。USB Type-Cを採用する利点としてUSB PDに対応しているという事も大きな特徴です。ここでは、USB PDの特長をわかりやすく解説します。
本稿では、Texas Instruments社製のUSB PDコントローラーであるTPS65987Dの特徴と、本デバイスを用いた設計概要を紹介していきます。

USB PDコントローラーとは

USB PDをサポートする機器同士がつながると、機器間のネゴシエーションによって、電力の役割 (ソース/シンク)と電力量、USBデータの役割 (ホスト/デバイス)、オルタネートモードでのDisplayPortの通信方法等を決定します。USB Type-Cコネクター/ケーブルで新たに追加されたCC(Configuration Channel)線上でPDプロトコルを用いてネゴシエーションしますが、その役割を担うのがUSB PDコントローラーです(図1の赤枠部分)。

図1. USB3.1 Super Speed信号とDisplayPort信号のMUX_DEMUXを含んだシステム構成

図1. USB3.1 Super Speed信号とDisplayPort信号のMUX_DEMUXを含んだシステム構成

汎用のCPU等を用いて制御を行う事も不可能では無いですが、USB PDプロトコルがどのようなものか、ネゴシエーションはどのように行うか詳細を知らない設計者にとってはUSB PDコントローラーを使うのが最もハードルが低くシンプルな構成と言えるでしょう。

業界最高レベルの統合性を持つTPS65987D
~設定面、ハード構成面でのお悩みを解消します~

Texas Instruments社のTPS65987Dは最新の規格USB PD3.0に準拠した業界最高レベルの統合性を持つPDコントローラーです。“業界最高レベルの統合性”の意味するところはハード構成観点から周辺部品を少なくできる事はもちろんの事、何より設計が簡単という事が最大のポイントです。

ここではTPS65987Dの主な特長を紹介したいと思います。

図2. 業界最高レベルの統合性を持つTPS65987D

図2. 業界最高レベルの統合性を持つTPS65987D

出典:Texas Instruments –http://www.ti.com/jp/lit/ds/symlink/tps65987d.pdf

アプリケーション固有の設定はGUIから選択

USB Type-C、USB PDはまだ新しい規格ですので、新規に導入を検討されている設計者にとっては設定面でのハードルが高く、膨大な量のUSB規格書を理解する事やソフトウェア/ファームウェアを作りこむイメージをされるかもしれません。TPS65987DはUSB PD3.0に準拠したソフトウェア/ファームウェアの開発が不要なデバイスです。目的の電力、データ、ビデオ(Display Port等)のプロファイルをPC画面上のGUI上で選択するだけ(複数クリック)で設定は完了します。GUIツールにより作成したバイナリデータを外付けのFlash Memoryに書き込めば、TPS65987DがBoot時(電源起動時)にFlash Memoryからデータを自動的に読みこんで設定される仕組みです。

TPS6598x構成ツール

図3. PC上でのGUI操作で設定は完了

図3. PC上でのGUI操作で設定は完了

出典:Texas Instruments –http://www.tij.co.jp/tool/jp/TPS6598X-CONFIG

保護機能付き2系統のパワーパス(~20V/5A)を内蔵

次にハード構成に関連したTPS65987Dの特長です。

USB PDでは最大100Wの電力供給が可能になりましたが、その一方でデバイスを守るための保護機能が必須になります。Power Delivery Specificationにおいても、例えば、パワーをソースする機器(Provider)は、接続相手のシンク機器(Consumer)に対してシンク機器が要求する電流以上を流してはいけない等の規定があり、USB PDを機器に組み込むためには考慮が必要です。

TPS65987Dは100Wまでの送受信可能なパワーパスを2系統内蔵(図4)しており、それぞれ送電(Source)パス、受電(Sink)パスに割り当てる事ができますので、特殊な要件が無い場合は基本的には外部のFETやFETドライバ等の部品は必要ありません。また、パワーパスを内蔵しているメリットとして周辺部品を少なくできる事はもちろんですが、内蔵のパワーパスにはOCP(overcurrent protection:過電流保護)、OVP(overvoltage protection:過電圧保護)、RCP(Reverse current protection:逆流電流保護)等の包括的な保護機能を持っています。先程紹介したGUIによって保護機能もプログラム可能ですので、制御に頭を悩ませることはありません。

図4. TPS65987Dの内部ブロック図

出典:Texas Instruments -http://www.ti.com/jp/lit/ds/symlink/tps65987d.pdf

まとめ

今回、業界最高レベルの統合性を持つUSB PDコントローラー TPS65987Dの特長と、それに伴う設計のしやすさをご紹介させて頂きました。
次回は、アプリの仕様によってTPS65987Dの他にどのようなデバイスが必要になるのか、また実機で動作を確認するために必要な評価ボードとその概要をご紹介します。

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