- 公開日:2021年06月18日
- | 更新日:2022年11月30日
クラスDアンプとは
- ライター:Kato Sadanori
- オーディオ
クラスABアンプとクラスDアンプの違い
オーディオアンプでよく耳にするクラスDアンプですが、クラスABアンプとの違いをご存知でしょうか?「クラスDアンプ」=「デジタルアンプ」として一般的に定着している感がありますね。このクラスABやクラスDですが、アンプの動作方式の違いを表しており、Aランク、Bランク、Cランク…といった各位付けではありません。詳細な動作説明は専門家にお任せするとして、クラスABアンプとクラスDアンプの違いは表1の通りです。
同一の出力電力を得ようとした場合、クラスDアンプは自己消費電力が小さいため、高効率で、大電力向けのスピーカを駆動するのに適しています。出力電力にも依存しますが、クラスDアンプの場合、効率が90%以上のオーディオアンプICがリリースされています。また、ポータブル向けの製品ではバッテリーの持ちが課題で、省電力に対するニーズが高まり、クラスDアンプが使用されるケースが増えています。
一方で、クラスDアンプはクラスABアンプと異なり、リニア動作ではなく、スイッチング動作により空間にノイズを放射します。そのため、外付け部品によるフィルタなどの対策が必要になり、回路規模・実装面積を含め、トータルのコストが高価になる傾向があります。音質については使用する外付け部品にも影響しますし、好みもあるため、敢えて記載しておりません。
表1をよく見てみると、「あれ!」とお気づきになるのではないでしょうか?そうです、電源ICのリニアレギュレータとスイッチングレギュレータの違いとよく似ていますね。スイッチングレギュレータが使用されているアプリケーションであれば、同様にクラスDアンプが使用できるかもしれません。これを機にクラスABアンプからクラスDアンプへ置き換えを検討されてはいかがでしょうか?
表1 クラスABアンプとクラスDアンプの違い
オーディオアンプICの内部ブロックのイメージ
クラスABアンプとクラスDアンプのオーディオアンプICの内部ブロックのイメージ図はそれぞれ図1、図2の通りです。内部で必要なバイアス回路、電源回路、及び各種プロテクション機能などを大幅に省略しており、実際の製品のブロック図とは異なります。
クラスABアンプの場合は入力されたアナログ信号を増幅し、増幅されたアナログ信号でスピーカを駆動する非常にシンプルな構成です。完全差動アンプで内部ブロックを表現していますが、必ずしも完全差動アンプが採用されているわけではありません。
一方、クラスDアンプの場合は入力されたアナログ信号を増幅し、コンパレータで内部の基準信号となる三角波と増幅したアナログ信号を比較し、アナログ信号からデジタル信号に変換します。これをPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)と呼び、これは入力信号レベルに応じてパルスのDuty比を変化させる変調方式です。ゲートドライバはハーフブリッジの出力段FETを駆動し、出力段FETは電源電圧レベルまでPWM信号を増幅して出力します。最後に外付けフィルタにより高周波成分を減衰させ、オーディオ帯域の信号を抽出します。
最近では変調方式の工夫により外付けフィルタが不要なフィルタレスの製品もリリースされています。また、PWMのスイッチング周波数は三角波の周波数で決まり、従来は数百kHzが主流でしたが、昨今は数MHzで動作するオーディオアンプICがリリースされています。これによりAMラジオとの干渉を回避することができます。スイッチング周波数を高くすると必然的に自己消費電力は増えますが、その一方で小さなインダクタが使用できるため、実装面積の削減に寄与します。
図1 クラスABアンプの内部ブロックのイメージ図
図2 クラスDアンプの内部ブロックのイメージ図
まとめ
クラスDアンプについてクラスABアンプと比較してその特徴をご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?クラスDアンプはスイッチング動作により空間にノイズを放射しますが、そのノイズを抑制することができれば、高効率の恩恵を受けることが出来ます。特にバッテリー・アプリケーションの場合、大きなメリットになりますので、このブログがクラスDアンプへの置き換えのきっかけになれば、幸いです。