- 公開日:2020年11月06日
- | 更新日:2023年12月22日
降圧型スイッチングレギュレーターを用いた負電圧電源回路
- ライター:短絡亭過電流
- 電源
あるお客様から下記のようなお問合せを頂きました。
「普通の降圧型スイッチングレギュレーターを使用した負電源回路って、
どう構成すればいいんですか? 」
正電圧入力⇒負電圧出力の反転コンバーターですね。
このお問い合わせは結構頻繁に頂きます。
まず、降圧型スイッチングレギュレーターを使用した負電圧電源回路を構成することは可能です。
ただ、設計するにあたり、ICの動作やインダクタを流れる電流の振る舞いなどを 正確に想像する必要があります。
基本的な回路構成(同期整流方式)はこのようになります。
普段であれば出力となるインダクタのラインがGNDへ接続、普段であればIC及び出力側のGNDが出力となります。
ちょっとややこしいですね。
従いまして、例えば10V入力から-5Vを作る場合、ICのVin-GND間には15Vの電位差が発生します。
その為、ICには15V以上+設計マージンの耐圧が必要となります。
次に動作について説明します。
まず、Vin印加時、電流はVin-Vout間のコンデンサを通りCout(点線)に流れ込みますが、その結果、一瞬だけVoutの電位は正の方向に上昇します。
但し出力側のショットキーダイオードやIC内部の保護ダイオードにより、VoutはそれらダイオードのVf(約0.3V~0.6V程度)でクランプされます。
次にHigh SideのFET(SWH)がONし、インダクタに電流を流します。
SWHがOFF(Open)になると、インダクタには逆起電力が発生し、その逆起電力により流れる電流はVout⇒インダクタ⇒GNDの経路で流れます。インダクタの片側の電位はGNDへ固定されているため、Voutに負の電圧が発生します。
注意点として、前述の通り、Vin-Vout間のコンデンサに電流が流れることにより、起動時Voutには必ず正の電圧が出現します。
Vin-Vout間のコンデンサは不要か?と思うかもしれませんが、入力電圧が振れることが予想される場合、出力電圧の安定の為にはあった方が良いです。
後段の負荷回路が正の電圧を許容できない場合には、TPS63710のような、負電圧専用のスイッチングレギュレーターを用いることをお勧め致します。
そのような制約が無ければ、降圧スイッチングレギュレーターを使い回した方がお得ですね。
さて、同期整流の降圧DC/DC、LMR33630で正電圧入力(12V)→負電圧出力(-5V/2A)回路を構成してみました。
その回路がこちら!
“出典:Texas Instruments – TINA-TI 『LMR33630を用いた負電圧出力回路』”
各波形はこの様になります。
起動時、出力電圧は出力側にあるショットキーのVf約385mVまで上昇し、その後約4m秒後に-5Vに到達、安定的に動作しています。
これは、期待通りの動作と言って良いんではないでしょうか!
一つ付け加えるとしたら、ICのEN(Enable)端子のお取り扱いにはお気を付けください。
今回例として使用しましたLMR33630のEN端子は、Vin(最大36V)までの入力が可能ですが、中にはロジックレベル(最大5V程度)までしか入力できないICもあります。
そのようなICを使用する場合、EN端子を操作するにはフォトカプラ、又は多段のFETで構成したレベルシフタ、等を併せて御検討ください。
「こんな回路を実現したい!」との要望がありましたら、是非弊社エンジニアへご相談ください!
当記事のTINA-TIシミュレーションファイルのダウンロードはこちらから!
※このシミュレーションモデルは、実機での動作を保証するものではありません。ご検討の際は、実機での十分な動作検証をお願いします。