• 公開日:2020年08月04日
  • | 更新日:2023年12月22日

シミュレーションによるリニアレギュレータの並列動作

  • ライター:短絡亭過電流

年に数回、同じ質問を頂きます。

「並列動作が可能なLDO(リニアレギュレータ)ってありますか?」

世の中には並列動作が可能なLDOは存在しますが、多くはありません。
LDOは基本的には、並列動作はNGです。その理由は、個体によって出力電圧が微妙に違うからです。

並列動作時、出力電圧が高い方が出力電流としては支配的になります。電位差が1mVだとしても、電流の偏り方は100:0になります。

LDOを並列動作させる最も簡単な方法は、出力ダイオードORです。
デメリットは、
・ダイオードのVf(順方向電圧)と出力電流によって損失が大きくなること
・VfがLDOのVdo(ドロップアウト電圧)に加算されること
が挙げられます。
例えば、Vdo=300mVのLDOの場合、Vf=500mVのダイオードを用いると、入出力間の電位差は800mV以上にする必要があります。

ということで、LDOを並列動作させる方法を考察してみました。

目的は「電流の等分配」であり、それを妨げるのは、「出力電圧の差分」です。
そこで、
・2系統の電流を監視し
・それぞれの電流値が等しくなるよう出力電圧を制御する
ことで、LDOの並列動作が可能になると考えました。

そこで出来上がった回路構成がこちらです。

各入力電流をシャント抵抗で電圧に変換し、それらをオペアンプで比較、入力電流が等しくなるよう、LDOのどちらか一方の出力電圧を
制御/調整
する方式です。
因みにこの回路は、『TINA-TI』というTexas Instruments社のSpiceシミュレータを使用しました。
https://www.tij.co.jp/tool/jp/TINA-TI

さて、各LDOの出力電流はどうなったかというと、、、

上段LDOの入力電流が984.02mA、下段LDOの入力電流が983.97mA、とその差僅か0.05mA!!

これは、成功と言って良いんではないでしょうか!

電流の差分ですが、これは使用するオペアンプのオフセット電圧と入力バイアス電流によるものです。
今回のシミュレーションでは、オペアンプはTexas Instruments社のOPA333を使用しました。
https://www.tij.co.jp/product/jp/OPA333
OPA333は御存じの通り「超定番の高精度オペアンプ」です。
ここで安価な汎用オペアンプを用いると、電流の差分が大きくなります。
コストとの兼ね合いもありますが、使用するなら「高精度オペアンプ」がお勧めです。

「こんな回路を実現したい!」との要望がありましたら、是非弊社エンジニアへご相談ください!

当記事のTINA-TIシミュレーションファイルのダウンロードはこちらから!
※このシミュレーションモデルは、実機での動作を保証するものではありません。ご検討の際は、実機での十分な動作検証をお願いします。