- 公開日:2020年11月25日
- | 更新日:2022年11月21日
放映映像向けクロックに最適なクロックジェネレータとは?
- ライター:mtmt
- クロック
はじめに
クロックは様々なFA機器~民生機器、ありとあらゆるアプリケーションに用いられます。
今回は放映映像向けクロック(Broadcast Video Clock)に着目します。
放映映像機器アプリケーションで用いられるビデオクロックはどういった要素、どういった特性が求められるかを考えみます。
放映映像機器は2次元の画像を順次走査し、電気信号に変換して送出します。
複数の機器間で信号を切り替えた際、走査する タイミングが異なると、切り替えた後の機器のタイミングに合わせるまで待つ必要があります。その間、映像が途切れます。
全ての機器を同期させることでこの問題を回避できます。
つまり、ビデオリファレンスに同期したクロックを生成することが求められます。
構成
以下の構成でこの要求を満たすことができます。
ここで必要なことは以下の2点になります。
・シンクセパレータでビデオリファレンスから同期信号を分離
・分離した同期信号を元にクロックジェネレータで、必要とする周波数のクロックを作成
クロックジェネレータに必要な要素を考えてみる
次にクロックジェネレータに求められる要素を考えてみます。以下の4事項になります。
①ジッター要求
シリアルビデオ通信規格SDIでは10Hz~1/10PCLK の範囲のジッターをTiming Jitterと定義し、一定値以下に抑えることが要求されます。このため、クロックに含まれるこの周波数範囲のジッターを抑制する必要があります。
②同期信号からクロックの作成
同期信号は数十kHzです。その程度の位相比較周波数でも低ジッターのクロックが生成できることが必要になります。
③ビデオフォーマットを判断できること
ビデオフォーマットは多種類にわたります。良く使われるフォーマットに限定しても20種類を超えます。
どのフォーマットのビデオ信号がリファレンスとして入力されても対応できることが求められます。
フォーマットが変わると、同期信号の周波数が変化します。それに合わせ、PLLの分周比の変更が必要になります。
フォーマットを判断し、それに従い自動的に分周比を変更することが期待されます。
④正確な分周比を保つこと
デジタルビデオでは1フレームに含まれる画素数が決まっています。
また、音声データのサンプル数も決まっています。クロックジェネレータで生成するクロックは常に一定の比率を保つことが必要です。
1ppmの誤差でも累積されると同期関係は成立しません。
放送機器に使われるクロック周波数は、標準解像度の機器では27MHz、HDTVでは74.25MHzと74.25/1.001MHz、
Progressive HDTVでは148.5MHzと148.5/1.001MHzが使われます。
1/1.001の違いは、欧州と日・米でのフレームレートの違いに起因します。
UHDTVでは299MHzと299/1.001MHz、Progressive HDTVと同じ周波数が使われることもあります。
オーディオクロックは48kHz の2のべき乗倍、例えば、2048倍、98.304MHz等が使われます。
これらのクロックは正確な分周比を保つことが必要です。
補足:各種ビデオフォーマットに於ける水平同期信号周波数
水平同期信号を元に、27MHzのVCXOと同期する構成を考えてみます。
代表的なビデオフォーマットの水平同期信号周波数と27MHzとの比は以下になります。(いずれも数kHzからの入力となります。)
※ これらの比を厳格に守ることが必須です。
では最適なクロックジェネレータは?
これらの要求に合うTI社製品はLMH1983とLMK05028です。それぞれの構成は以下になります。
補足:それぞれのクロックジェネレータのメリット/デメリット
それぞれのデバイスにはメリットとデメリットが伴います。
まとめ
放映映像向けクロックは聞きなれないことも多く、戸惑うことも多いと思います。
実際には一つ一つの構成要素を考えていけば難しいことはないです。
構成要素を理解できれば、あとはそれに最適なクロックデバイスを選定します。
クロックデバイスを選定した後は、ジッター等の要望スペックを満たすようにループ帯域の最適化を図ります。
是非設計の参考にしていただければ幸いです。
関連記事
・「PLLのループフィルターってどうやって決めるの?」 気を付けるべき3つのポイント
・PLLのループ帯域を決定する4つの要素とは?!